オカルトマニアのぼくっ娘と陰キャオタクな先輩のラブコメホラー(仮)
最近、死神が追いかけて来る夢を見ます。毎晩少しずつ距離が縮まって、次はもう逃げ切れそうにありません。
○登場人物
ぼく:本作の語り手。カメラ片手にオカルト蒐集や謎解きに情熱を燃やす変人。女の子。
先輩:アニオタにして、学園随一の秀才。学食の食券と引き換えに、”ぼく”の謎解きに協力する。重度の懐疑主義者で、「この世には信じられるものなど何もない」という信念を唯一信じている。
結崎:今回の依頼人。死神に追いかけられる夢を毎晩みており、もうすぐ死神に追いつかれそうになっているらしい。
最近、毎晩同じ夢を見ます。
それは、死神が追いかけてくる夢です。
ゆっくりと、歩くような一定の速度で追いかけてくる死神。
もちろん、あたしが走ったほうが速いので、そうそう追いつかれることはありません。
だけど夢の中でも走れば疲れるもので、時々休憩を取らなければなりません。
そうしているうちに、休まず歩いてくる死神に距離を詰められ、また走ることになるのです。
やがて目が覚めるのですが、次の夜にも同じ夢が始まります。
前回の最後と、死神との距離は全く同じ。疲労感も引き継いだままスタートです。
やはり、走れば追いつかれることはありませんが、それでもいつまでも逃げ続けられるものではありません。
疲れて足が遅くなっていくあたしと、一定の速度で追いかける死神。
一晩、一晩、少しずつ差が縮まっている気がするのです。
このままでは、逃げ切れそうにありません。
死神につかまった時、あたしは殺されてしまうでしょう。
あたしはまだ死にたくない。
そのためにどうかこのバトンを受け取ってください。
件名:悪夢の追跡者
「妙だな」
そのメールを読んだ先輩の第一声がそれだった。
「妙、ですか?」
「ああ、何かひっかかる」
「先輩、いつもなら『ただの夢だろ』って切り捨てるじゃないですか」
「そうだな、今回もただの夢の話だ。夢の中で死神に追いつかれたとして、現実に死ぬはずがないだろ」
先輩は至極まっとうなことを言った。
ぼくは先輩が何に引っかかっているのかわからなくて、ムキになって追求する。
「だったら、何が気に入らないんですか?」
「気に入らないとは言っていない。ただ、妙だとは思わないか? この文面。確かに死神に追いかけられる夢を毎晩見るというのは奇妙だ。このメールを書いたヤツは、怖い思いをしているんだろう。それは認める」
先輩は、顎に手を当てて考えながら慎重に話を続ける。
「だが、なぜ死神に追いつかれることをこんなにも怖がる? 『私はまだ死にたくない』なんて、まるで夢の中で死神に追いつかれたら現実でも死ぬと確信しているみたいじゃないか。普通なら、ただの悪夢と思うはずだ」
「それだけリアリティのある夢だったんじゃないですか? 毎晩同じ夢を見るなんて異常性もありますし」
「それだけじゃあない、最後の文章。コイツが気になる。『バトンを受け取ってください』
だと? バトン……どういうことだ? このメールが求めているのは、謎解きも救助でもないってことだ」
「確かに……言われてみれば」
投稿者の名前も書いてないし、このメールは不可解だった。
今までの投稿者は「謎を解いてください」とか「助けてください」という目的をもってぼくと先輩に何かを依頼していた。
なのにこの人は、ただ自分の見る悪夢の内容と「バトンを受け取ってください」という謎の文面だけを送りつけた。
怪文書だ。
「イタズラ、かもしれませんね」
しばしの沈黙が流れた後、ぼくがそうポツリと漏らした。
「かもな」
腑に落ちない、という顔で先輩も賛同する。
そうしているうちに完全下校のチャイムがなって、今日の活動は終了となった。
別れ際に先輩は、ぼくにこういった。
「くれぐれも、気をつけろよ」
「何に?」と思ったけど、先輩はそれ以上説明せずに去っていた。
後になって思えば、この時にもう始まっていたのだろう。
ぼくの”悪夢”が。
☆ ☆ ☆
それが夢だというのは、すぐに理解できた。
ぼくは誰もいない新宿らしき都市のど真ん中に立っていた。
日中の大都会、新宿に誰もいないなんてあり得ない。
論理的に考えて、これは夢に違いない、そういう思考ができた。
ぼくは夢を夢だと気づきつつ、夢の中で自由に思考や行動ができる状態――いわゆる”明晰夢”の中にいた。
「これ、どういうこと……?」
疑問に思いつつ、周囲を見回す。
すると――視えた。視えてしまったのだ。
ここからずっと遠くに、人型の黒いモヤのような”何か”がいた。
そして、その黒い”何か”はゆっくりと、歩くような速さでぼくに向かって歩いて来ていた。
「ぇ……嘘……でしょ」
まだ遠すぎて、ハッキリとその姿を見ることはできない。
だけど、ぼくは直感的に理解できた。
その黒いモヤこそが、メールに書かれていた”死神”だと。
「……っ――!」
ぼくはその場から走り出していた。
”死神”から、少しでも遠ざかるために。
☆ ☆ ☆
翌朝、ベッドが汗で水没していた。
尋常じゃない疲労感に、その朝は立ち上がるのも一苦労だった。
まさか「悪夢を視た」という理由だけで学校を休むわけにもいかず、その日は制服に無理やり身体をねじ込んで登校することにした。
授業中、ぼくは居眠りすることも授業に集中することもできず、昨晩のことを考えていた。
昨晩、ずっと新宿の街を走り続けた。
ずっと、というのは正確じゃないかもしれない。時々立ち止まって休憩する必要があったから。
夢の中とはいえ、疲労感は現実と変わらなかった。無限に走り続けるなんて芸当はできない。
ぼくの走る速さは死神より上とはいえ、死神に休憩は必要ないわけだから、いつまでも休憩なんてできずにまた走り始めるハメになる。
だから、やっぱり”走り続けた”という表現も間違ってはいないのだろう。
いったい――ぼくに何が起こっているの?
