表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/52

45白い殺意

 突然の告白にクエスは一瞬体が硬直した。

 その隙を逃さず、エグザスの黒い槍が彼女の脇腹を掠める。


「グッ……動揺を誘うつもりか?」


 すぐさま体勢を整え右に飛ぶと、着地の瞬間には黒炎を放った。

 怪我で威力は落ちた様子はないが、顔には苦痛が浮かんでいる。


「私の両親は、魔神軍に殺されたのだ!」

「そうお前に言ったのハ、私だった筈ダ」

 エグザスはその骨しかない骸骨の顎を歪め、嗤う。


「どうしてなのだっ!」


 怒りに任せ、先程より大きな炎をエグザスに向けるが、その攻撃は単調で予測しやすかったのだろう。

 その炎が通りすぎた時には、骸骨の姿は無かった。

 認識した瞬間には、そちらから槍が飛んでくる。

 そのついでにエグザスは語り始める。


「ネクロマンサーの秘術を習得するまでに時間が掛かりすぎタ。とても戦場に向かう年齢ではなくなった私ハ、お前の父にそれを教エ、魔神を討伐させるつもりだっタ」


 絶え間ない攻撃と言葉でクエスは疲弊し、返事のひとつも返さなかった。


「だが、お前が産まれてすぐのタイミングだったからカ、あいつは断ったのダ。仕方なく私はクエスにその秘術を教え込むことにしタ。当然あいつはそれを許さなかったのでナ」


 その語りにクエスは、自分の人生が祖父であるエグザスによって、初めから狂わされていたことを知る。

 また死んでいると聞かされていたにも関わらず、一目会いたいと思っていた両親ですら、その毒牙にかかっていたという事実。


 頭が真っ白になる。

 胃がムカついてえずきそうになる。


 しかし、絶え間ない攻撃がそれを現実に引き戻してくる。


「……許さないのだ!」


 戦いの際に涙を流しては不利になるのはわかっている。

 しかし、頭でわかっていても、押し止めることができずに、それが視界を歪ませてゆく。


 器は熟したと見たのか、その瞬間にエグザスは大きな黒弾を作り、クエス目掛けて放った。

 それは隣接する地面を抉りながら進み、クエスを飲み込もうと迫る。


「クエスちゃん!」


 一桜が叫ぶも、数体のスケルトンに阻まれ駆けつけることはできそうにない。


「!!」


 滲んだ視界いっぱいに黒壁が迫ったそのとき。

 横合いから赤い炎が吹き付け、弾を逸らした。


「エリン!」


 その発生源が誰なのかを一瞬でライザックが理解する。

 同時に薄ら寒い悪寒のようなものを感じた。


 エリンが魔法を放つために、ミラックの拘束を解いてしまったという事実がそこにあった。


「もう一度捕縛をっ……キャッ!」


 急いでエリンが魔法を使おうとするも、ミラックは折れていないほうの手でそれを弾き飛ばした。


「目の前に2体も、神を冒涜する異教徒がいるってのに、じっとしていられるわけがねぇだろが!」


 更にその手から白い衝撃波を形成すると、近くに倒れていたエリンが、数メートル吹き飛び、地面に転がる。


「ミラック! バカな真似は止すんだ!」


 ライザックはそう叫びながら切りかかるスケルトンの攻撃をブロードソードで捌き、後頭部の印に刀を叩き込む。

 また一体のスケルトンがただの骨に変わったが、目の前にまた次の敵が現れていた。

 とても彼女に近づくことはできない。


「ミラック……このクエスの首をとるのダ。これを持ってトランドールへ凱旋するがいイ!」


 エグザスの言葉に、ミラックは薄目で応えるように立ち上がると、クエスの方へと進み出た。


「ネクロマンサーなどこの世に必要ない!」


 叫びながら徐々にその速度を上げる。


「最悪なのだ!」


 ミラックに気を取られたクエスの背後では、3mもあろうかという黒槍が生成されている。

 ミラックも白く丸い弾を左手に浮かべて飛びかかってくる。


「クエスちゃーん!!」


 一桜が無理やり包囲網を抜けようと試みるが、逆にその肩にスケルトンの刀がめり込んだ。

 その瞬間、振り抜く方向に体を捩った事で、骨や筋を絶たれることは無かったようだが、大量の出血がブレザーを染めていった。

 その痛みに顔を歪めながらも、一桜はスケルトンの手首を狙って刀を振り落とす。


「天下一閃!!!」

 振り下ろした刀を、今度は峰のまま振り上げる。

 何千何万回と体に覚え込ませた閂流の【型】ではあるものの、連戦の影響が出始めたのか、無理な動きに腕が軋む。

 それでも振り上げた刀はスケルトンの持つ武器を上空へとかち上げた。

 そのまま体を横回転させて反動をつけ、スケルトン本体も弾き飛ばす。


 その一瞬の攻防の間に、一桜はクエスへの救援のタイミングを逃してしまった。


「クエスちゃん!」

その叫びが、うねるスケルトンの隙間を縫って、クエスヘ届く。


「いったい何なのつもりなのだ」

エグザスが放った魔法の黒槍は、ミラックが集積させた白い魔法によって相殺されていた。


「別に、アンタよりもあっちのネクロマンサーの方がムカついただけだ」

言いながらも折れていない方の手で白い光を収束させていく。

「それに、消しとんじまったら証拠の首を持って帰れねぇからな!」

肉食獣さえ食い殺しそうな獰猛な顔でミラックは走り出す。


「ホッパー!」

状況を飲み込むために一瞬遅れたクエスも、自分の足元に移動の魔法をかけると、放たれた矢のようにエグザスへと飛び込む。

白と黒の魔法が不気味な骸骨へと突き進んでゆくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