3.ギルドから部屋を借りたり
異世界冒険者寮の部屋は窓有りと窓なしに別れていて家賃は特にないが、申告なく1年利用がなければ退去となり中のアイテムか換金されてしまうそうだ。
一応再開時はその金額相当のチケットが貰えるらしいけど、飽きてやめた人は中々戻って来ないらしい。
「今ならどのタイプの部屋も選べますがどうしますか?」
「じゃあ窓付きの3階で」
部屋の広さは2畳程度でかなり狭い。
本当に着替えと荷物を置くだけの部屋なので収納を考えれば窓なしが良いだろうけど、私は窓のある部屋を選んだ。
森側と町側が選べたので森側を選ぶ。
「家具はこのカタログから選んで下さい。余ったポイントは装備チケットに交換可能です」
傾向として男性冒険者はカラーボックス1つと交換してあとは装備に交換。
コレクター気質があれば窓なしの部屋を棚で埋める。
女性冒険者は机とイスと鍵付ロッカーの3点を交換。窓付きの部屋は必ずカーテンも注文するらしい。
あと男性冒険者はカーテンよりブラインドを選ぶ事が多いそうだ。
部屋を決めた後に3階の休憩スペースでジンジャーさんが教えてくれてた。
カタログは何冊かありそこから選んで番号をタブレットに打ち込む。置ける広さも数値化されていて、この値内で交換できる。
「部屋はギルドカードでしか開きませんので現金を裸で置いても盗まれませんが、アイテムは清掃魔法でゴミ判定される可能性があるので最低でもカゴを1つは交換して下さい。魔法がかかっているので防犯、防火、防音、防臭もバッチリです」
隣の部屋の住民が窓を開けて喫煙しても大丈夫だし。部屋でカレーを作っても平気なのだそうな。
清掃は部屋にある掃除ボタンを押せば完了だが、定期的にギルドでも洗浄魔法をかけるそうだ。
1冊目はシンプルシリーズのカタログ。
最初の数ページがインテリアの見本となっている。
最低限の家具としてオススメされているのがイスとカラーボックスと衣装かけとゴミ箱。
ゴミは床にあっても清掃ボタンで勝手に消えるけど、気分の問題がある。
それに換金するほどでもないアイテムはここに入れると一緒に廃棄されるらしい。
ちなみに魔法で自動的に分別されるので分別は不要だがゴミなので換金されず、ある程度レアで状態がいいと洗浄後そのまま市場に出回ったりするらしい。
「もし恋人から貰ったアクセサリーが不要になったら廃棄施設へ行った方が確実です」
過去にゴミ箱に捨てたものが市場に出回りトラブルが起こったそうだ。
廃棄施設なら原則アイテムを完全に抹消できる。
いらない知識が増えた。
シンプルシリーズは木や金属そのままでデザインも単純なので見本のインテリアを丸ごと交換しても装備チケットが貰える仕組みだった。
例外としてコレクタールームはシンプルながらもチケット分しっかり家具に交換される。
虫メガネとかアイテム辞典とか家具以外の物も含まれているので装備チケットで後から交換しそうなアイテムもまとめてセットにしている感じだ。
次にモノトーンの家具のカタログを手に取る。
男性向けっぽいカタログで、黒と銀を基調にした家具や革張りのソファ、ウエスタン風のインテリアなどが紹介されている。
流石にチケットだけでは足りないのでクエストをクリアーすると家具が増えるコースなんかもあったが、2畳によく詰め込んだモノである。
世界観を無視してSFセットとかエジプトセットなど部屋を作る事が目的のゲームみたいになっていた。
あとセット家具には高い確率で灰皿が含まれていた。
てゆーか灰皿の種類が無駄に多い。シンプルな銀色のモノから昔のドラマに出てきそうなガラスの灰皿、下にゴミ箱がある筒畳のタイプに脱臭機付のものまでなんとなく見たら見開きで灰皿のページがある。
「タバコは吸いますか?」
「いえ。むしろ嫌いです」
私はタバコは嫌いだ。あの臭いがダメなので水タバコなら平気だけど、煙が出ないヤツは油断すると臭いだけバーンっと届くのが特に嫌だ。
「灰皿だけ外したり他の家具に差し換えも出来ますよ。端数分なのでサボテンに変える人が多いですね」
家具はセットだと割引が利き端数は切り捨てとなる。
同じ価値だとペン立や写真立てなどの小さな家具か、ゴミ箱をフタ付きにグレードアップする、その他オブジェ等が選べるが人気はサボテンなのだそうな。
「サボテンも床に置くとゴミ判定を受けます。ラグなど敷物の上はセーフなので不安なら敷物を購入することをオススメします」