この疑問を抱いたまま、放課後になった。
ぼくは真っ先にこの謎を解くために先輩に相談を持ちかけるべく、図書準備室に向かう。
図書準備室は、ぼくと先輩の謎解きの拠点だ。
だけど先輩はまだいなかった。もちろん、先輩のほうが後で来るなんて珍しいことじゃないから先に待つことにする。
だけど、先輩は来ない。やがてスマートフォンが震えたかと思うと、キャリアメールに先輩からの連絡が届いていた。
いまどきメッセージアプリじゃなくてキャリアメールを利用するのが先輩らしい――そう思いつつ、メールを開く。
『悪いが、文化祭実行委員会をやることになった。誰もやりたがらないからぼっちの俺が推薦されるって、悪い意味で民主的な采配だ。しばらく放課後は忙しくなっちまうから、謎解きには付き合えないと思う。すまんが、何かあったら遠慮なく連絡してくれ』
「先輩……」
ぼくはメールに返信しようと思って画面をタップする。
『助けて』
最初に出てきた文字列がこれだった。
そして、思い直す。
「はは、なにやってんだろ、ぼく。一晩悪夢を見ちゃっただけじゃん。死神? そんなのに追いつかれたところで、現実で死ぬわけないよ。ははは……ほんと、バカ」
ぼくは最初の文面をすべて消去して、先輩への返信をもう一度打ち込んだ。
『ぼっちの先輩が委員会活動なんてすごい! 友達とか彼女を作るチャンスじゃないですか! せいぜい頑張ってくださいネ、先輩♡』
☆ ☆ ☆
そして一週間が経った。
毎晩同じ夢を視た。死神に追いかけられる夢だ。
逃げても逃げても、死神は疲れない。
対して、人間は疲れる。夢の中でも、疲労からは逃れられない。
徐々にぼくと死神の差は、小さくなってきていた。
もちろん、その間に何もしなかったわけじゃあない。
ぼくは夢の中で経過時間を調べていた。
予想通り、夢の中で6時間が経過すれば現実の時間でも6時間が経過する。
逆に言えば、現実の睡眠時間が夢の中の時間になる。
この悪夢から逃れるには――眠らないことだ。そうすれば死神に追いかけられる時間は短くなる。
そう気づいた日から、ぼくの睡眠時間は短くなっていった。
それが一週間も続くと、夢の中で走る時間は短縮できたけど、現実のほうに支障が出てくる。
先輩に会えないまま一週間が過ぎて、なんとか学園にも行って寝不足のまま授業を受け続けた結果――ぼくは授業中に気を失った。
「まずい」
夢の中の新宿で、ぼくはそうつぶやいた。
「アラームをセットしてないのに寝ちゃったんだ……自力で起きる手段がない……」
そう、今までの一週間はアラームで無理やり夢から目覚めていた。
でも今回は違う。学園の中で眠ってしまったらしい。
きっと、誰かに起こされるまで起きることができないだろう。
いつ頃終わるかわからないから、とにかく逃げ続けるしかない。
「はぁ……はぁ……はぁ」
走り続ける。ひたすらに死神から逃げ続ける。
だけど、日に日に体力の消耗が進んでいた。
夢の中での疲労はなぜか癒えない。魂そのものが削り取られていくように、夢の中のぼくはげっそりとやつれているようだった。
しかも、今回は寝不足で現実のぼくも倒れている状態だ。
どんどん走れなくなってきて、死神に距離を詰められる。
「くっ、うう……もう、あんな近くに……」
気づけば死神の姿が視認できるくらいの距離まで迫られていた。
遠目には黒いモヤのようにしかみえなかった”死神”、今はその姿をハッキリと観察することができる。
よくあるイメージの、黒いローブにガイコツのような白い顔、そして大鎌――みたいなクラシックなスタイルじゃない。
死神は黒いボロ布を身にまとった人間のような姿をしていた。骨と皮、比喩表現ではなくまさに肉を完全に削ぎ落とした異常にガリガリの男だ。
まぶたの無い落ち窪んだ眼球にはギョロリと丸く血走った眼球がそのまま収まっている。
鼻も異様に低く――というか無い。鼻腔の穴が2つ顔の中心に空いているだけだ。
そして唇も無く、ボロボロの歯が剥き出しになっている。その容貌は恐ろしいが、どこか笑っているようにも見えた。
死神は無言で追ってくる。
ガリガリの異様に細い身体はモヤに覆われていてよく見えないけど、脚を動かしている様子はなかった。すぅーっと空中を滑るように移動しているように見えた。
その恐ろしさと体力の消耗に負け、ぼくは足が止まってしまった。
