Last Inning 夢を叶えたバカヤロウ
壁というのは、
できる人にしかやってこない。
超えられる可能性がある人にしかやってこない。
だから、壁がある時は
チャンスだと思っている。
- イチロー -
土曜日の夕暮れ、俺はいつものようにいつもの場所に車を止めてラジオをかける。まだ予定時間まで5分くらいといったところか。
郊外とはいえ駅が近いのでそこそこ行き交う人は多い。夕暮れに紅く染められた人々が諸々の表情で歩いていた。
暫くラジオを聴きながら車外の雑踏を見ていると待ち人である赤いシャツを着た少年が現れた。手に鞄を持ったその少年は大きなビルの入り口から小走りでやってくる。
「ただいま。お父さん」
彼の名前は三ツ谷吉光。俺こと三ツ谷康光の息子で小学3年生の男の子だ。この夏から進学塾に通い始めた。それで送り迎えは俺と妻で分担してやっている。
「おう、しっかり勉強してきたか」
「うん」
「小テストはどうだった?」
「……あんまり」
俺は吉光が広げた答案用紙を見る。確かにあまり誇れるような点数ではない。
「そっか、ま、あんまり気にすんな。がんばれ」
「うん」
吉光は勉強もスポーツもそこそこ水準以上にはこなせる子だった。しかしこの塾は名門中学の合格者を毎年何十人も輩出しているレベルの高い塾であり、彼も苦労しているようだ。
吉光はこの塾に入る前にはサッカークラブに所属していたが俺が見る限りではサッカーもなかなかの技量だった。少し前までは彼も「日本代表のサッカー選手になりたい!」なんて言っていたくらいだ。しかし、そんな彼が今夏サッカーをやめることになってしまった。その原因は――
「テストは無かったとでも言っておけ。まあバレたら母さんには俺からフォローしといてやるから」
「……うんありがとう、父さん」
彼の母親、つまり俺の妻が進学志向の強い教育ママであったからだ。
――――――――――
「小テストどうだったの?見せなさい」
俺の妻は教育ママだけあって塾の行事は全て把握している。おかえりも無しに息子への第一声がこれである。
「……なかった」
「うそおっしゃい。分かってるのよ、早く見せなさい」
ダメか。やはり小細工は通用しない。
吉光が俺の方をチラッとみる。
「ああ、ごめん。あまり内容が芳しくなかったから俺が隠しとけって吉光に言ったんだ。お前いつも怒るだろ?」
「また、あなたはいつもいつも吉光を甘やかして!だからこの子の成績も伸びないのよ!」
妻が俺に噛み付かんばかりに迫ってきた。矛先がこちらに向く。それでいい。
俺は目線で吉光に合図を送る。彼は申し訳なさそうにこくっと頷くと自分の部屋へとそろそろと帰っていった。
妻は未だにやいやいと俺に進学校の良さやら中学受験は両親の協力が大切だの、どこかで聞いたような教育論を喚いている。もう聞き飽きたし、何回聞いてもそうは思わないから反対してるんだが。
「なあ、今の吉光にとって中学受験ってそんなに必要か?まだ3年生だぞ。俺があいつの歳の頃なんて鼻水垂らしながら遊び回ってたわ。もっと好きなようにやらしてあげたらどうだ?」
俺は宥めるように言ったが、こういう論調は妻の耳には届かない。火に油を注ぐだけだ。なぜなら教育ママだから。
「何言ってるの?吉光にとって今が1番大事な時なのよ!今をどう過ごすかで吉光の将来が決まってくるのよ!あなたも協力してよ!」
「だから言ってるじゃないか。好きなように伸び伸びやらせてやれ、って。大体こんな大人になって社会に出てから糞の役にも立たないもんを習って何になるって言うんだ?本の一冊でも読んだ方がまだ役に立つし、それよかボールを蹴らせてやってたほうがあいつは楽しそうだったぞ」
一周回って疲れたのか、もしくは呆れたのか、妻は怒りとも呆れともつかない表情で俺を見る。
「もういいわ。あなたとこの話をしていると疲れる……」
溜息をつきリビングへと戻っていった。方向性が違うだけで同じことを言ってるつもりなんだがなあ。
その日の夕食の時間はなかなか重苦しい雰囲気のものだった。妻が俺と吉光に無言のプレッシャーをかけてくるので会話なんてものはなかった。まあ大体俺の責任だな。
――――――
「ごめんね父さん。僕のせいで喧嘩になっちゃった?」
その日の夜、寝る前にパジャマ姿の吉光が俺に謝りに来る。気の優しい子だ。しかしこの子が謝る必要なんて何もない。全部俺たち大人の責任なのだ。
大体、子どもにこんな難しい問題を解かせて出来ないから怒る、って方が間違っている。まずはお前が解いてみろよ、って話だ。
