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【5話】大切だった旧友たち




「少し、考えさせてくれ」


 スティアーノは帝国行きに関して保留にしてくれと言ってきた。

 正直予想外であった。

 こんなのは俺の我儘であり、ダメ元で言った単なる願望に過ぎなかったのだから。スティアーノがすぐに否定することなく、真剣に考えてくれることが嬉しかった。

 加えて、彼にその意志が少しでもあるのなら、


 ──彼が死んでしまう未来も変えることが出来るかもしれない。


「おーい、アルディア、スティアーノ! 遅いわよ〜」


 校門の前まで辿り着くと、そこには見知った顔があった。

 ああ、本当に全てがリセットされたのだと感じる。

 懐かしくもあり、彼らを死の運命から遠ざけられなかった自分を呪いたくなる。


「もう、待ちくたびれたわ。早めに集まろうって昨日皆んなで約束したじゃない」


 ペトラ=ファーバン。

 同級生でいつも俺たちと連んでいた優等生。

 何故俺たちなんかと一緒にいたのかは不明だが、今思えば彼女の存在は士官学校時代、俺たちのグループにおいて欠かせないものだったと認識できる。


「ペトラ、二人がだらしないのはいつものことだ。そうカッカするな」


 ペトラの横にいる大柄な男は、アンブロス。

 同じく同級生で、頼り甲斐のある男だったな。

 要塞の守備隊長になるくらいに強い男だ。またこうして会えるのは心底嬉しい。


「ですよ〜、ブロ助の言う通り、どうせ寝坊でもしたんだからさぁ」


 ミア。

 彼女とは戦場でチラッと見かけたきりだった。

 ヴァルカン帝国出身の彼女の卒業後は全然把握していなかったが、今生では多分、彼女と共に戦う未来があるのだと思う。

 入学当初からの問題児だった彼女も、卒業の時期を迎えた頃には、近接戦闘学年トップクラスの実力を持っていた。


「アル先輩をそんなに責めなくてもいいのでは? 元々の集合時間からまだ一分程度しか経過していないのですから」


 アディ。

 俺の一個下で後輩。

 クールなやつみたいに当初は思われていたが、後にただの人見知りだと分かった時は衝撃だったな。


「一分も遅刻は遅刻なのよ。アディはアルディアのことになると途端に甘くなるわね。好きなの?」


「んなっ、そんなんじゃありません。尊敬しているだけです」


「ふーん。……それで? 木陰にずっと隠れてるトレディアちゃんはどう思う?」


 校門の近くにある大木の後ろでコソコソしている少女はペトラに声をかけられると肩をピクリと動かす。


「ふぇっ、わ、私……ですか?」


 トレディアは俺の二つ下で後輩。

 引っ込み思案な子で、人前に出たがらず、俺たちと連んでいた時も誰かの背中に隠れていたりだとか、物陰に潜んでいたりとか……とにかく、彼女の姿を見るたびに何かに隠れていた記憶がある。


「そうよ。遅刻はいけないわよね?」


 ペトラよ圧をかけないであげてほしい。

 トレディアが怯えているから……。


「はぁ……」


 ため息を吐くと、ペトラが口を尖らせる。


「アルディア? 何か言いたいことでも?」


 そういうんじゃないんだけどな。

 単に拍子抜けしたというだけである。

 ずっと苦しい時間を過ごしてきて、命を絶たれたら、こうして懐かしい顔を拝めることになるなんて。

 改めて凄いことだなと感じる。


「いや、なんでもないよ」


 このため息は呆れていたから出たものじゃない。

 今目の前に広がるがる状況に半ば感動して思わず漏れてしまったものなのだ。

 口元が綻び、少し笑ってしまう。

 その様子は他の者たちからしたら理解できない仕草かもしれない。


 でも、それだけ嬉しいんだ。

 またこいつらに出会えて──。


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