一度止まってしまった足は、しばらくは動かない。死神に目を奪われたまま、完全に立ち止まった。
すぅーっと近づいてくる死神。
10m、9m、8m……まずい、追いつかれる――。
「――!」
その時だった。
聞き覚えのある、どこか安心感のある声が聞こえた。
ぼくはその声のする方向へ振り返る。
「先輩――!」
そして、目が覚めた。
「やっと起きたか。ったく、心配させんなよ」
「ここは……?」
「保健室だ。お前、授業中に倒れたらしいな。幸い、なにか身体に異常があるわけじゃなく疲労と睡眠不足が原因のようだが……放課後まで目を覚まさなかったんだぞ」
ぼくの目の前にいたのは、先輩だった。
一週間ぶりの先輩、いつもどおり冷静で、知的で、どこか気が抜けていて無防備だった。
ああ……安心する。その姿を見られただけで、その声が聞けただけで、ぼくはほっと胸をなでおろした。
「先輩、もしかしてずっとぼくのそばにいてくれたんですか?」
「さあな。とりあえず水分をとれ」
先輩はぼくにスポーツドリンクを差し出してくれた。
それを受け取ってゴクゴクと飲み込んでいく。夢の中とはいえ、走り続けた後だ、身体に――というか魂に染み込んでくるように感じた。
ふぅ、とぼくが一息ついた後。先輩が言った。
「で、何があった?」
「何って――ぼくはべつに」
「ごまかすな、何かあっただろ」
いつになく真剣な先輩の眼光に負けて、ぼくは正直に白状することにした。
これまで一週間のこと。
死神に追いかけられ続けていること。
徐々に追いつかれそうになっていること。
そして、睡眠時間を削ったことで倒れてしまったこと。
今、死神がすぐ近くまで迫ってきていて、もうすぐ追いつかれそうなこと。
全部、打ち明けた。
「で、でも気のせいですよね! 先輩の言う通り、ただの夢! 夢の中で死神につかまっても、現実で死ぬなんてコト……あるわけ、ないですよね……」
「そうだな。確かに死ぬとは限らない。だが、既に現実に影響出てるだろうが。睡眠不足になって倒れた時点で”何もない”なんてコトはないんだよ」
「そう……ですよね」
「死神につかまったらどうなるか、現時点では不明だ。だが、現実にお前はその夢に怯え、ここまで消耗した。解決する必要があるな」
先輩はぼくに向かって「ん」と手を差し出した。
「?」
ぼくは犬の「お手」のようにそっと彼の手の上に手のひらを重ねた。
「そうじゃあない、スマホを貸してくれ」
「えっ!? ああ、すみません……」
勘違いだった。顔が熱くなるのを感じながら、ぼくはスマホを渡した。
「ロックされてるな。PINコードは?」
「××××です」
「お、開けた。お前のメールボックスを確認する、いいな?」
「はい」
「依頼者は名前こそ書かなかったが、メールアドレスは表示されている。アドレスを検索すればSNSだのなんだののアカウントが出てくるもんだんだよ。捨てアドじゃなければ、だがな」
「それってつまり……依頼者を特定するってコトですか?」
「ああそうだ、不可解なメールの真相を確かめないと始まらないからな――捉えた」
先輩はポチポチとスマホを操作すると、依頼者と思わしきSNSアカウントを発見していた。彼女の名は”結崎”、この学園の女子生徒らしかった。
その後、ぼくと先輩は保健室を出て放課後残った生徒や教師からこの結崎さんの情報を収集した。
☆ ☆ ☆
どうやら、結崎さんは二週間ほど学園を休んでいるようだった。
表向きには体調不良ということだが、彼女が心療内科に行っていた、という噂もあった。精神的なバランスを崩したということだろう。
ぼくらは彼女の自宅へ向かっていた。
「お前は家で休んでりゃ良かったのに」
「そういうワケには行きませんよ! ぼくが当事者なんだから。それに、まとまった睡眠がとれたので身体は大丈夫です!」
「くれぐれも、無理はするなよ。調査は俺に任せろ」
先輩とともに結崎家を訪問する。
玄関のチャイムを鳴らすと、彼女の母親らしき女性が顔をだした。
ゲッソリとやつれている。何かに疲れているようだった。
ぼくらは、予め用意していた「結崎さんのクラスメイトです。プリントを届けに来ました」という言い訳で母親の許可を得て彼女の部屋の前まで通してもらえた。
彼女の母によると、
