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9頭目 魔王軍からの勧誘

 レンゲをつれて自宅に戻り、事情を一から説明すると姉さんは快く受け入れてくれた。拒まれてもおかしくないのに、それどころかもう一人妹が出来たみたいだと喜んでくれた。


 姉がレンゲに自己紹介をしているときに判明したのだが姉の名前はナズナというのだそうだ。ごめんなさい姉さん、貴方の名前今の今まで知りませんでした....


 レンゲがウチに来たお祝いということで姉が張り切ってご馳走を用意してくれた。レンゲは人間の食べ物を食べるのが初めてだったので、終始目を輝かせながら食べていた。


 「ご飯を食べ終わったし、ヒナタちゃんはレンゲちゃんとお風呂に入ってきたら? レンゲちゃんお風呂も初めてなんでしょう?」


 「え、流石にそれは.... 不味いといいますか、何といいますか....」


 「うふふ、女の子同士なんだから恥ずかしがることないのよ?」


 「女の子同士.... ああ、そういえばそうか今は」


 夕食も食べ終わったころ姉に二人で風呂に入ることを提案されたのだが.... ここのところ自分が本当に男だったのか、と怪しくなるほど女の体が定着していた。


 風呂で自分の裸を見た時も何も思わなかったし、今も女同士で風呂に入るぐらい何もおかしくないよな、と自分を女としてとらえてしまっている。


 いやいやいや、気をしっかり持て俺。俺は男だ、どうにかして男に戻れる方法を探さないといけない。悪いけど女としてこのまま生きていく気は俺にはない。


 結局姉の勢いに負けてレンゲと風呂に入ることになった。最初は水に入るなんてと涙目になっていたが実際にお湯につかるととても気持ちがよさそうだった。


 普段レンゲは羽や触覚などの人ならざる部分は隠しており、何も知らない人が見れば人間にしか見えない。ただその状態でも肘から下とひざから下は虫のよう外骨格になっていて、その部分が彼女が人ではないことを物語っている。


 今の彼女は蜂なのか人なのか、それとも亜人という種属なのだろうか。自分の配下のことなのに何も知らなすぎるな俺。もっと勉強しないとかな....


 




 風呂を上がりそろそろ寝ようかという時、爆発音とともにすさまじい揺れが俺達を襲った。突然のことで何が何だか分からなかったが街中で何かが起こったことだけは理解できた。


 「地震、じゃないよなぁ。こんな夜中に....」


 急いで外に飛び出ると、家の前の通りが茨で覆追い付くされており、その中心に一人の女性がいた。どうやらその女性が茨を操っている張本人のようであった。


 「おいおい一体どうなってんだよ、また厄介ごと? 勘弁してくれ....」


 「あら、貴方は報告にあった子ね。よかった、君を探してたの」


 「俺を? どうして?」


 「君って私たちの中じゃ要注意人物だから。様子見に来たの」


 「様子見? それってどういう....」


 「つまりはこういうこと」


 そう言うと俺に向かって複数の茨が攻撃を仕掛けてきた。咄嗟に防御態勢をとったものの、全方位からの一斉攻撃を防ぎきることが出来ずに勢いよく吹き飛ばされる。


 攻撃を食らった直後、我慢できないほどの睡魔に襲われ立ち上がれなくなった。どうやら茨に何か仕掛けがあり、攻撃を食らった際にその毒か何かが俺の体に入ったようだ。



 「どうかしら、私の茨の味は。このとげからは睡眠作用がある毒が染み出ているから一撃でも食らったらオネンネってこと」


 「まるで茨姫だな....」


 「あらよく分かったわね、私は茨姫。茨と眠りを操りしもの」


 冗談で言ったつもりだったのに彼女は本当に茨姫だった。どうして向こうの世界のおとぎ話の名前がここで出てくるのか分からなかったが、そんなことを考えていられないほどの睡魔に襲われ気を張っていないとすぐにでも眠りに落ちそうであった。


 「大丈夫、今日は殺しに来たわけじゃないから。でも抵抗されると厄介だから動きは封じさせてもらうわね。今回ここに来たのは勧誘、そう貴方をスカウトしに来たの。どう、私たちの側に付かない?」


 「お前たち側って魔王軍ってことか? いやいや、OK出すわけないだろ。第一俺へのメリットが微塵も感じられないんだが」


 「そう慌てないの、今に分かるわ。こちらに着いた方が貴方のためでもあるってことが」


 「で、拒否したらこの場で殺すと?」


 「言ったでしょ、今日は様子見。最初から殺すつもりならこんなまどろっこしいことしなくたっていいもの」


 どうやら彼女の言うことは本当らしい。確かに俺を本当に排除しに来たのならあの一撃で仕留めているはず。それをしなかったってことは本当に殺す気はないのだろう。


 しかし何故俺が魔王軍に勧誘されているんだ? 別にそれほど強いわけでもないし、チート級の能力を持っているわけでもない。そんな俺を向かい入れてメリットなんてあるのか。


 駄目だ、頭を働かせようとするほど睡魔が強くなっていく。ついに抵抗虚しく俺はその場に倒れこみ、意識が遠のいていった。



 



 ヒナタが毒で眠った後、茨姫はヒナタを優しく抱え込んだ。


 「あらら、寝ちゃったのね。まあよく耐えた方だわ、このうちに連れて――」


 「オイコラてめぇ、女王様に何してくれとんじゃ」


 茨姫がヒナタを連れ帰ろうとした時、突如声を掛けられる。声のした方に目をやると、そこには茨の森を突き破り中に入ってきている一人の少女の姿があった。


 「え、貴方一体どうやって入ってきたの?」


 「どうやってって、そんなのぶん殴って入ってきましたけど?」


 「うん、ごめんなさい貴方が何言ってるかわかんないわ....」


 茨姫はこの状況が理解できなかった。何故なら周囲は完全に茨で包囲していたはずであり、簡単には突破できない。また茨の棘には毒があるので少しでも降れたらアウト。にもかかわらず彼女は武装もせず拳で茨を突き進んできたという。到底信じられるものではなかった。


 「えっと、何で貴方は眠くならないのかしら?」


 「あー確かに毒があったっぽいですけど自分の毒で中和しました」


 「うん、やっぱり貴方の言っていることはよくわからないわ」


 「まあどうでもいいですけど女王様返してください。じゃないと今この場で貴方を殺します」

  

 「それはできない相談ね、最大限に抵抗させてもらいましょうか」


 話が終わると両者とも殺気を放つ。ヒナタを巡り、二人は激突するのだった。


今日確認したところ、PVが1500人を超えていました。たくさんの方に読んでいただけているようで大変感謝しています。これからもよろしくお願いします。

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