第五話「自由に探索・苦労は沢山」
サブタイはいつまであんな感じのが続くのか。
ネタ切れだわよ。
第五話「自由に探索・苦労は沢山」
「今日は、戦闘はやめておこう。」
「え?」
アカネは首を傾げた。
まともに稼げていない2人からすれば、それはあまり得策ではない気がするのだが。
無い頭の中考えて、アカネは言葉を発した。
「なんで?」
「ああ。思ったんだけど、俺たちはグランガーデンの事をほとんど何も知らないだろ?一度よく知っておくべきじゃないかなって。」
「……。そうだね!」
なるほど!と思った。
流石キイだ、冴えてる。
単にアカネがおつむの弱いだけかもしれないが、それでも『この世界』の事を知ることはいずれ必要だっただろう。
……辺境グランガーデン。
グランガーデンには森林の民と呼ばれる者たちが居て、キイとアカネ、そして2人と同じように別世界から来た10人も所属している。
決まった目的は無い。
グランガーデンの周りにいる魔物を討伐することが主な役割だが。
「あっ、でも、食料探しに森には行くけどね。」
「うん!」
今日も美味しい野草が採れるといいなぁ。
アカネはルンルンと足取り軽く、キイの後ろに付いていった。
・・・・・・・・・
グランガーデンは、辺境というだけあってそれほど広くは無い。
だが賑わいを見せている。
これは何故かというと、森林の民の存在が大きいからだろう。
魔物を狩猟するため、より良い装飾品や武器、防具、ありとあらゆる『技術』が集まっている。
最新のものではないと思うが、買わずとも見てまわるだけでも楽しい。
技術が集合し人が集まる。
人が集まり、賑わう。
賑わいがまた新たな技術を呼ぶ。
その繰り返しなのだろう。
それに、辺境にいるのは何も森林の民だけではない。
一般の方々もいらっしゃいます。
屋台が出回ったり、やはり人が集まるからこそ市場が出来ていく。
そうして栄えて、今があるのだろう。
「あれ美味しそうだね!」
アカネが指差した方には、何かの肉が焼かれていた。
ケバブみたいなものだろうか。
肉が吊るされている。
「…………。」
よだれが出そう。
まともな食事が摂取出来ていないキイたちにとって、肉とは至高の一品である。
「いつか、あれをたらふく食べような。」
「うん!」
元気よく頷いたアカネ。
よだれが出ていなければ可愛らしかった。
グランガーデンは大きく分けて居住区、居住区その2、商業区、中央広場の4つ。
北には海があり、盛ん……ではないが、漁業も営んでいるっぽい。
土地は右に傾いた平行四辺形のような形で、中央に言わずもがな中央広場。
北西に商業区、北東に居住区、南に居住区その2といった感じだ。
宿屋は南側……つまり居住区その2に多い。
金が貯まればお世話になるだろう。
金が貯まれば。
・・・・・・・・・
……かなり歩いた。
すでに太陽は西に沈み始めている。
いやまあ、昼時だけど。2時とか3時とかそこら辺だと思う。
一応、このグランガーデンでは朝昼夜に一度ずつ鐘が鳴る。
それぞれ9時、1時、6時に時間を知らせてくれる。
中央広場には大きな時計台があるから、そちらで確認することも出来る。
「2回目の鐘から時間経ってるし、まあ感覚だけど、3時ってところか。」
「お腹空いたね。」
「そうだな。……野草でも採りに行くか。」
「うん!」
森だと、ウリリンに遭遇する可能性がある。
気を付けていこう。
30分ほどして、グランガーデン唯一の門を潜る。
城壁のように周りを石の壁で囲まれたグランガーデンだからこそ、門さえ見張っておけば魔物の侵入は防げる。
見張りをしているのは森林の民ではなく、どこかの国の兵士らしいが、詳しく聞き出すことが出来なかった。
そもそもこちらの世界で頼れる人物は秘書様くらいだし。秘書様もあまり深く話してくれない。
兵士は壁周りのパトロールも行っているらしく、強い魔物の噂もあまり聞かない。
グランガーデンはかなり平和な場所のようだ。
それでも、門を出れば別。
森には危険が多い。
この辺りで確認されている魔物は5種類。
ウリリン、コボルウォン、ハリモグラ、イクサベア、カギネコ。
ウリリンとしか遭遇したことはないが、一番に危険なのは狼に似た魔物コボルウォンだ。
イクサベアとは違い、知性を持って群れをなす。
一対一という状況は、まず作れない。
ただ幸いにも森ではなく、山の奥の洞窟や廃坑道に住み着いているので、こちらから会いに行く場合を除き、出会うことは滅多に無い。
「これは食べられたよな?」
「うん。……あっ、そっちの黄色のはダメだよ。痺れ毒があるから。」
「おう。」
主食が木の実になってるが、四の五の言ってる場合ではない。
それに木の実だって捨てたものではない。
「これ、甘くて美味しいよな。デザートにしようか。」
「賛成ー!いっぱい採ってこ!」
こうやって、二人で何かをするのは結構楽しいし。
「…………アカネ。待て、静かにしろ。」
「……。」
こういう時のアカネは静かだ。
単純だから言うことは素直に聞いてくれる。
「……。」
息を殺す。
……殺せているかな?