「気にすんなって。それで塾なんだがまだ続けたいか?父さんは別にあの塾じゃなくてもいいと思うんだが」
もともと御三家とやらにこだわる妻の強い要望で入った塾だ。トップレベルの勉強についていくのはしんどいだろう。塾だって1つじゃない。レベルを落としてみるのもいいと思う。
「んー……もうちょっと頑張ってみるよ」
「そうか。まあ無理すんなよ。辞めたくなったら父さんに言え」
吉光はこくっと頷き、自室へと帰っていく。頑張る奴だ。しかしなんて頼りなく小さい背中だ。まるで今の吉光の自信の無さが現れているようだった。
吉光はサッカーが好きで今夏までは近所の小さなクラブに所属していた。しかし妻の「サッカーかお勉強、今からどちらかに絞って向いてる方に集中しなさい」という方針により、まずはとある名門ジュニアユースの試験を受けることになったんだがそこで吉光は人生初の挫折を味わうことになった。何しろプロ入り準予備軍志望である周りの受験生はどの子もこの子も上手いのだ。吉光はパス回しにすら付いていけていないようだった。おまけにどうやらこの子は本番に弱いタイプのようだ。入団テストでは普段の実力の半分も出せていないようだった。結果はお世辞にも「惜しい」とも言えるものではなかった。すっかり自信を失くした吉光は今の塾へと通うことになった。
最近の吉光はちっとも楽しくなさそうだ。友達と遊ぶ時間も激減している。下手くそでもいいから好きなことをやらせてやりたいものだ。俺は意を決し
階段を降り、一階のリビングへと向かう。
「なあ、吉光の塾なんだがもっとレベルの合ったところに転塾させてやろうと思うんだが」
ソファに腰掛けニュース番組を見ていたらしい妻がテレビを消し、俺に向き合う。硬い表情だ。そう簡単にはいかない。
「レベルを落として何になるの?そうすればお勉強にはついていけるでしょうよ、でもそれじゃ御三家も狙えないしそれなりのところにしか行けないわ。そんなの吉光の為にならないじゃない!甘やかすだけが教育じゃないのよ‼︎」
確かなきつい口調で妻は俺の提案を退ける。彼女は吉光を溺愛する余り本気で医者か弁護士にしようと考えているのだ。彼女の愛情故の判断。それは俺もわかっている。だから今まで強くは言わなかった。
「レベルが合ってないなら学習効率だって悪いんじゃないか?それにそれなりのところってそこに通う子たちをずいぶん見下した言い方だな?それを言うなら俺もお前も『それなりのところ』に通っていたんじゃないのか?ちょっと周りが見えなくなってるんじゃないかお前」
思わずきつい口調になったがもうそろそろこれくらい言わないとこの愚妻はわからないだろう。昔から視野狭窄なところはある。『それなりのところ』を経由して今の俺たちがある。何か問題があるのか?
いつもと違う俺の口調に妻が押し黙った。
「中学受験を全否定するわけじゃないが、無理に高難度の学校を狙わなくてもいいと思う。勉強ができなかったり、得意なものがなかったりしたら幸せになれないわけじゃないと思うんだ。強い口調になってごめんよ」
俺は中学受験は投機みたいなもんだと思う。成功することもあるし失敗することもある。投資は「貴重な子供時代の遊び時間」。だったら全てを注ぎ込まず妻のいう中堅校狙いでもいいんじゃないか、と俺は考える。
「まあ、ちょっと方針考え直そうや」
この夜はいろいろと話し合い、暫く今の塾で様子を見る、しかしくだらない小テストの結果で一喜一憂するのは無し、ということで落ち着いた。
ただ何が彼にとって1番いいのか、本当の正解は俺にもわからない。しかし妻と同じようにテストの結果で吉光を叱るということは俺にはできなかった。
――――――
次の日の日曜の朝、早くに起きた俺は吉光の寝顔と妻が寝ていることを確認すると階段を降り玄関へと向かい郵便ポストに新聞と郵便物を取りに行く。
大学4年の秋、俺は30何回目かの就活に成功し今の会社に入った。中堅の証券会社だ。妻とは俺の会社の取引先の窓口で働いていたところを食事に誘ったことがきっかけで交際が始まった。あれから10年経つのか。土日は基本休みだし給与も悪くない。今の会社の待遇には不満はないのだが刺激はないといえば無い毎日だった。俺はこれまで特に大きな仕事や何かを成し遂げたわけではない。誇れることと言えば息子の吉光が良い子に育ってくれたことくらいか。
玄関のドアを開け差し込む太陽に目を顰める。
