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白き永遠のレナ  作者: ハイネ
2/3

リベンジマッチ

「転入生をしょうかいします。雪乃下さん、自己紹介お願いします。」



「はい。雪乃下零奈です。父親の転勤でから引っ越してきました。趣味はゲームで特技は運動です。よろしくお願いします。」

「は…………はぁぁ?!」


転入生、雪下零奈。愛想が良く容姿端麗、黒髪ロングな彼女の正体はフルランブル3代目王者、レイナ。そして、昨日俺を負かしたプレイヤーの中身だ。そんな彼女は今、さっそくクラスの輪の中に溶け込んでいる。


「レナちゃんめっちゃかわいくない?」

「うわ〜髪ちょーキレ〜い!」

「向こうの学校では何部だったの?」

「俺に今度ゲーム教えてよ笑」


どうやらクラスの連中の大半は彼女の正体を知らないようだ。

「まぁ、知らない方がいいんだけどな 。」


昨日の試合内容を思い出す。

彼女の戦闘スタイルは光属性レイピア使い。

素早い攻撃と回避行動を得意とし、彼女のその精密さと速度は常軌を逸していた。

その剣筋はソードアートオンライン「閃光のアスナ」そのものだ。


仮想のキャラや有名人にプレイスタイルを寄せるプレイヤーは少なくない。

現に、準決勝の相手には電撃使い御坂美琴にかなり寄せたプレイヤーと戦った。

しかし誰にもなれるほどこのゲームは単純ではない。


このゲームには才値と呼ばれるものが深く関わってするからだ。

これはプレイヤーがアカウントを作成する際に割り振られる能力の初期値のこと。

しかも才値はこれからの伸び代や適職の期待値までも計測する。


故に当然格差が生まれる。ゲームを始める前から。

才値に恵まれないプレイヤーはチュートリアルを終えないまま離れてしまうことがある。

これがこのゲームの最大なシビアな点であり醍醐味な面でもあるわけだが。


話を戻すと、アスナ似のプレイヤー、レイナは相当才値に恵まれていたのだろう。

そうでなければ極限までに偏り、しかし完璧なプレイスタイルを確立できない。

(だとすると、俺がとるべきだったアイツに対するキャラ対策は・・・・・・)

などと机に伏せながら脳内で詮索を駆け巡らせていると、


「黒乃、蓮君だよね……?」

見上げるとそこには先程まで群がりの中心にいた雪乃下零奈の姿があった。


「お、おう。そうだけど。俺に何か。」

「昨日の決勝戦の相手、やっぱり君だったんだね。まさか同じクラスになるなんてびっくりしちゃった。」


ホッと雪乃下は胸を撫で下ろす。

けど、俺は無神経な行動をとる雪乃下に苛立ちを覚えた。

敗者にかける言葉などないと。これはリアルとゲームを混同し、私情を交えている俺の方が悪いのかもしれないが。


「ああ、俺も正直びっくりした。昨日は・・・・その・・・、おめでと。」

俺はそっぽを向いてせめてもの礼儀としてそう返した。


「もしかして、昨日の試合のこと根にもってる?」

やっぱりな。雪乃下もあの結果に納得していないのだろう。

ポケモンで例えると、三大トラウマである橋下でのライバル戦。特にヌマクローを選んだケース。マジで詰んでた。このゲーム本気で引退しようか迷ったしね?ホントだよ???


「そりゃあ・・・・根にも持つだろ。悔しくて、堪らない。」


「黒乃君・・・・。」


え、雪乃下さんって蓮くんと知り合い?

ちょー仲良さげじゃん!ウケんだけど!

雪乃下と会話しているところを見たクラスの外野どもがうるさい。


「悪いな。俺、クラスでは少し浮いてんだ。」

「ううん。私、そんなこと全然気にしないよ。それよりも・・・・・場所、変えよっか。」


「あ、ああ・・・・。そうだな。」


傍から見たら俺と雪乃下は仲良いと思われているらしい。

そんな風に見えたのか、この会話の流れで。

しかし共通の話題があって話していたことには違いないので、俺たちは休み時間の教室をあとにした。




そして屋上へ。

「……で、なんだよ。ピンポイントメタでストレート勝ちなんてしたくありませんでしたって言いたいのか?」

我ながら最悪な捨て台詞だ。


「ううん。そうじゃない。どんな勝ち方であれ勝ちは勝ち。けど伝えたかったの。アナタがいたから勝てた。アナタだったから勝てた。ここまで、このゲームを愛せたんだよ。」


・・・・は?