「二週間ほど前だったかしら、娘が眠らなくなったの。『寝たら捕まる』って部屋から出てこなくなって、ご飯も食べられなくてやつれて……私も、娘を心療内科に連れて行ったんでだけれど……処方された睡眠薬も飲んでくれなくて……。明るくて、イジメられてるって話も聞かなかったのに。全然そういう子じゃなかったのに、どうして……」
とのことだった。
結崎母の表情をみて最初はギョッとした。もしかしたらあの夢を? だなんて考えたけど、それは杞憂だったらしい。
ただ娘の豹変に精神的に疲れているだけのようだった。
「とりあえず娘さんと話してみます。もしかしたらデリケートな話になるかもしれませんので、お母さんは席を外していただけませんか?」
先輩はぶっきらぼうに言った。
娘が心配な母は素直に従って、奥へとひっこんだ。
先輩は、コンコンと結崎さんの部屋の扉をノックする。
「もしもし、○○学園から来た。あんたのメールを受け取った者――といえばわかるだろ? 話を聞かせてくれないか」
「こないで!」
扉越しに声が聞こえた。
悲壮な金切り声だった。ぼくたちを拒絶していた。
「あたしは死にたくない、死にたくなかったの! そうよ、あたしは悪くない! 生き残るためにバトンを――!」
一人でまくしたてる結崎さんらしき声。
先輩は「はぁ」とため息をついてから、落ち着いた声で話しかける。
「結崎さん、あんたを責めに来たわけじゃあない。ただ調査に来ただけだ。あんたのメールを契機に俺の後輩が変な夢をみるようになったもんでね。どうやらあんたも見ているんだろう? 死神に追いかけられる夢を」
しばらくの沈黙。
そして、結崎さんの声が答える。
「そうよ……あの夢は本物。死神に追いつかれた人は、本当に魂をもっていかれる」
「魂を持っていかれるってことは、現実に死ぬってことなのか?」
「ええ」
「なぜそう言い切れる? あんたは、その夢が原因で死んだ人間を実際に知っているのか?」
「知らないけど……全部、ルール通りだから。きっとゴールも、ルール通り」
「ルール? ルールとはなんだ? 結崎さん、あんたは何を知っている? すでに俺の後輩が巻き込まれてんだ。俺たちだけルールとやらを知らないままなのは、不公平じゃあないか? 俺たちを巻き込んだ責任として、教えてくれ。頼む」
また、しばしの沈黙。先輩はそれ以上なにも言わない。
ただじっと待った。
結崎さんは迷ったのだろう。数十分たったかのように思えた長い沈黙が、やっと破られた。
「あたしも”バトン”を受け取ったの。友達から……その友達も、死神の夢を見ていた。どうなったかはわからないけど、今でもたぶん、逃げ続けてると思う」
「バトン、か。さっきからあんたの言っているバトンとは何だ?」
「送ったでしょ? メールよ。死神の説明と最後の文面『どうかこのバトンを受け取ってください』これを全部読んだ人間は、送り主と同じように死神の夢を視るようになる」
「何……?」
結崎さんの話す”ルール”は、恐ろしいモノだった。
要約すると、以下のようになる。
ルール1:”バトン”と呼ばれる特定のメールを受け取り、文面をすべて読んだ人間はその日から『死神に追われる悪夢』を見始める。死神に追われる人間は、寝ている間は必ず死神の夢を見る。
ルール2:死神の速度は一定であり、人間が走る速度より遅いが歩く速度より速い。しかし死神は疲労しない。死神に追いつかれると魂を持っていかれ、現実でも死んでしまう。
ルール3:死神と対象者の距離関係は夢をまたいでも持ち越す。また、夢の中の世界の疲労度は夢の中で休憩を取らないと回復しない。夢の中と現実の経過時間は同じである。
ルール4:死神に追いかけられている人間は、一度だけ”バトン”を他者に渡すことができる。バトンを渡すと死神との距離関係がリセットされ、死神が遠くにいる初期状態に戻ることができる。
ルール5:死神が誰か一人でも捕まえ、魂を捕獲した時点で、バトンを受け取ったすべての人間の悪夢が終了し開放される。
「つまり……」
その話を聞いた先輩は言った。
「この悪夢は、脱落した人間一人が死ぬまで続く持久走ってコトか。参加者が使える一度きりの延命措置が”バトン”。特定の文面でメールを送ることで、死神に追いつかれそうな状況をリセットできるが、他人をこの悪夢に巻き込むことになる……と。何人に拡がっているかはわからないが、少なくない数の参加者が既にいそうだな。この”死の持久走”には」
