第九話「妙な説得力・満ち溢れる食欲」
肉には勝てない。
第九話「妙な説得力・満ち溢れる食欲」
「こらアカネ!」
「終わったよ。」
「終わっちゃったよ!!」
乳牛竜のクエストを勝手に受けたらしいアカネ。
いくら大規模戦闘だからといって……いや、大規模戦闘だからこそ少しの油断が命取りになるのだ。
実力もクソもないキイとアカネにとっては無謀とも言える。
「秘書様!取り消し!取り消しますから、乳牛竜レイド!!」
「いえ、もう署名いただきましたし。」
「そこを何とか!!」
キイは土下座をした。
「お願いします!!」
いくらお金に困っているからと、危険な仕事を選ぶわけにはいかない。
勿論、『その時』が来ることはあるだろう。
だが今ではない。今は着実に、確実にいくべきだ。
現状打破は必要だが飛躍しすぎ。
ここで断っておかなければ後悔する。そんな気がする。そんな気しかしない。
「キイ。」
「何だアカネ。」
「私はこのままじゃいけないと思う。食生活が偏りすぎて、このままじゃ栄養失調で死ぬよ。」
「……。」
「賭けようよ。人生そんなもんだよ。」
「お前本当にアカネか?食が絡むと別人に見えるよ……。」
しかしアカネの言うことは一理ある。
木の実や山菜だけでは、腹は満たされない。
肉を求めてきたからこそ、一段階上の生活レベルを欲したからこそ乳牛竜にたどり着いたのだ。
退くか、進むか。
どちらを取っても賭けなのか。
もしここで退けば、今までの生活を続けることとなる。生きてはいける。
それだけなのだ。
生きていけるだけ。
ただ実力は積めるだろう。
アカネが戦力として機能しない分、キイの本能は研ぎ澄まされていくだろう。
こちらが良いのかもしれない。焦る必要は無いのだ。
「キイ。」
……本当に一か八かの選択なのだ。
感情に流されるな。
だがこのままでは……。
例えば病気になったらどうする?
白魔法で治せるのか?
まずシロハネさんには無理だ。それなら他の人に頼む?
お金を要求されたらどうする?結局はふりだしに戻るだけだ。
荒波に揉まれた方が強くなるだろう。
賭けだ。
この選択はいずれ、命の有無を左右する。
ならば。
「…………分かった。」
「!」
「アカネ、乳牛竜を倒すぞ。だが一つ約束してくれ。」
「うん。」
「絶対に生き残るんだ。お互いな。」
「うん!!」
アカネの声は、自信と食欲に満ち溢れていた。
虹色を読んでいただき感謝です。
いかがでしたか?
まだまだファンは少ないのう。
仕方無いのだけれど。
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。