ミンミンとセミの鳴き声がけたたましく夏の日差しが強い。端くれとは言え元球児だった俺は年を重ねてもやはりこの季節になると甲子園大会の結果を目の端で追ってしまう。機会があればテレビ中継だって見る。とうの昔に諦めた夢。バットを握ったことのある子どもなら誰でも一度は憧れる夢。人はいつから自分の中に線を引くのだろうか。俺はいつ甲子園に出場する夢を諦めたのか、プロ野球選手になることを諦めたのか。もうはっきりとは思い出すことすら出来ない。
観戦することだけならできる。その夢を他の誰かに託すことならできる。今度吉光と妻も甲子園に連れて行ってやろうか。
ひらひら、と新聞紙と郵便物を掴んだ手から一枚の封筒が落ちる。おっといけない。
屈んで拾い上げようとした俺の手がはた、と止まる。
差出人の名前を何度も確認する。−−−手の震えが止まらない
意を決して急ぎ封筒を拾い上げると俺は中身を開封する。「約束のモノ」だ……
俺は夢中で家の中へと駆け出す。これだけ胸が昂ったのはいつ以来だろう。
「吉光、安佐子見てみろ!パスポート取るぞ!アメリカへ旅行だ!」
封筒の差出人は「決して夢を諦めなかった野球界史上最強のバカ」道免達海だった。
◇
−−−−道免達海。元プロ野球選手。現マイナーリーガー。内野手。外野も一応守れる。そして俺の幼馴染。
大学4年のドラフト会議で東京ヤクルトスワローズに育成枠3位で指名され入団。ギリギリとは言えプロに滑り込む。ドラフトの夜はタツミは深夜までラジオに齧り付いていて指名の瞬間は歓喜の雄叫びを2人で上げたものだった。その時隣の人に壁ドンされたが事情を話したら一緒に祝福してくれた。そのまま一緒に酒も呑んだ。あの夜はいい夜だったなあ。隣の人もいい人だった。
タツミは当然迷わずにプロ入りを即決する。恩師である森里兄妹からは「死ぬ気で頑張れ」と餞別の千本ノックの祝福を受けたそうだ。
世間からは全く注目されていないタツミだったが、入団会見の席で「背番号51が欲しい」と言ったのが少し話題になった。というかプチ炎上した。あれはウケた。多分腹を抱えて笑ったのは俺だけだろうけど。
何はともあれプロ野球選手道免達海の生活が始まった。1年目の成績は11打数5安打、2年目の成績は38打数12安打うち長打4本と徐々に結果を残していく。
そして3年目。シーズン途中、外野に複数の故障者を出したチーム事情によりタツミはレフトにコンバートされる。守備はやや覚束なかったがタツミはこの年に213打数67安打うち本塁打15本と打ちまくった。チャンスをものにして遂にレギュラーの座を掴み取ったのだった。
……プロ野球選手道免達海として最後の年となった4年目。タツミは開幕からレギュラーを張りこの年も打ちまくる。501打数152安打うち本塁打31本。飛ぶ鳥を落とす勢いの道免達海は育成枠の星と讃えられ、スターダムを駆け上がった。毎日のようにニュースの野球枠で特集を組まれるタツミを見るのは何だかタツミを見ている気がしなかったものだ。
そしてこの年スワローズはリーグ優勝を果たし日本シリーズへと進出する。その対戦は7戦目までもつれ込み、後に伝説のシリーズとまで言われた。それは両チームの激闘を讃えてのものだけではなく、別の意味もあった……
◇
タツミからの封筒を受け取った1週間後、俺たちはシアトルにいた。空港周辺には日本人の観光客もちらほら歩いてるのが見える。
俺がタツミからの手紙を受け取り急にアメリカ行きを提案した時、吉光は喜んだが妻は当然反対した。しかし吉光の「母さんのそういうのウンザリです。中学とかもうどこでもいいです。空気読んで?」と言い放った一言に折れた妻はアメリカ旅行を渋々了承した。とは言え久々の海外旅行を妻も内心は楽しんでいるようだった。
今回の旅は2泊3日。今日は宿に泊まり明日「目的の試合」を見てから明後日帰路に着く予定だ。そろそろお迎えが来る頃だ。
「えーと、電話掛けてみるかなあ。この混雑ぶりじゃ見つけるのは……おっと見つけたぜ」
探し人を発見する。日本にいた頃は時々会う機会はあったが約6年ぶりに会う彼女は変わっておらず、すぐに発見できた。向こうもこちらに気づいてくれたようだ。手を振りながら歩いてくる。
「久しぶりね、三ツ谷くん。あ、ごめんなさい、三ツ谷さんと呼ぶべきね。こんにちは、安佐子さん、吉光くん。わざわざ来てくれてありがとう」
「こちらこそ本当にありがとう。呼び方は……いいよ。昔と同じように呼んでよ。森里さん。あ、ごめん道免さん」