部屋の8割未満の敷物は家具扱いで隅々まで敷くと床扱いになるそうだ。
「部屋が豪華になるセット家具はオススメですよー。達成後もさらなるオプション家具を紹介出来ますし。これを選んだ方は定着率もいいのでオススメなんですよ」
さらっと裏事情まで暴露しつつセット家具のカタログを出された。
一応最初のポイント内でも基本の部屋は買えるけど、シンプルな和室を忍者屋敷風にアレンジしたり、鎧兜のパーツを集めたり出来る和風コース。ファンタジックな内装にオブジェ用の凝った甲冑を飾れる西洋コースなどがある。
ちなみに鎧は本物の70%くらいのスケールなので結構飾れるものなのだそうな。
「畳は床判定されないので整理整頓に注意して下さいね。因みに忍者屋敷コースはこっちの世界の冒険者にも人気ですよ。専用スタンプカードは共通なので初心者クエスト~中級クエストあたりの受注が増えて助かってます」
忍者人気は異世界でも需要があるらしい。
和室はなんとなく惹かれるけど、残りのカタログも見て選びたい。
ファンシーカタログとゴージャスカタログにも目を通す。
最初のシンプルシリーズ以外はどれもクエスト攻略ありきの部屋だった。
カタログ掲載の家具を単体で買うことも出来るがどれも高い。
例えばゴージャスシリーズだと最初に買えるのはロココ調の棚とかイスをどれか1つだ。
しかしレンタルもできるのでいきなりロココ調の内装の部屋だったりロシアの宮廷風とかイギリスの豪邸風の部屋にいきなり住むコトも可能だ。
2畳なのでそれっぽい内装の部屋にソファ、テーブル、照明、棚の4点セットだけだけど…
因みに部屋での宿泊は出来ない。部屋にいる状態で6時間経つと強制送還されるのだ。
その為か家具にベッドが無い。
「名目上はレンタル品もポイントを貯めると自分の物にも出来ますが、買い取らないと期限が来たら消えます。他のコースでも同じようなプランがあるので半年ごとにインテリアを取り替える方もいますよ?」
リアルがゲームみたいだ。
ステータスとかの概念はないのにこんなところはゲームっぽいのか…
異世界冒険者はテーマパークに来る観光客と考えれば納得かもしれない。
結局私はファンシーのカタログから魔女っ子風の部屋。ラベンダードリーム基本セットを選んだ。
壁紙はスミレ色で床は濃い紫色のファーのラグ、窓枠を白から黒にカラーチェンジして、カーテンは少し濃いラベンダー色で端に黒のレースが着いている。
レースのカーテンを無しにしてその分で猫型の黒いクッションを貰った。
家具は小さな衣装ダンスが1つ。
それからステンドグラスみたいな笠の付いた照明。
他の家具はいきなり貰うのではなくスタンプを貯めてちょっとずつ欲しい物を選ぶコースを選んだ。
スタンプを貯めるコースだと同じ魔女っ子シリーズの色違いからも家具を選べるのだ。
他にはピンク、赤、淡い緑がラインナップされている。
淡いピンクはユニコーンドリームといって、ピンク系の色に水色や白をアクセントにした家具。
赤はストロベリードリームで、赤や黒を基調とした家具。
淡い緑はそのままグリーンドリームというバリエーションで、緑系の色に黄色と黒が混ざった家具になる。
色を変えるのは魔法で簡単にできるらしく、飽きたらチケットでカラーチェンジも可能なのだそうな。
別にスタンプ帳から家具を集める必要は無く、ただ通常より安いだけなので普通にクエストをクリアして好みの家具を買っても良い。
あと家具を買ったら段ボール箱を無料で貰える。
これがかなり万能で、座ってよし、テーブルにしてよし、もちろん収納にもなる。
私は当分これをテーブルにすることにした。
「レースのカーテンはクッションと差し換え出来ますよ。シンプルな物でしたら家具チケット1枚なのでデザインに拘らなければご参考に」
と、言われて段ボールをイスにすることも考えたけれど座り心地を考えて差し換える事にした。
スミレの花の模様入りのレースのカーテンもかわいいけど別にシンプルなものでも構わないし、普通のカーテンだけでも問題無い気がする。
因みにカーテンを丸ごと無しにするとローテブルとクッションのセットが付いてくる。
窓なしの部屋用のプランだけど、窓にカーテンは欲しい。
「それではお部屋の方は来週には整います。次は装備を買いに行きましょう」