「ふム」先輩はボサボサ頭を掻いた。
これは、先輩が学園随一の頭脳を推理に働かせる仕草だった。
「結崎さん、あんたはそのルールを友達から聞いたんだな」
「そう……最初の出どころはわからない。噂みたいなモノだと思ってたけど……あたしの見た夢と一致しすぎてるの。あのメールを出した日、あたしは死神との距離をリセットできた。だからまだ生きてる。信じるしかないじゃない!」
「それのルールが真実だと信じれば信じるほど、裏切られた気分だっただろうな。友達が自分を死神に売ってまで延命しようとしたのもまた真実ってコトになっちまうからだ」
「……」
あんまりな言い草に、ぼくは口を挟む。
「先輩、そんな言い方って!」
「事実だろう。それに、結崎さん自身がそう思ったからこそ。バトンはお前に送られたんだぞ」
「え……?」
「友達に裏切られ、死神に追われることになった結崎さん。やがて死神との距離がつまり、脱落者になりそうな状況だった。自分も誰かにバトンを渡さなければ死んでしまうと思った。だが、バトンを他人に渡すのはハードルが案外高いんだ。怪しい文面を最後までキチンと読んでもらわないといけないからな。無差別に送れば迷惑メールとして処理される。ならば、家族や友人くらいしか候補はいないだろう。だが親しい人間をまきこむことは結崎さんにはできなかった。そこで――学園でも有名なオカルトマニアの出番ってワケだ。怪しい文面でも最後までキッチリ読んでくれるだろうからな。親しくない人間を犠牲にすれば良心も痛まないってワケだ――」
「――先輩!」
ぼくは先輩の言葉を遮った。
「それ以上結崎さんを責めないでください。彼女だって死にそうな目にあっているんです。かわいそうですよ。それに、親しい人をまきこまなかっただけ立派です」
「立派、ね。関係のないお前を死ぬかもしれない悪夢に巻き込んだのにか?」
「それでも、です」
先輩とぼくの意見が対立して、しばしにらみ合いになる。
先輩の目は、冷たかった。結崎さんに対して、ほんの1ミリグラムも同情している様子はなかった。
やがて先輩は目をそらして、「わかった」と吐き捨てた。
「行くぞ、もう用はない」
先輩はさっさとその場を去ってしまおうとする。
ぼくは結崎さんの部屋の扉に向かって、去り際にこう言い残した。
「ぼくは気にしてないから……あまり、気にしないでくださいね」
☆ ☆ ☆
「先輩」
夜道を並んで歩いていた。
先輩はぼくを家まで送ってくれていた。
だけど結崎さんにまだ怒っているのか、何も言ってくれなかった。
「先輩は、結崎さんの話を信じてるんですか? いつもなら信じたりしませんよね?」
「さあな、正直半信半疑だ。が、確かなのはお前があの女のせいでヒドい目にあってるってことだ。それに俺自身にも腹がたっている。肝心なトコでやくたたずだからな」
「え……?」
「悪かった。結崎に話を聞いても、何の解決にもならなかった……」
先輩が不機嫌なのは、どうやらぼくを助けられなかったかららしい。
ぼくはそれを聞いて――嬉しかった。
本当は、ヤバい状況なハズなのに。次に眠れば死神がすぐ近くなハズなのに。
死ぬかもしれないのに。
先輩がぼくを助けようと必死になってくれたことが、何より嬉しかった。
「なあ、罪滅ぼしになるかはわからないが……結崎の言っていた”バトン”。俺に送ってみないか? お前、死神に捕まる直前まで来てるんだろ? せめて先延ばしにできるかもしれないぞ」
先輩はそんな提案をした。
らしくなかった。オカルトを信じて、嫌っているであろう結崎さんの言葉まで信じているようなその態度。そこまで必死にぼくを延命させたいだなんて。
そんなの先輩らしくない。そんな先輩は見たくない。
だってぼくは、ひねくれてて、他人のことも自分のことも信じて無くて。
だけど時々優しくて、愚直なまでに誠実で。
そんな先輩らしい先輩のことが好きだから。
だから――。
「”バトン”なんて送るわけないじゃないですか。悪いと思ってるなら、ぼくの”お願い”聞いてくれますか? せんぱい♡」
☆ ☆ ☆
「いいのかよ、コレ。男女同衾って言うんじゃ……?」
「いいんです。今夜はお母さん夜勤でいないので。先輩、ぼくのお願い聞いてくれるんですよね? だったらおとなしく添い寝してください」