「「こんにちは。よろしくお願いします」」
妻と息子が丁寧に頭を下げる。
しかし相変わらずこの呼び名は慣れない。
そう、このシアトルでの宿と車を提供してくれるのは元森里由香子さん。今はなんと道免達海の妻となった道免由香子さんだ。
「昔の呼び方で呼んでくれてもいいわよ。私も未だに信じられないし」
元森里さんは苦笑しながら、そしてはにかみながら答える。
――――――――――
森里さんの運転する車に乗り込みシアトルの街を眺める。全体的に俺の住んでいる街より整備されていて綺麗だ。観光客も多い。
「今井さんと藤村さんにも泊まっていくように言ったんだけど彼らは別の宿を取ってるんですって。兄も一緒よ」
「そっかあ。久しぶりに会いたかったなあ」
今井さんと藤村さんとはたまに「同窓会」のようなものを開く。こないだ会ったのは2年前くらいか。2人とも未婚者だ。「気楽でいいぞ独身貴族は」と2人ともそんなことを言っていた覚えがある。
今井さんは某大手企業の柔道部に所属。数年前にオリンピックで銀メダルを獲得。34歳になる現在も現役を続ける。
藤村さんも今井さんとは違う会社の柔道部に所属。今井さんとはライバルとなるわけだが、こちらも現役を続けている。
2人とも「道免達海があんなに頑張っているんだからまだまだ負けられない」と、タツミが引退するまでは俺たちは辞めない、と言い張っているそうだ。
「明日には会えるわ。きっと」
森里さんの言葉に俺は頷いた。
道免家に着く。借り家らしいがアメリカの家ってのは広い。日本の家が狭すぎるのもあるのだが。とにかく俺たち3人家族が宿泊するには十分な広さだった。
今日は飛行機の旅の疲れを癒し、観光は明日の午前にする予定だ。
その日の夕食は豪華なものだった。相変わらず森里さんは料理が上手い。俺たち家族は腹いっぱい食べ、その日はぐっすりと眠った。
◇
ガツン!と嫌な音が球場に響き渡る。
球場を覆い尽くしていた歓声が一斉に鳴り止み静寂と悲鳴へと変わった。
『道免選手起き上がれません。大丈夫でしょうか?道免選手!』
片耳に付けていたラジオの音声からは悲壮な実況が聴こえてきた。俺は思わずイヤホンを投げ捨てる。
――――――――――
あの日の日本シリーズ第7戦。俺は恥ずかしながら会社をサボり妻にも秘密でチケットを入手して球場で観戦していた。
お祭り男道免達海はこのシリーズも打ちまくり、最終戦である7戦目は4番レフトで出場していた。
両チーム譲らず中盤までは一進一退の攻防を繰り返す。そして8回裏ランナーを溜めてタツミに打席が回ってくるとシリーズ4本目の本塁打を放ちスワローズが勝ち越し点を上げた。
……語らねばならない9回の守備。
淡々とアウトを重ね、スワローズはあとアウト1つで優勝というところまで迫っていた。
マウンドにはクローザーが立っており打者もツーストライクまで追い込まれている。あと1球で試合終了かと思われたその時だった。
ガキィィィィィ‼︎
白球とバットのぶつかる衝撃音が球場に響き渡り、打球は高々と左中間へと上がっていく。
球場のボルテージが最高潮に達する。この打球を処理すれば試合は終了し後は勝利の余韻に浸るだけ。誰もがそう思った瞬間だった。
ガツン!と骨の軋むような音が球場に響き渡る。
打球を追ったレフトの選手にセンターの選手が突っ込んだのだった。
……もちろん、レフトの選手とは道免達海。俺の親友であり最も尊敬する野球選手だった。
◇
久々の悪夢に俺は目を覚ます。冷や汗もかいているようだ。
時計の針は午前2時。時差もあるのだろうが、しかし嫌な夢を見た。
俺は妻子が寝ているのを確認すると部屋を出て洗面所で顔を洗う。全く嫌な夢だったぜ。実際に目の前で起こったことなので何度も見てしまうのは仕方ないか。
道免達海プロ入り4年目の日本シリーズ第7戦。最終回の守備時の衝突でタツミは椎骨にヒビが入る怪我を負った。それは選手生命に関わるほどのものだった。
不幸中の幸いか衝突してきた方の選手の怪我は大したことはなかったそうだ。球場の大歓声にお互いの声がかき消されて打球の処理や選手同士の距離感を見誤った為に起こった事故だった。誰かが悪いとは言えない。
入院したタツミを俺も見舞いに行った。
「おう、ヤス。会社サボって試合見に来たんだって?バッカだなあお前」
骨折部をガチガチにギプスで固められながらいつもと変わらない笑顔と口調でタツミはそんなことを言った。
バカ野郎はお前だ……なぜそんな顔が出来るんだ……?
