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Inning1 伝説の終焉

現在野球をテーマにした作品を扱ってるのでこれは何か書いとかんといかんな、と思って書きました。

では、本当に拙い拙い本作ですがご覧ください。

「オッォオォォオォオブッエエエエエェェェェェ!!!!!」


うるせえドン!!!

これで3回目の壁ドンだ。申し訳ない。

「おいタツミもう泣きやめって・・・」

「ブアアアァァァァァァァァァァァァン!!!!」

ドン!!!!

4回目。本当に申し訳ない。


「ガキみたいに泣きやがって・・・うるせえってタツミィ!」


「バルルバルル!バルバルバルバルバルバルバルバルバル!!!!!」

いやそうはならんやろ。


うるせえドン!!!!!!

5回目ですね、本当にごめんなさい隣の人。





この泣いてるアホは俺の幼馴染で超のつく馬鹿、道免達海ドウメンタツミ

今日はこいつのアパートで男2人野球見ながら酒飲んでたんだ。

目当てはもちろんイチロー選手。

本当は東京ドームに観に行きたかったんだがプラチナチケットの入手は貧乏学生にはハードルが高かったんで仕方なくテレビ観戦に甘んじたわけ。

でもテレビ画面越しでも憧れのイチロー選手の打席は一挙手一投足が神のように神々しく、例えヒットが出なくても夢のような時間だった。

今度はシアトルにみにいこーぜ、なんて本気で相談していた矢先、だ。

イチロー選手が試合後に会見を開くというアナウンスが入った。

俺たちは嫌な予感に一瞬顔を見合わせた。

引退!?――日本人の大半の脳裏にその嫌な一言が頭をよぎっただろう。

しかし、俺たちは不安を押し隠すようにポジれる材料を探す。


「なあ、イチローって50までやるっていってたよなあ!?」

「そうそう、昨日は惜しい当たりもあったしスイングも衰えてないやんけ、ありえんわ」

「集客能力も高いしな。球団も引き止めるだろ」


そう、俺たちはこの時はまだ楽観視していた。

こんなに野球を愛し現役にこだわり続けるイチロー選手が引退するなんてあろうはずがないのだ絶対に。


試合はマリナーズ優勢で淡々と進み続ける。

東京ドームの観客のテンションは凄まじくテレビ画面越しでもその熱量は伝わってくる。本当に羨ましい。


遂にイチロー選手の4打席目がまわってきた。ここまでは3打席ノーヒット。

祈るような気持ちで俺たちはテレビを、いやイチローを凝視する。

頼む打ってくれ――

イチロー選手のバットとボールが交差する。ガシャッという音と共に往年時にも負けないスイングでメジャーの一線級のボールをセンター方向へと弾き返した。

が、打球はショートが処理してアウト。しかしイチロー選手の足の速さも見事だった。


試合は進む。惜しむように時間は進んでいく。信じたくはなかったが遂にその時はやって来た。

イチロー選手がライトの守備につくと交代が告げられる。一旦守備についてからの交代は珍しい。

この時だった。俺たちは顔を見合わせる。

チームメイトたちがスタンディングオベーションでイチロー選手をベンチに迎え入れ、一旦試合が中断されるようにグラウンドにいる全員がイチロー選手と共にベンチへと引き上げる。泣いてる選手もいた。菊池選手なんか泣きじゃくりながらイチロー選手に抱きついてる。

これではまるで――



いやちがう、イチロー選手は引退なんかしない!

そう言い張ったのは達海だった。

こいつは生粋のイチローファンでイチローがきっかけで野球を始めた。

実家のこいつの部屋はイチローのユニフォームとグッズで埋め尽くされている。

長い長い試合が終わり、イチロー選手が場内を時間をかけて何周もしている間もこいつはずっとそう主張し続けてた。

で、現在に至る。





タツミの気持ちも分かるし、俺も泣いたが会見が終わって1時間。そろそろ泣き止んで欲しい。って言うかその泣き方くそうぜえ・・・

「いい加減落ち着いたか、タツミィ!」

返事はない。それもそのはず。

ご近所迷惑なので泣き止まないタツミに猿轡を噛ませ両手を縛ってるからだ。緊急措置だ仕方ないよな。


「フゴォ!フゴォ!」

初めは暴れてた達海もようやく大人しくなる。泣き止まない幼馴染には猿轡が一番だ。


「いいか、タツミ。今から猿轡を外すがまたうるさくしたり暴れたりしたら今度はてめえの嫌いな納豆をその口に押し込んでから猿轡かましてやるからな?分かったか?」

納豆、と聞いて達海は更に大人しくなる。

ふんふん、と頷く。

「よし、外してやる」


ふう、やれやれもう2度とごめんだぜこんな荒事は。

そう思いながら俺は達海の猿轡を外してやる。今思えば永遠に嚙ましておけばよかったかな。


「ゼエゼエ・・・」

「よーし水飲めタッツミー」

俺は冷たい水を飲ませてやる。酔いのせいもあるのだろう。こいつはアルコールに弱い。

達海はうまそうに水を飲み終える。


「ヤスミツよぉ・・・迷惑かけちまったなあ」

「いいってことよ。俺とお前の仲じゃねえか」

漸く正気に戻ってくれたか。俺はホッと胸を撫で下ろす。

しかしそうではないことをその五秒後思い知らされることになる。

「俺はよぉ、今日野球の神の言葉を聞いて決断したぜ。やるぜ俺はよぉ」

神とはイチロー選手のことだ。うむ、まだやっぱりテンションがおかしい。

「ふーん、決断って何?」


「ヤスミツゥ、俺はなあ」


「メジャーリーガーになるぜ!」

何言ってんだこいつ。


この時俺たちは20歳。都内の二流大学の貧乏学生でただの草野球チームの選手だ。

高校時代も三流チームの所属で最後の夏は地方大会3回戦負けだった。

俺たちの野球の実力ははっきり言って素人に毛が生えたも同然だ。

俺はこの時こいつを全力で止めるべきだったのか?それはこの話を読んでるアンタ達が判断してくれ。

そうそう、自己紹介が遅れたな。

俺の名前は三ツ谷康光ミツヤヤスミツ。主人公じゃないから忘れてくれてもいいぜ。

じゃ、また。

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