「……わかった」
ぼくと先輩は、シングルベッドで隣り合って寝ていた。
男の人の身体は大きくて、こんなベッドじゃはみ出してしまいそうだ。
ここはぼくがお母さんと二人暮らしをしているアパートの一室。
ぼくの部屋だ。少し散らかっているのは恥ずかしいけど、先輩に初めて来てもらった。
ぼくのお願いは、「眠るのが怖いので先輩が一緒に寝てほしい」だった。
もしも本当にぼくが死んだら、先輩が容疑者になってしまうんじゃないか、なんて心配もあったけど。それよりももっと大きな安心感がある。
先輩がそばにいれば、ぼくは死なないかもしれない。
根拠はないけど、そんな気がしていた。
「じゃあ、眠りますね。先輩、寝付くまで手――握っててください」
「ああ、安心して熟睡しろよ。俺がお前を死なせたりしない」
「ありがとう、せんぱい……」
保健室で一眠りできたとはいえ、ここ一週間の睡眠不足が祟ったらしい。
ぼくは先輩の手と身体のぬくもりに触れて一気に身体の緊張が解けたのか、すぅーっと眠りに落ちていった……。
☆ ☆ ☆
夢の中の疲労は、夢の中でしか回復しない。
つまり、夢の中で走り続けるということは、いつか消耗しきって死神につかまってしまうということだ。
たぶん、今がそのときだった。
ぼくが夢に戻った時には既に死神が8m程度の距離まで近づいていた。
死神は遅い。この距離なら走れば逃げ切れる――普段なら、そうだったけどもう違った。
疲労しきった夢の中のぼくは、走り出すことができなかった。
ああ、ダメだ。脱落者は――ぼくだ!
「せんぱいっ――!」
「呼んだか?」
「え!?」
「とにかく乗れ」
前の夢の終わりと同じように、先輩の声がした。
ぼくが振り向くと、無人のはずだった新宿の道路に先輩が現れていた。
しゃがみこんで背中を見せ、「乗れ」と指示してくる。
ワケがわからない状況だったけど、死神に追いつかれるくらいなら飛び込んでやる! という気持ちで突然現れた先輩の背中に飛び乗った。
「俺はまだ体力が残ってる。とにかくあの死神から逃げるぞ!」
先輩はぼくを背負って走り出した。
速い。流石に人一人背負えば普通に走るより遅くなるけど、死神から距離を開けるには十分だった。
「先輩……どうしてぼくの夢の中に?」
「どうしてって、ここはお前の夢だろ? 夢の中じゃあ、何が起こってもおかしくないんじゃないのか? そもそも夢は脳が記憶を整理する過程で起こる現象だ。知ってる人間が出てくることなんて珍しくないし、むしろ自然だ」
「つまり先輩は、本物の先輩じゃないってことですか? ぼくの脳が作り出した幻?」
「どうかな? 本物の定義による。それを言い始めると、現実世界でお前の隣にいる俺がそもそも本物なのか? そういう話になる。世の中に、本物らしい本物なんてもともとないんだよ。重要なのは、お前が何を信じるか――だ」
「その屁理屈、間違いなく本物の先輩です!」
夢の中に突然現れた先輩。
今まで悪夢の中に他人が登場することはなかった。
何故?
現実世界で手をつないで寝たから、夢が混線した?
わからないけど、先輩に助けられたことで今回は難を逃れたのは確かだった。
「ありがとうございます、先輩」
「はぁ、はぁ……疲れた……」
「ごめんなさい、ぼく重くて」
「いやお前は軽かったよ。むしろもっと食え。疲れたのは俺の体力不足が原因だ。スポーツってヤツはどうも苦手だからな。俺、陰キャだから」
死神からかなり離れたところで先輩はぼくをおろし、休憩をとった。
「さて、とりあえず歩きながらこれからどうするか考えるか。死神のほうが俺たちの徒歩より少し速いが、距離があるしそうそう追いつかれることはないだろう」
こうしてぼくと先輩は、死神から逃れるために歩き始めた。
「”どうするか考える”って、逃げ続ける以外の選択肢はないんじゃないですか?」
「そうとは限らないぜ。結崎の言っていたルールに、二人の人間が一つの夢に登場するパターンはなかった。こいつは”例外”だ。これが唯一のチャンスだ」
「チャンス?」
「ほうら――おいでなすった」
先輩が進行方向を指差すと、遠くから小さな影が見えた。
黒いモヤに覆われたそれは、遠目にもわかる――死神だ。
「えっ、回り込まれた!? いつのまに!?」
ぼくが振り返ると、後方にも遠くに死神が見える。
死神が二体いる!?