俺たちは26歳になる。重大な怪我を負った選手を球団はいつまで待ってくれるだろうか。
俺は何も言えず見舞いの果物かごと持ってきた漫画だけを適当にそこら辺に置いて椅子に座り果物を剥いた。
静寂の時間が暫く訪れる。
「深刻な顔をすんなよヤスよお、まさか俺がもう終わりだとか考えてるんじゃないだろな?」
顔を上げるとタツミがこちらを睨んでいた。
「また見に来いよヤス。もっといいもんを見せてやる。そして俺はいつかメジャーリーガーになってそのデビュー戦にお前を招待してやる」
ギプスで全身を包んでいる状況で笑顔でそんなことを言う。信じられないが道免達海とはそういう男だった。
――――――
しまってあった封筒とチケットを確認する。中には明日の日付のシアトルマリナーズ主催の観戦チケット3枚。タツミがメジャーデビューする予定の試合だ。
俺はポツリと呟く。
「よくぞここまで……」
◇
森里さんの運転する車に乗りシアトルの街を行く。
グリーンレイク、ディスカバリーパーク、スペースニードル。シアトルには観光名所は多い。森里さんはいろいろと解説付きで案内してくれる。
怪我を負った2年後に球団をクビになったタツミは森里さんと共にアメリカへやってきた。マイナーリーグからやり直し再びメジャーリーガーを目指すために。
ふと気になったので妻子がいない時に尋ねてみた。
「あの、答えにくかったら答えてくれなくてもいいんだけど、2人はなんであんなに仲が悪かったのに、そのう……一緒になったんだ?」
俺の質問に森里さんは腕を組み考え込む。やはり難しい質問だったようだ。
「放っておけなかったから、かな。あのバカ1人だと野垂死にしかねなかったから」
困ったような笑みを見せそんなことを答えてくれた。
プロをクビになったタツミがマイナー行きを決意した時、周囲のほとんどが反対し、止めに入ったそうだ。28歳の怪我持ち型落ち選手なんてメジャーリーグが相手にするわけがない。当然だ。
球団も引退後の仕事を用意してくれていたそうだが、しかしタツミはそれすら拒否し、渡米を決意した。タツミの周囲は大層荒れたそうだ。しかしあのバカは反対の嵐を押し切る。
渡米の朝、森里さんはタツミを先回りし空港に到着していた。止めに来たのか、と訝しがるタツミを尻目に
「止めないわよ。この世界一のバカ」
そう言って同じ飛行機に乗り込んだそうな。
◇
日差しが黄金色になる頃俺たちはシアトルマリナーズの本拠地セーフコフィールドの近くにいた。もうすぐ試合が始まる。
「ゆかこ、そして三ツ谷くんと奥さんと子どもさんか?久しぶりだなあ。今日は来てくれてありがとう」
「おう三ツ谷。今日はめでたい日だなあ。終わったら呑もうぜ」
「今井さん、彼は妻子連れですよ。あまりアルコールは」
道すがら、森里兄、今井さん、藤村さんという懐かしい面々に会う。野球とトレーニングのやり方を教えてくれた「プロ野球選手道免達海」の生みの親である彼らは最終的にタツミの渡米に反対しなかった少数派だ。タツミは彼らにもチケットを送り約束を果たしたのだ。
「兄さん、皆さん来てくれてありがとう。積もる話は後にしてとりあえず球場に入りましょう」
森里さんの先導で俺たちは球場の座席へと向かう。チケットは連番でとってあったらしく俺たちの席は全て隣り合わせだ。
球場では選手たちが練習やウォーミングアップを続けている。いた−−−−
4年ぶりに見る幼なじみの顔は相変わらずでここまでの山あり谷ありの道のりをおよそ感じさせるものではなかった。その姿はまるで子どもの頃のように躍動しこの聖地を思いのままに駆け回っていた。
悲劇の衝突事故から日本で2年間リハビリを重ねたタツミはチームをクビになったのをいい機会と捉え渡米。4年間のマイナーリーグでの下積みを経て遂に今日という日にメジャーデビューの確約を取り付けたのだった。
「見ろ吉光。あれが道免達海選手だ。お父さんの友だちで小学生の頃から大学まで一緒に野球をやってたんだぞ」
−−−そして夢を諦めなかったバカヤロウだ
俺は指を差し息子に教えてやる。今日はあの偉大なるバカの背中をしっかりその目に焼き付けてほしい。
「父さんのお友だち……タツミ選手すごいね」
ある程度の事情は吉光にも教えている。彼がメジャーリーガーを志した夜のことを話すと爆笑していたし、日シリの悲劇の映像を見せると悲しそうな顔で涙ぐんでいた。
