赤ずきんの真実編
:赤ずきん
今日も朝、いつも通りの時間に眼を覚ます。外は晴れていて、窓からは眩い光が差し込んでいる。ベッドから降り、毛布を畳み、庭にある桶の水で顔を洗う。少し前までは、朝外に行くのも嫌になる程寒かったというのに、庭を見渡すと、小鳥の囀りとともに花々が光を発しているかのように美しく咲いていた。家に戻ろうとした時、振り返ると、桶にアゲハ蝶がとまっていた。
「……」
「……。」
少し、ボーッとしていたようだ。朝の眠気にはなかなか勝てない。
「あら、赤ずきん。おはよう。」
リビングにあるテーブルにかけると、母が朝食を用意しながら私に挨拶をしてきた。もちろん私も挨拶を返す。トーストにベーコン、ブロッコリーとキャベツを和えたサラダ。いつも通りの朝食だ。ふと異変に気がつく。パリパリ、パリパリと音が聞こえる。咀嚼音ではない。パジャマをはたいてみる。すると、キラキラしたものが股下を抜け、床へと落ちていく。私は持っていたフォークを置き、落ちた物を確認すべく、テーブルの下に潜り込む。そこには、蝶の翅が破れ散っていた。
「赤ずきん?今日は、おばあちゃんの家に行って欲しい…」
なぜ?なぜここに蝶の翅が?その時、先程のアゲハ蝶を思い出す。服に潜り込んだ、背中にとまったまま家に入った、食事中に家に入ってきた、原因を考える。
「ワインとか届けて欲しいん…」
母の声が聞こえる。が、何を言っているかまではわからない。一体なぜ?そうしていると、母が
「食事中に何しているの?ほら、早く食べて、用事を済ませてきてちょうだい。」
…?何のことだろうか。母に尋ねる。
「何のことって?今話したじゃない。遊んでいるから聴き逃すのよ。いい?」
そこから、母が面倒そうにおばあちゃんの家にワインを届ける話をしてくれた。
「忘れ物はない?よし、それじゃあ、気をつけて行ってくるのよ。」
そして、家を出た。