第四話「グラングリン」
グランガーデンで、ぐりん。
グラングリン。
グランガーデン新編
第四話「グラングリン」
赤い髪の少女は走っていた。
桃色髪の女性と銀髪の女性は共に歩いていた。
和装に身を包む女性は笑い、三角帽子を深く被った少女は空を見ていた。
だからこそ少女は気付けた。
空に紫色の雲が現れたことに。
・・・・・・・・・
「…………!」
何かを察知した。
憎悪か、殺気か、はたまた慈悲か。
兎に角、とてつもない大きな何かを感じた。
他の者が気付けないのは何故だか分からない。
それでも一つだけ分かるのは、『あれ』が危険だということだけだった。
一閃き。
閃光を放った『あれ』は同時に紫色の雷を落とした。
グランガーデン中央・時計塔辺りだ。
賑やかだった町は突如として悲鳴に襲われる。
一瞬静寂が訪れたと思いきや、すぐに所々から不審がる声が出てきた。
一刻も早く時計塔へと向かう。
少女には分かったのだ。
察知した何かの正体が。
それは約1年前に味わったもの。
心身ともに震え上がらせる恐怖だ。
・・・・・・・・・
「何か落ちた!行ってくる!」
そう言って駆け出したのは、つい数日前に森林の民となった茶色髪の女の子だった。
年は12。
こちらの世界で目覚めたのは、中学生になってすぐの事だった。
そして。
時計塔に一番に到着したのは、恐らく彼女だ。
「何これ……?」
落ちた雷が円になって広がっていた。
バチバチと音がして、大きな熱を感じる。不用意に近付けない。
「ただの雷じゃない……。」
……事は容易に知れた。
一体これは何なのだろう……。
「まったく……また雑に落としてくれたものだ。」
「っ!?」
数メートル横。
雷の中から誰かが出てきた。
声は男性のもの。
しかしその姿は人間ではない。
大型の、そして人型の魔物だ。
緑色の体表をした『そいつ』は気だるそうに歩きだした。
「ん?」
ピタッと止まる魔物。
その瞬間だった。
ぐりん。
「ひっ……!!」
首を大きく曲げこちらを見たのだ。
彼女は尻餅をついた。
「もう駆けつけた……?…………いや……すでにここに居たとも言えるか。」
「……ひっ……!?」
アニメや漫画では可愛かったし、ゲームでも頼れる相棒で怖くない存在。
それが彼女の魔物に対する認識だった。
「はぁ……はぁ……っ!」
腰が抜けた彼女では、その場から逃げることも、声をあげることも出来なかった。
初めて実物を見た魔物の姿に、彼女は恐怖を覚えたのだ。
「見せしめに一人殺しておくか。」
歩み寄る魔物に対して、彼女は喚く事しか出来なかった。
虹色を読んでいただき感謝です。
いかがでしたか?
お次は9日の投稿です。
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。