――――――――――
試合が始まる前に食料や飲み物を調達したり、トイレを済ませたり思い思いに観戦の準備を整える。
本日のスターティングメンバーが読み上げられ電光掲示板には1人ずつ名前が灯っていく。スタメンは無いだろうと思っていたがなんと「7番サード Domen Tatumi」の名前が読み上げられ電光掲示板へと灯る。なんだか信じられない。
「マリナーズの監督がアルベルトという昔プロ野球にも所属していたことのある元選手で、その時にタツミに乱闘で投げ飛ばされたことのある人なのよ。なんだかその時のインパクトで覚えてもらったみたいね」
森里さんがそんな説明をしてくれる。なるほど奇妙な縁というのもあったものだな。それで気に入られるというのも不思議なものだ。ちなみに柔道と古武術を仕込まれたタツミは外人相手でも乱闘で負けたことはない。
練習中フェンスの側にタツミが近づくと「タツミ!タツミ!」とサインをねだるファンまでいた。タツミは笑顔でそれに応える。森里さんによると数年やってきたマイナーリーグで結構ファンも付いたそうな。本当に凄い選手になったんだなお前……
試合前のセレモニーが終わり開始時刻が近づいてくる。
なんだか俺の方が緊張してきた。呼吸が浅くなり心拍数が上がっていくのが自分でもわかる。すると今井さんと藤村さんに肩をポンポンと叩かれた。
「呼吸を落ち着けてしっかり地に足を付けて観戦しよう。大丈夫だ。ここまでやって来た君の親友を信じろ」
コクリと頷き、深呼吸で息を整える。
−−−頑張れタツミ
試合が始まった。タツミがサードの守備に着く。メジャーリーガー道免達海誕生の瞬間だ。
他の野手と見比べてみる。やはりメジャーリーガーの体格は規格外で打球の音や投げる球の勢いも凄まじかった。
これを見るだけでも来た甲斐があったな。いやいや、ここで満足しちゃダメだったな……
初回からサードのタツミに鋭い打球がグラウンダーで飛んできた。タツミは軽やかにステップを踏んで受け止めるとファーストへと投げ込む。アウト。チェンジ。
まるで怪我の影響を感じさせない滑らかな動きだった。
メジャーリーガータツミのデビューとしては上々のプレーだった。
「流石だな道免!あやかりたいものだ!」
今井さんと藤村さんは満面の笑みで肩を組む。五輪常連選手の活力になったのなら何よりだ。
そして遂に2回裏、タツミの打席がまわってくる。「打者道免達海」のメジャーデビューだ。
日本人観戦者を中心に球場が俄かに騒めき始める。
屈伸運動を終えるとタツミはゆっくりと打席へと向かう。
マウンドには150キロを超える剛腕投手が待っていた。
あの夜から約13年−−−−
遂に夢を叶えたんだなタツミ。
おっと埃が目に入っちまったぜ。視界が霞んじまう。
「しっかり見ときなさいよあなた。吉光が見てるわよ。何よりも見たがってたじゃない」
妻が肩を強く叩きタオルを寄越してきた。ああすまねえ。
横を見ると吉光は目を煌めかせて打席を見つめていた。
タツミがルーチンを終えバットを構えるとマウンドに立つ長身のピッチャーが左足を上げ投球モーションの溜めに入る。
−−−−第1球
バシッ!とグラブの心地よい音が球場に響く。タツミのスイングは空を切りストライク。観客のどよめきが俄かに大きくなる。
ここメジャーリーグの球場は日本と違って鳴り物が無く自然音が球場によく響く。
第2球−−−スライダーを見逃しボール。選球眼は衰えてなさそうだ。
3球目 アウトローストレート ファウル
4球目 アウトロースライダー ファウル
5球目 アウトハイ ストレート ボール
6球目 アウトロー スライダー ファウル
7球目 アウトロー スライダー ボール
フルカウントまでやってきた。メジャーのストレートや変化球にも振り負けてはいない。しかしまだ打球を前に飛ばせていない。このまま力負けしないだろうか。
今井さんと藤村さんはリアクションを取りながら何か声を出しながら応援している。
思わず俺も握りこぶしに力が入った。
8球目−−−− インコースの高めにストレートの軌道の渾身の投球がくる。
タツミはウイニングショットに応えるようにバットを全力で振り抜いた。
ガシィィィィィィィィ‼︎‼︎
バットと白球の衝撃音が球場に響き渡り打球は弧を描きセンター方向へと伸びていく。
球場の歓声が大きくなった。
−−−いけ!
