第九話「再会し、飲んで、飲みまくって、泣いて」
ずえりゃあ!!
グランガーデン新編
第九話「再会し、飲んで、飲みまくって、泣いて」
「くー…………くー……。」
机に突っ伏し、恍惚とした表情で寝ているのは、シルバとアカネとスモモの三人だ。
「相当飲んだみたいね。」
少し離れたカウンター席に座っていたキイに、シロハネは声をかけた。
「シルバさんですから。スモモもまぁまぁ……。あっ、アカネは未成年ですから、飲ませませんでしたよ。」
苦笑して答えるキイ。
シロハネは思った。
暫く会っていなかったが、変わっていない。誰も。
アカネは元気に走り回るし、シルバは酒好きで大人びた雰囲気だし、スモモは笑顔で優しいし。
そして……キイは……。
「キイ君、おかえり。」
「なんですか、改まって。」
「嬉しくてね、つい。帰って来たって事をきちんと確認したかったっていうか。」
「よく分かりませんけど…………ただいまです。」
「うん!」
笑顔で答えたシロハネ。
何故だかおかしくて、キイもつられて笑ってしまった。
・・・・・・・・・
「おええええ!!!」
「うぷ……。」
翌朝。
二日酔いのせいで、トイレにこもっているシルバとスモモ。
脱力感に苛まれながら、キイとアカネは酒場で会話していた。
「久しぶりだね、キイ!」
「おう。」
テーブル席で足をぷらぷらとさせて、楽しそうに話すアカネ。
「キイは、修行期間はどこにいたの?」
「俺はあの後、一度グランガーデンに寄ったんだ。ナカトミさんに千華を教えてもらう為に。」
キイの回答に、アカネは小首を傾げた。
「千華?ナカトミ?」
「アカネは知らないか。悪い。」
と、キイが頭を数回掻いて、続ける。
「ナカトミさんは、シュンカさんと居た酒飲みのオッサン。千華っていうのは……簡単に言えば人間の隠された力を扱う技術だな。」
「それをナカトミに教えてもらって、キイはまた強くなったんだね。」
「正直、人間やめてないかってくらいだな。アカネは?何をやって……っていうか。」
すると、困惑した表情を浮かべるキイ。
「ごめん。ビリングに置いていって。」
数ヵ月前、キイはアカネに黙って一人で修行に入った。ケガをさせた事もきちんと謝れず、負い目を感じていたのだ。
それを聞いて、アカネは少し視線を落とした。
「ううん。折角キイが決意をしたのに、もし面と向かって言われてたら止めてたかもしれない。多分、あれが正解だと思うよ。」
気にしてないと言いたげに、途中に顔を上げて、アカネは笑って答えた。
「ありがとう。」
「私もね、キイをビックリさせるチャンスだと思って頑張ったんだよ。グレースとか……クロサキとかと一緒にね……。」
笑顔のアカネの瞳に涙が溢れる。
やがてポロポロと溢れながら、アカネは話す。
「ずっとずっと頑張って……キイに……会いっ……たくて…………でもダメだったから……!!」
ぐずぐずと鼻水を啜りながら、袖で目元を拭う。
「負けなかったんだ…………わたし…………ぐずっ……今度は…………。ごめんね、急に泣きだして……。」
「いや、寂しい思いさせてごめんな。」
「ううん。また会えて良かった。だから大丈夫!」
「ほれ、ティッシュ。」
「ありがとう、キイ。」
数枚取って、ズビビーっと鼻をかむ。
「はい。あげる。」
「なんでやねん!」
使用済みのティッシュを手渡すアカネに動揺しつつ、突っ込みを入れる。
戻ってきた日常が可笑しくて、二人はつい吹き出してしまった。
虹色を読んでいただき感謝です。
いかがでしたか?
お次は19日の投稿です。
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。