頬に汗をたらしていると、近くの草むらが揺れる。
姿は見えない。いや、針みたいな鋭いものが下方に。
「もしかして、ハリモグラ?」
「ハリモグラ?」
「ここら辺にいる魔物の1種で、小さくて愛らしい魔物だそうだ。ただ背中には無数の針があって、丸まったまま体当たりされるとかなり痛手を負うらしい。」
「色々と知ってるんだ。すごいね!」
「フッ……。」
いや、カッコつけてる場合ではない。
「ギシャ!」
草むらから飛びだしたのは、恐らくハリモグラ。
背中に針があるし。
うん、ハリモグラ。
「さっきも言ったけど、体当たりには気を付けろよ!」
「うん!」
と言っても、アカネは武器どころか防具も身につけていない。
そして無職。
出だしは最悪だったと思う。
……と、今はそんな事考えている暇は無い。
ハリモグラは、キイとアカネの正面に3匹。大きさは……猫くらいか?
……って、針だけじゃなくて牙も剥き出しじゃん。
鋭い。やばい。噛みつかれでもしたら人生終わりそう。
「……来た……!」
2匹が駆けてくる。
……跳んだ。
キイは槍を構え、跳んでくる1匹は避け、もう1匹は槍でなぎ払った。
「ギャ!?」
力任せに振ったから、かなり効いたはずだが。
跳んだハリモグラをハリモグラA、払ったのをB、様子見をCだとすると……。
ハリモグラAが、着地と同時にキイに駆ける。諦めてくれよ……。今日は戦う気は無いっていうのに。
「……!?いっ……!?」
突如、左の太ももに痛みが走った。
ハリモグラC……!?
くそ、油断していた……。
「キイ!?」
「大丈夫だ!」
大丈夫じゃないが。
「っ……!」
さらにはハリモグラAも、襲ってくる。
「くそっ……!」
払うしかない。
柄に、ハリモグラAの胴体が『当たってくれた』。
「この……!」
ハリモグラCに刃である穂を向ける。
逃げないのか。
キイは槍をハリモグラCに突き下ろした。
「ギッ……!!」
と、小さく声をあげて、ハリモグラCは地面とともに突き刺さった。
ビクッと痙攣し、動かなくなる。
「はぁ……はぁ……。」
息が荒い。
どっと疲れが出てきた。
ハリモグラBは動かないし、ハリモグラAはどこかへ逃げたようだ。
……勝った……のか?
「キイ!!」
アカネが抱きついてきた。
「アカネ……血が付くし、離れろって。……っていうか、何で泣いてるんだよ。怖かったのか?」
「…………。」
アカネは何も答えなかった。
その小さな身体は震えており、ギュッと力の込められた腕は少し窮屈に感じた。
・・・・・・・・・
「…………3ニコ?」
「ああ。」
「…………えっと、そのニコってなんですか?」
「あ?」
「ニコですよ、ニコ。3のあとに来たニコ。」
「通貨単位だろ。何言ってるんだ、お前。」
「ああ、なるほど。」
次の日の事。
ハリモグラの牙を剥ぎ取り、店に売りに来た二人。
店のオヤジさんに牙を見せたところ3ニコと言われたのだが……。
このニコがどれだけの価値があるのかが見当もつかない。
基準が無いのだ。
ろくにお金に触れてこなかったせいで。
「えっとじゃあ……3ニコでお願いします。」
「あいよ。……お前さん、訳ありか?」
「え?ま、まあ。」
「そうか。……何かあったら言いな、相談くらいは乗ってやるよ。」
「店のオヤジさん……。」
目頭が熱くなった。
こちらの世界で頼れる人が増えるだけでも、キイにとっては大きなことだ。
「ありがとうございます、店のオヤジさん。」
頭を下げて、キイとアカネは3ニコを手にした。
「よっしゃ、アカネ!初めてのお金だ!」
「うん!これでお肉買えるね!」
「待て、気が早い。魔物を倒したんだしかなりの額だろうけど、まだ分からないからな!」
「そうだよね……でも私、よだれが止まらない!」
「こらこら。お、あそこの店に行こうぜ!」
「お肉~!!」
駆け出すアカネ。
キイは太ももの痛みから、走れないことはないが歩いていった。
「お肉!お肉!」
やれやれ、はしゃぎすぎだろ……。
…………。
ん?
アカネのやつ、何いきなり倒れてるんだ?
「アカネ?」
「お…………肉…………。」
「え?」
まさかと思い、値段を見てみた。
…………。
ぱたり……と、キイも倒れた。
「10……ニコ……だと……。」
虹色を読んでいただき感謝です!
いかがでしたか?
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。