しかしそんな俺たちの願いも虚しく打球はフェンスを越える前に失速するとセンターのグラブへと収まった。センターフライ。
「惜しかったな。インパクトの瞬間に内側に食い込んできたみたいだ。ツーシームだなあれ」
森里兄がそう解説してくれた。なるほど、メジャーでは主流のボールだな。しかしよく外野まで打ち返した。
タツミは打球の行方を確認すると小走りでベンチへと帰っていった。
吉光を見ると「あー……」とやはり残念そうな顔をしている。
頼むぞタツミ。今日は1本でいい、打ってくれ。
――――――
試合展開はそこそこの打ち合いとなり、なかなか見どころのある試合となった。スコアは5-5。タツミの守るサードにも結構打球が飛んでくる。今もまたステップを踏み軽快に打球を処理した。
試合はそろそろ中盤から終盤へと移ろうとしている。
「守備のほうは問題ないんですがね〜1本欲しいですね」
「彼ならやってくれるだろう。きっと」
今井さんと藤村さんは3本目のホットドッグを頬張りながらうんうんと頷く。今日は呑んでいないが日本の球場ならしこたま呑むタイプだろうな、この人たち。
タツミのここまでの打席は
1打席目 センターフライ
2打席目 ライトフライ
3打席目 ストライクアウト (三振)
4打席目 ベースオンボールズ (四球)
と一度出塁はしたが、安打は出ていない。外野にいい打球は飛んでいくんだがあとひと伸びが足りない。
7回の裏、相手のピッチャーが調子を崩しランナーが出る。ワンアウト一塁。ここで迎えるバッターはタツミだった。我らが愛すべき偉大なバカはブンブンとバットを振り回しながら微笑を浮かべてバッターボックスへと向かう。
しかし相手の監督が審判に何事か告げるとブルペンの方から大きな選手がやってきた。ピッチャー交代のようだ。俄かに観客席から歓声が上がる。
メジャーリーグに詳しい森里兄がマウンドへと向かう巨漢を見て驚いたような表情になった。
「おいおい、ローズバーグじゃないか。この場面はきっちり抑えたいということだな」
ローズバーグとは160キロを越えるストレートと鋭く落ちるフォークを武器とするメジャー屈指の剛腕投手だ。今年は主に中継ぎを務めていたが今日のこの試合、タツミの打席で見られるとは。
マウンドの投球練習でもストレートがすごい音を立ててキャッチャーミットへと飛び込んでいく。こうして見ていても今まで見てきたピッチャーとスケールが違うのがわかる。
投球練習が終わり、審判が試合再開をコールする。再びタツミがバッターボックスへと向かっていく。難敵を前にこの対戦を楽しんでいるようなそんな表情だ。
それにしても森里さんだけはタツミがどんなプレーをしても表情が変わらないしリアクションも薄い。聞いてみると「タツミのプレーはとっくに見飽きた」そうな。ドライだ。
いよいよ対戦が始まる。ここで打たなければ流石にもう今日はチャンスは回ってこないだろう。
ローズバーグの左足がプレートから離れ投球モーションへと入る。淀みのない理想的なフォームだ。
第1球目、轟音を立ててストレートが投じられる。タツミは全力でスイングするがバットはボールに擦りもせず、160キロのストレートは捕手のグラブへとズドンと突き刺さった。
……真ん中高めの甘いコースだったんだが対応できていない。ダメか
続けて間をおかず第2球目が投じられた。またストレートが来る。タツミはフルスイングするがバットは再び空を切る。早くも追い込まれてしまった。スピードガンには163キロと表示されている。
相手チームの観客席が俄然ざわめき始めた。自軍の花形選手が凄まじい投球を披露しているのだ、当然だろう。
しかし対照的に俺たちの表情は晴れない。運がなかった。ここでこんな怪物投手を迎えることになるとは。ヒットの1本でも見たかったな。
ここまで楽観的だった今井さんと藤村さんが黙りこくった。
吉光を見ると口に手を当ててもう泣きかけている。
おい、タツミ。このまま何もせずこんな遠くまでお前の応援に来たウチの子を泣かせる気か?そんなことは許さんぞタツミ−−−
「タツミの得意なタイプよ。安心して。あいつはやるわ」
やや俺たちの間の空気が重くなった時。
俺たちの中で唯一彼のことを信じる女性、道免由香子が自信たっぷりにそう言い放った。
そうしているうちに3球目が投じられようとしていた。
ローズバーグの左足が素早くプレートから離れ、その丸太のような太い右腕から唸りを上げて豪球が投じられる。
シュルルルと音を立てて豪球はキャッチャーミットへと向かう。
タツミは再びフルスイングでそれを迎え打った。
シュコォォォン!!!