確かに聞いた。

アナタだったから勝てた、と。

結局俺のピンポイントメタできて嬉しかったんですか。はいそうですか。


別にピンポイントなメタが悪いわけではない。むしろ対策できていない俺のせいでもある。

それを分かっていても負けを認められないのは、俺がまだまだ弱いままだからだ。

トッププレイヤーにあってはならない感情。


リアルも同じだ。

結局、クラスの陽キャに馴染めないのも陰キャのピンポイントメタを克服できないことを言い訳に逃げているから。

その現実を突きつけられているようで、目の前の彼女の視線を直視できない。


「…で、言いたいことはそれだけか?」


「別に嫌味で言ってる訳じゃないの。実は私がフルランブルで始めて戦った相手、それが黒野君、レン君だったの。」

「…じゃあ前に一度戦ったことあるってことか。」


「うん。その時私はどういうゲームか知らなくて、初期装備どころか武器防具を装備せずに挑んだんだ。バカだよね、私。」



あーー・・・・、覚えてるぞそれ。

去年のフリー戦で一度だけ、文字通りすっぽんぽんで挑んできたプレイヤーがいたことがあった。確かプレイヤー名はレナ。」


「その時に君に言われた言葉が

『このゲームは、弱ければ何一つ面白くはない。だが、理想の自分を無我夢中で追い求めるものほど楽しいものはない。』って。


誰ですか、そんな臭い台詞を言ったのは。

僕ですね、はいそうですね。

あの頃の俺はある対戦を境にスランプに陥って、リハビリで自己陶酔していたナイーブな時期なのでほっといてください。思い出したくないので。頼むから。


「あれから理想の私を求めて今日まで頑張ってきた。そして、認めて貰えるために昨日正式な場で君と戦った。」


この時気づいた。

彼女は才能だけじゃない。この一年間並々ならぬ努力をし、あがってきたのだろう。

そして彼女にとって昨日の試合はただの決勝戦ではなかった。

このゲームで努力し、成長した姿を実力を証明ため。


だが俺はそんなことも知らずに雪乃下・・・レナと戦った。

そして俺は負け、挙げ句の果てに敗北を受け止められずいた。

だがそうじゃないだろう。彼女が本当に望んでいた決勝戦は。


「……もう一回だ。」


「もう一回……?」

雪乃下は首を横に傾げる。


「お前の積み上げた努力とその驚異的な成長、俺がもう一度確かめてやる。ここで勝負だ、雪乃下。」


「・・・うん、いいよ。けど、条件があるの。」


「なんだよ、条件って。」


「私がこの勝負に勝ったらさ、私と付き合ってよ。」


「・・・今、なんて言いました?」


「だ・か・ら!勝ったら私と付き合って欲しいって。」


付き合う?雪乃下と俺が??


「は・・・?なんでだよ???」


「それは・・・、蓮君のことが・・す、好き・・・だからッ!私のこと、嫌い?」

スキ?ナニソレオイシイノ?


「いや、そういうことじゃなくてだな・・・」

正直いって釣り合わない。罰ゲームてよりご褒美。ナンデ、マケルトツキアエルノデスカ?


「じゃあいいでしょ?」

客観的にみても彼女はS級美少女であると思う。

だけど、俺は彼女のことをまだよくは知らない。それに・・・、


「俺のことよく知らないくせにいきなり付き合うはないだろ。まさか他の男にも同じこと言っているんじゃないだろうな?」


すると零奈はニヤッと笑いながら、

「ふーん、私がそんなに尻軽い女に見えたんだぁ。私、これが初恋だし、告るのだって初めてよ?」


「よくそんなこと恥ずかしがらずに言えたものだ・・・」

「本当に嫌だったら断ればいいのよ?もちろん、勝ってから、だけど。」


「わかった、その条件飲んだぜ。」


「ありがと。あと呼び方、レナでいいよ。」

「なら俺もレンでいい。」


フルランブルデバイスを起動し、対戦準備画面に移行する。

ちなみにフルランブルは5Gよりも二世代先の7G対応でこの時代ではかつてのスマホ一台分のスケールでAR対応のオンラインゲームを堪能できる。

さらに拡張空間内で生成されたものは五感で全て感じ取れる。硝煙の匂いから剣の重みまでリアリティが高い。


対戦開始の10カウントが鳴る。

「レン君の装備は、昨日と変わらないんだね。やっぱり黒の剣士キリトみたい。」

そういうレナの装備は昨日と変わらず、純白のスカートに灰の胴、“閃光のアスナ”を想起されるような装備だ。


3・・・、2・・・・、1・・・・・・、


「いくよ、レン君!」


「ああ、手加減なしでいくぜ。」



『トビラガ、ヒライタ・・・・・・・!』



-------ピカッ―――――――!!!!!!!


突然、目の前が真っ白になった。


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