第七話「癒しの篝火・垣間見えた綻び」
今日はもう1話投稿するぞー。
第七話「癒しの篝火・垣間見えた綻び」
「彼女?……って、誰のことですか……?」
「あそこのウエイトレスの事です。貴方がたもよくご存知だと思いますよ。」
知っている人?
キイは秘書様の見やる方向へ視線を傾けた。
あいにく、この世界で見知った女はアカネと秘書様くらいだが……。
「…………ん……?」
どこかで見たことがあるような……。
「あっ……。」
あの女……もしかして、一緒にこっちの世界へ来た内の一人じゃないか。
「明るい女だ。」
「明るい女?」
アカネは覚えてないようだ。
こちらの世界にやって来た12人の男女。
キイとアカネを除く10人の内の1人にあの明るい女がいた。
「呼びました?」
こちらを見る明るい女。
とてとて……と、歩いてきた。
「あれ?確かあなたたちは……。」
「ど、どうも。」
「よいっす!」
「よいっす。」
アカネの意味不明な言葉に乗ってくれた!
何ていい人なんだ……!!
「私に何か用?」
「あっ、はい。えっと……急な話で悪いんですが、俺の怪我を治してほしくて。」
指先で、自身の左太ももを指した。
「あら……それは痛かったわね。すぐに治してあげる。」
明るい女が両手を、キイの左太ももにかざす。
「癒しの篝火。」
と、明るい女が口にした瞬間……両手から緑色の穏やかな光が溢れだした。
「ん……おっ……おお……!?」
太ももの痛みが和らいでいく。やがて傷口をふさがり、本当に怪我をしていたのかすら分からない程度にまで回復した。
「す、すごいですね……これが戦闘系職業・僧侶……。」
「まだ序の口。最初に教えてもらえる低レベルな治癒魔法だけどね。」
両手を引っ込めて苦笑い。その謙虚な姿勢に拍手喝采を……いや、やめておこう。
「でも助かりました。ありがとうございます。」
「いいのよ。あちらの世界に帰るまで、こっちで死ぬのは嫌だもの。」
「……そうですね。」
下手すれば死ぬ。
キイは改めて、自分の不甲斐なさを悔いた。
「ところであなた達、随分と仲が良いのね。知り合いだったの?」
恐らく、キイとアカネの事を言っているのだろう。
キイは正直に否定した。
「いえ、面識はありませんでした。余り物……みたいな。結局踏ん切りがつかなくて、色々あって、一緒に行こうかって。」
「へえー……。でも賢いかもね。一人だと心細いし、私だって秘書様がいるから何とかなってるようなものだもの。」
「成程……。お互い大変ですね。」
「そうね。」
……。
…………。
いやいやいや。会話を止めてどうする。
「そう言えば、お名前は?俺、結局アカネ以外の事をまったく知らないまま生きてる……し。同じ境遇なのにおかしくないかなって。思って。」
少しどもったけど聞けた。
女性を相手にするのは少々苦手かもしれない。
「私?私はシロハネ。宜しくね。」
「俺はキイです、こっちはアカネ。」
「よいっす!」
気に入ったらしい。
「よいっす。」
そして返してくれる、とてもいい人。
「また怪我したら、いつでも来てね。本当は僧侶を連れていった方が良いんだけど……中々新参者はパーティーに入れてくれないからね。」
「…………パーティー?」
「え、うん。知らないの?」
「ゲームでなら知ってます。」
「なら、それと同じ感じよ。」
「………………あっ、そうか。パーティーか。二人でどうにかしようと思ってたけど、パーティーを組めば何とかなるかもしれないのか……!」
「それが難しいって言ってるんだけど……まあ、そうね。」
希望の道もとい肉への道が見えてきた。
新参者は入れてくれないというのも、そこは当てがある。
……同じ境遇の仲間。
あと9人、どこかにいるはずだ。
同じように困っている者が。
キイはアカネを見た。
「アカネ!肉への道のりは意外と近いかもしれないぞ!」
「本当!?お肉食べられるの!?」
「ああ!」
明るい女、シロハネへと向き直る。
「シロハネさん、俺達みたいな他の新参者がどこにいるか心当たりはありませんか!?」
「っ……。」
シロハネは言葉に詰まった。
「……?どうかしました?」
「…………いいえ、何でもない。ごめんね。心当たりは無いかな。」
「そうですか……分かりました、俺達行きます!怪我を治してくれてありがとうございました。」
「ううん。気をつけてね。」
「はい。アカネ、早速クエストボードを見に行こう。」
「お肉!」
アカネはタタタッと元気よく駆け出していった。
「速っ!?あ、じゃあシロハネさん!また!」
片手を顔辺りまで挙げて挨拶をした。
すぐにアカネを追いかける。
「……。」
シロハネは笑顔で手を振った。
虹色を読んでいただき感謝です。
いかがでしたか?
ゆるゆるなような、ゆるくないような。
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。