105話『最後の大掃除を担うのは……』
105話よりリメイクしてお送りします。
よろしくお願いします!
特設新鋭軍の労働環境はガラリと変化した。
元々帝国軍の中枢で指揮をとって者が数多くこちらに加わったことが大きい。さらに、フィルノーツ士官学校に所属していた学生たちも、ある程度の素養を持っていたことから、職務に順応するのが、想定以上に早かった。
ピリついた組織内の空気も、随分と緩和された。
俺の手腕ではない。
これも全て、ヴァルトルーネ皇女のお陰であると言えるだろう。
僅か数年で帝国の軍事力は逆行前以上に強大なものになった。
これなら大陸中の国家を敵に回してもなんとかなるかもしれない。
盤石な体制を築き上げた我々帝国軍は次のフェイズへと移行しようとしていた。
「……アルディア殿」
「リツィアレイテ将軍。それで、例の件に感しての首尾はどうです?」
「はっ。既に滞りなく完了しております。フェルシュドルフ公爵領占領に向けての陣頭指揮はエピカ将軍が取ってくださるそうで、軍権は彼女に一任しました」
つい最近ヴァルトルーネ皇女の傘下に入ったエピカ=フォン=ダリウスはダウナーな態度からは想像が出来ないほど、特設新鋭軍の躍進を支えてくれていた。
それこそヴァルトルーネ皇女を目の敵にする反皇女派貴族の牽制、制圧には欠かせない。
「フェルシュドルフ公爵は手強い相手です。くれぐれも油断せぬようエピカ将軍にお伝えください」
「はい。でも彼女であれば心配ないと思いますよ」
「まあ命の奪い合いにおいて手を抜くような人ではない、か」
反皇女派貴族の首魁とも言える存在──フェルシュドルフ公爵の打倒。
三大公爵家の一つを敵に回すため、リツィアレイテと密に計画を練り今日ようやく決行日を迎えることができた。
フェルシュドルフ公爵軍に対して立ち向かうのはエピカ将軍や彼女が特設新鋭軍入りを機に連れてきた元帝国軍の精鋭中心で構成された歴戦の猛者たちだ。
事前の予測では敵戦略とこちらの戦力の人数差はほぼない。円滑に戦いが進めば負ける心配などしなくてもいいだろう。
……ただ一つ懸念点を挙げるとするならば。
「ところでエピカ将軍の父親であるダリウス伯爵は未だ反皇女派貴族に属しているそうですが……」
彼女の実父であるダリウス伯爵がフェルシュドルフ公爵側の人間であるという点だ。
しかしリツィアレイテは顔色一つ崩さず首を横に振った。
「心配はいらないかと──なんでもエピカ将軍がフェルシュドルフ公爵領占領の件に意欲的に志願してくださった理由の一つが、ダリウス伯爵家の凋落があるそうなので」
長年過ごしてきた実家の凋落を望む、か。
俺がヴァルトルーネ皇女に仕え、王国を出たみたいなものなのだろうか。
深くは詮索しないでおこう。
俺は目的が果たせればそれでいいのだから。
「分かりました。一応監視の者を付けておいてください。何かあればすぐに報告を」
「もちろんです」
今の話を聞いてエピカ将軍の離反はあまり考慮しなくてもいいだろうが、仲間に引き入れたばかりで完全に信用するのは違う。
この一戦で彼女が真にヴァルトルーネ皇女の味方であるか否かは見極めなくてはならない。
「ではアルディア殿。そろそろ私は王国軍との戦いに関しての軍議がありますので失礼します」
「はい。そちらは任せました」
「もちろんです。では」
リツィアレイテは軽く会釈をしてから踵を返した。
その後ろ姿を見送り、ゆっくりと空を見上げた。
「……いよいよか」
王国歴1422年1月。
ここから一気に歴史を動かして行く。
かつてはもう1年先の1423年に始まった王国との戦争。だがもう1年待つなどという愚かな真似はしない。
王国に準備の時間など与えない。
こちらは回帰した段階から、王国を打倒しヴァルトルーネ皇女の歩むはずだった輝かしい未来を守る準備ができている。
「反皇女派貴族、王国軍、そして教団……ルーネ様の邪魔となる者どもは一族末裔に至るまで殺し尽くしてやる」
どれだけこの手を血に汚したとしても……ただ彼女が、ヴァルトルーネ皇女が幸せになってさえくれればいい。
これは皇帝陛下に仕える専属騎士としてではなく、アルディア=グレーツ一個人として唯一無二の願いだ。
コミックガルドにて隠れ最強騎士の漫画が連載開始となりました!よろしくお願いします!