わけがわからない状況になっていた。先輩が混乱するぼくの肩を掴んで言った。
「いいか、後方のはお前の死神。前方のは俺の死神。一つの夢に魂が二つ、死神も二体ってワケだ」
「何言ってんですか先輩、全然理解が追いつかないんですけど!?」
「この持久走のルールをぶっ壊す。死神に死神をぶつけんだよ」
「――は?」
先輩の話はこうだった。
前方の死神は先輩を追いかけてくる。
後方の死神はぼくを追いかけてくる。
この二つの死神を誘導して接触させる。
うまくいけば、同士討ちになるかも……。
とても正気とは思えない作戦。
根拠もなにもない――けど、なぜだかぼくは心が踊っていた。
「根拠はないんですよね、先輩」
「ああ、どうなるかは全く予想がつかない」
「真実よりも、信じるか否か。先輩ならそう言うんでしょうね」
「そうだな。お前は、何を信じる?」
ぼくは一瞬うつむいた。
だけどすぐに顔を上げる。
何を信じるか? そんなの、決まってるじゃないですか。
「先輩を信じます!」
こうしてぼくらの作戦が実行された。
わざとゆっくり歩き、ぼくと先輩は追跡してくる死神を誘導する。
死神は追跡対象の背後を一定速度で追いかけるだけだ。
死神に捕まる直前までひきつけて、ぼくと先輩が交差した瞬間に左右に逃げれば死神同士が衝突するハズ――。
ぼくの背後を死神が追ってくる。
正面からは、先輩を死神が追ってくる姿が見えた。
もうすぐぼくと先輩が交差する。
どちらが叫んだかはわからない。
「「今だ――っ!!」」
ぼくと先輩は、ギリギリまで死神をひきつけた状態で左右に別れた。
その瞬間。
黒いモヤとモヤが激突する。
ムクムクとモヤ同士が混ざり合い、大きな塊になり――そして。
弾け飛んだ。
☆ ☆ ☆
「――はっ!?」
目が覚めた。
窓から朝日が飛び込んできていた。もう朝だった。
「先輩は……?」
ぼくの隣にいたはずの先輩。
だけど今はいなくなっていた。
「そんな……先輩、先輩……!」
目に涙が浮かんでくる。まさか、と思ってしまう。
先輩は、ぼくを助けるために犠牲になったんじゃ……?
あの時、先輩は逃げるふりをして死神に捕まったんじゃ……?
だってルール通りならば、誰か一人が捕まればあの悪夢は終わるのだから。
「呼んだか?」
そんな予想に反して、普通に先輩の返事が耳に飛び込んできた。
部屋の外からギィっとドアをあけて、何食わぬ顔でエプロン姿の先輩が入ってくる。
「先輩!?」
「なんだよ、死神でもみたような顔しやがって」
「どこに行ってたんですか!?」
「朝メシの準備だよ、悪いが冷蔵庫勝手に開けたし、キッチンも使わせてもらった。ほらよ」
先輩は机にコトンと茶碗をおいた。
たまご粥だった。
無駄に美味しそうだった。ぼくより料理上手っぽいのが腹立つ。
「んー」
「は? なんだよその顔」
「んー」
「え、マジで何? お前その顔……『あーんして』ってコトか?」
コクコク、ぼくはうなずく。
「ついでにぼく猫舌なのでフーフーしてほしいでーす♡」
「体調悪いからって調子にのんなよマジで……」
先輩は額に青筋をたてながら、半ギレ気味にお粥をフーフーして食べさせてくれたのだった。
食べ終えた後、先輩は机にぼくのスマホをおいた。
「そうそう、昨日からお前のスマホを借りっぱなしだった。返すよ。それと、さっきメールが届いてたぞ。それで返し忘れてたって気づいたんだ」
先輩から返却されたスマホをみると、なぜだか結崎さんのアドレスからメールが届いていた。
『あなたの心の中には、守ってくれる存在がいたんだね。おめでとう。それと、ごめんなさい』
その日から、ぼくは死神に追いかけられる悪夢を視ることはなくなった。
☆ ☆ ☆
追記。
そこまでなら、ハッピーエンドなんだけど。
この事件の真実は、もっと後味の悪いものだった。
それはきっと、知らないほうが良かったコトなんだと思う。
だけどぼくは、真実を知りたいという欲求が勝ってしまった。
もしもこの活動記録をこの先まで読もうとしている人がいるのならば――覚悟してほしい。
”真実”がいつも、最善とは限らないんだって。
これは後日明らかになったことだ。
ぼくと先輩が同衾して目覚めた朝――結崎さんが死体となって発見された。
死因は睡眠薬の過剰摂取とのことだった。
彼女は、母親に連れられて行った心療内科に処方された睡眠薬をほとんど飲まずにストックしていた。そんな状況で、残った薬を一度に飲み込んでしまったらしい。
それだけなら、まだマシだった。
警察の調査によると、死亡推定時刻は発見される前の深夜だったそうだ。
したがって――ぼくにメールを出した時点で結崎さんは既に死んでいたということになる。
結崎さんの死後、彼女のアドレスからメールを出してきたのは何者なんだろう。
このメールに返信すれば、わかるのだろうか?