バットが白球を捉え、ファウルゾーンへとボールは飛んでいく。ファウル。
タツミのスイングが初めてローズバーグのストレートを捉えた。ローズバーグのストレートにアジャストしたようだ。
森里さんの解説によるとローズバーグは凄まじいストレートを持つが変化球はフォークしか投げられず球種が少ない。絞りやすくストレートに強いタツミにとっては得意な相手とのことだった。
その後もタツミはファウルを重ねローズバーグとの対戦は18球目へと突入していた。スピードガンに170キロと表示されたストレートもあった。
記録に残るような長い長い対戦に両チームの観客席がざわめいている。しかし今日デビューを迎えるロートル型落ち日本人選手が剛腕ローズバーグ相手にここまでやるとは誰も考えなかっただろう。森里さん以外は。
マウンド上のローズバーグがロージンバッグを手のひらで捏ねる。もはやその表情には一片の驕りも慢心もなく戦士の顔になっている。60.5フィート先に立つタツミを完全に敵と認め殺りにきていた。
そして呼吸を整えると遂に本日19球目のボールが轟音と共に投じられた。
ノビ、キレともに本日最高のストレートがキャッチャーミットへと向かっていく。
タツミはローズバーグの全力投球に応えるように全力でバットを振り抜いた。
ガキィィィィィィン‼︎‼︎
白球とバットが交差して心地よい音が球場へと響きわたる。ボールは夜空へと吸い込まれるように高々と上がっていく。
「いったか⁉︎」
「いやもうひと伸び足りない!くそ落ちろ!」
タツミの放った打球は弧を描くように夜空を突き進む。ライト方向へと上がった打球はしかし伸びが足りず、フェンスを越えそうにはない。しかしこれは−−−
「おいこれはいいとこに落ちるんじゃないか⁉︎」
打球はフェアゾーンとファウルゾーンギリギリのところに落ちそうだった。頼む、切れるな。
しかし、メジャーのプレーはすごい。こんな際のプレーにもそれは現れる。
ものすごいチャージをかけて野手の1人がこの打球に追いつこうとしていた。
「ああ、取るな!頼むフェアゾーンに落ちてくれ!」
しかし無情にも野手の足は早く、グラブにその打球は収まろうとしていた。
「ダメか……」
俺が呟いたその時だった。
野手の手元に収まろうとした打球がグラブに弾かれ転々とファウルグラウンドへと転がっていった。野手の捕球体勢が無理な体勢だったのと打球の勢いが強かったのが原因だ。
思わず俺たちは立ち上がり一斉に歓声を上げる。もちろん球場の歓声もものすごいものになっている。
「いけぇぇぇ!タツミィィィィ‼︎」
捕球の失敗を確認すると一塁ランナーは二塁を周り、タツミはすでに一塁をオーバーしている。誰もいないファウルグラウンドへと転がったボールはまだ捕捉されていない。
野手がボールに追いついた頃には一塁ランナーはすでに三塁に到達し、タツミは二塁を蹴ろうとしていた。
白球を掴んだ野手が大きく溜めをつくりバックホームする。しかし、これは−−−−
慌てた野手のバックホームは投げた瞬間大きく逸れるとわかるものだった。
三塁を超えた一塁ランナーは迷わずホームへ突っ込み、そしてタツミはというと……
三塁を蹴り、遂にはホームへと突入しようとしていた。−−−このバカヤロウ!
ホームベースを超え逸れたバックホームの送球をワンバウンドで受け止め、ローズバーグが鬼気迫る形相で捕手へと全力で投げ返す。
投手は投げ終わった後バックホームのミスに備え捕手の後ろで待機する場合がある。この時もそうであった。
今度はローズバーグの肩とタツミの足の勝負だった。あと数メートル−−−
全力疾走するタツミが前傾し地面へと体を滑らせる。キャッチャーが送球を掴み走り込んでくるタツミを捉える体勢に入った。ズザザザザ!と音を立て砂埃が舞い上がる。キャッチャーのタッチを躱すようにタツミは足からホームプレートへと滑り込んだ。
判定は−−−
『セーフ‼︎』
球場が一体となり本日幾度目かとなる大歓声が上がった。小さくタツミコールも聞こえてくる。
「オラァァァァァァァ‼︎シャアァァァァァ‼︎」
「キャホォイィイィイィ!ァァァァァァ‼︎」
今井さんと藤村さんは肩を抱き合い喜びあっている。やはり一流アスリートのノリは勢いが違う。
森里兄もうんうん、と満足そうに微笑み、俺の妻も満面の笑みで手を叩いていた。
吉光は、というと目を赤くして泣いていた。結局うちの子を泣かせやがったなあのバカヤロウ。
俺は、というと目に埃が入ったので少し視界が滲んでいた。そう目に埃が入っただけだ……
しかしなぜか森里さんだけは鬼の形相で腕組みしていた。ヒィッ……
「あのクソポンコツロートルバカ……2点目は必要ないよなあ……!」
決勝打を上げ、ランニングホームランまでかましたタツミは両腕でガッツポーズをつくり歓声に応えた後、しっかりした足取りで自軍のベンチへと向かった。
手荒い祝福でタツミはベンチへと迎えられる。全員が笑顔で遅れてきたルーキーを歓迎していた。
怒っているのは「荒ぶる美しき鬼神」森里さんだけだ。
球場が沸く中、この回以降タツミはベンチ裏へと引っ込みこの試合ではもうその姿を見せなかった。
すみません。ラストイニングとありますが纏まらなかったのでもう後1話だけ続きます。
もうちっとだけ続くんじゃ……