【114話】騎士の誇り(ペトラ視点)
「邪魔をするんじゃねぇぞ!」
「はぁっ!」
騎士科の生徒と剣をぶつけ合う。
圧倒的な実力があるというわけではないが、押し負けているということもない。
「てめぇ……今いいとこなんだ。すっこんでろ」
「それで簡単に逃げ出すほど、薄情に育ってないんだよな」
「ちっ」
彼と私が出会ったのは、本当に突然だった。
ピンチに現れた救世主……というには、少しばかり不安を覚える立ち振る舞いであったものの、まだ私のことを助けてくれる人がいるということに驚いた。
ただ、スティアーノが助けに来てくれたとしても、状況が大きく好転したということはない。
相手の数があまりにも多く、彼一人で前衛を押さえ切れるなんて思わなかった。
「アンタ、今すぐ逃げなさい! このままだと酷い目に遭うわよ!」
だから忠告をした。
誰かを巻き込もうなんて思っていなかったから。
助けてくれたことは素直に嬉しかった。
でも、それ以上は……望んではいけないと感じていた。それでも、スティアーノは表情を一切変えずに剣を構える。
「逃げないぜ。俺は」
「なん、で……?」
「なんでって、俺は騎士になりたいからな。助けが必要な人を置いて自分だけ助かろうなんて……そんなのは騎士じゃねぇ。それだけはしたくない」
この時、私は彼に親近感を覚えた。
スティアーノと私が似ているということは決してない。
ただ、守るべき信念を貫き通すその姿勢が、頑なな感じがして……この人も、色々と苦労しているんだろうなと思ってしまった。
自身の道を曲げずに歩くというのはとても大変だ。
それは身に染みて理解している。
相容れない相手からは煙たがられ、敵対的な視線を向けられる。
それでも、諦めずに進み続けるのは、その先に自分が成し遂げたい目標があるから。
「…………後悔しても知らないわよ」
「後悔なんてしないっての。それに、これで勝てたらメチャクチャ格好いいし、成績も爆上がりだろ?」
「本当……馬鹿な人ね」
「よく言われるよ」
絶望的に重い状況。
しかし、彼の言葉に大きな勇気を貰った。
「……ペトラよ。助けてくれて、ありがとう」
「スティアーノだ。騎士らしい振る舞いが出来てたなら、本望ってやつだな」
今出会ったばかりであるものの、スティアーノは前に出て剣を構え、私は彼のすぐ後ろの方で魔術の構築を開始した。
魔術師の戦い方は身に染みて理解している。
火力が高く、一方的な攻撃を行えることが魔術師の大きな利点である。その反面、接近を許せば途端に弱くなる。その弱点をカバーするかのようにスティアーノは堂々と立つ。
「ふん、邪魔をするなら……貴方にも苦しんでもらうしかなさそうですわね!」
「恨むなよ、平民」
「そんな女庇うなんて、本当にアホなんだなぁ」
ボロクソに言われても、スティアーノは決して狼狽えない。
「馬鹿で上等。屑に成り下がるよりはマシさ」
素直な分、意趣返しが直接的過ぎる。
程良い挑発になったのだろう、スティアーノを取り囲むように各方面から襲い掛かってくる。
「よっしゃ、来いよ!」
──え、待って。まだ何か来る?
スティアーノが気合を込めた叫びを上げる中、私はどこからか接近する強い気配を察知していた。
その気配はドンドン濃くなっていく。
ガサガサと茂みが揺れる。
そして真っ黒い剣を片手にアイツが登場した。
それも、深く脳裏に刻まれるような、ふざけた登場の仕方で──。
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