「……」
ぼくはメールアプリを起動したまま、ずっと考え込んでいた。
もう悪夢は見ていない。
もう一度首を突っ込めば、今度は戻ってこられないかもしれない。
「真実よりも、何を信じるか……かぁ」
今回、ぼくは先輩に生命を救われたんだと思う。
そう先輩に言ったら、「俺は何もしてないが? たまご粥は作ったがな」とはぐらかされてしまった。あの晩にみた先輩の出てくる夢についても、先輩は知らないの一点張りだった。
もしかしたら、先輩が命懸けでぼくを助けたというのは気のせいかもしれない。勝手な思い込みなのかもしれない。だけどぼくは、先輩のおかげで助かったんだと信じてる。
ぼくはメールアプリをタップし、返信するのをやめた。
するとその時――誤タップだっただろう。手元が狂い、メールアプリを閉じるのではなく『送信済みメール』のページを開いてしまった。
送信済みメールなんてチェックする必要はない。全部自分が書いたものなんだから――そう思いつつアプリを閉じようとすると。
「……コレ、なに?」
見に覚えのないメールが一つあった。
ぼくから先輩宛のメールだ。
本文には死神の説明と、そして例の定型文『どうかこのバトンを受け取ってください』。
「なんで、こんな……コレって……バトンじゃ……」
そう、これは”バトン”だ。
ぼくのスマホから、先輩のアドレスに送られている。
でも、ぼくがそんなことをするハズがない。
だとしたら犯人は……。
「――先輩だ」
ぼくはあの日、結崎さんが亡くなった日の先輩の発言を思い出す。
『ロックされてるな。PINコードは?』
『お、開けた。お前のメールボックスを確認する、いいな?』
『なあ、罪滅ぼしになるかはわからないが……結崎の言っていた”バトン”。俺に送ってみないか? お前、死神に捕まる直前まで来てるんだろ? せめて先延ばしにできるかもしれないぞ』
『ああ、安心して熟睡しろよ。俺がお前を死なせたりしない』
『そうそう、昨日からお前のスマホを借りっぱなしだった。返すよ。それと、さっきメールが届いてたぞ。それで返し忘れてたって気づいたんだ』
「先輩は、ぼくのスマホをずっと持っていて、ロック解除コードも知っていた。ぼくのスマホから先輩のアドレスに”バトン”を送れたのは……先輩だけ」
先輩が夢の中に現れたのは、先輩もバトンを受け取り死神に追われる身になったからだ。
あの夢に現れた先輩は、やっぱり本物だったんだ。
そして死神二体を同士討ちさせて対消滅させるという奇策は――たぶん失敗していたのだろう。実際は、結崎さんの死をもって”死の持久走”は幕を閉じた。
スマホの画面が滲んでいた。いや、視界全体にモヤがかかったみたいだった。
ぽつり、ぽつりと、雨の日みたいに画面上に水滴が落ちてくる。
「せんぱぃっ――バカじゃん……! うっ、ぐすっ……死ぬかもしれないのに……ぼくなんかのコト、助けるためにっ……あんな無茶、して……うっ、ううぅ……!」
先輩は、やっぱりぼくを守ってくれたんだ。
自分にバトンを送って、ぼくの死を先延ばしにして。
その間に、結崎さんが先に亡くなった。
死神から逃れるために睡眠薬で自殺したのか、死神に捕まった結果睡眠薬を過剰摂取して自殺させられたのか、どちらが先なのかはわからないけど。
どちらにせよ、ぼくが先輩に守られていなければ、先に死神に捕まったのはぼくだったのは間違いない。
『あなたの心の中には、守ってくれる存在がいたんだね。おめでとう。それと、ごめんなさい』
あのメールは、結崎さんの最期の謝罪の気持ちなのだろうか。
ぼくを巻き込んでしまったことへの懺悔だったのだろうか。
それとも――。
いまとなっては”真実”は闇の中だ。
先輩は何も語らないし、結崎さんはもうこの世にいない。
ぼくは何もできなかった。ただ、守られていただけなんだ。
いろんな感情がぐちゃぐちゃになって、ただ涙が止まらなかった。
追記、終。
FOLKLORE:悪夢の追跡者 END.
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