第三話「とある少年との出会い」
うん……。
銀色の軌跡編
第三話「とある少年との出会い」
次の日。
シルバは仕事を探しに酒場へ向かう。
仲間に無事を知らせる為に、グランガーデンまでの渡航費を早く貯めなければ。
「こら待て!!」
前方から男の声だ。
小さなフード姿を追っているようだ。
「もしかしてあれが……。」
先日聞いた万引き犯の事か。
子どもだと言っていたので、あの背の低さからみて間違いないだろう。
「……。」
横を通り過ぎようとするフード姿の人物を、シルバはひょいと持ち上げた。
「なっ!?」
「残念だったな、クソガキ。」
ため息まじりにシルバはそう言った。
追い付いてきたおっさんがこう言う。
「おおっ、ありがとう!店の商品が盗まれてねぇ。おかげで助かったよ!」
「いや、それはいいんだが……。私が代わりに払うから許してやってくれないか?」
「えっ、そりゃ金を払ってくれるのでしたら構いませんけど……。いいんですか?」
「いくらだ?」
「38ニコです。」
「ん。」
財布からお金を取り出し、商人のおっさんに渡す。
「毎度!……ったく、このガキには困ったもんですよ……。」
ぶつくさと言いながら、おっさんは歩いていった。
「おい、離せ!離せよ!」
「さて……と。暴れんな。」
「うるせぇ!」
「……。」
シルバは尻を力いっぱい叩いた。
「いっ……!?」
「暴れるな。分かったか?」
「くそっ……。」
観念したのか、そのフード姿の子どもは抵抗しなくなった。
降ろして、逃げないよう首根っこを掴む。
フードを取ると、その子どもは10歳くらいの男の子だった。
しゃがみ、視線を合わせる。
「お前、何やってんだ?」
「何って……。関係無ぇだろ。」
「関係無ぇよ。でも聞きたいんだよ。何やってんだ?」
「……見りゃ分かるだろ。盗みだよ、盗み。」
「ほー……。」
「もういいだろ、離せよ。」
「なんで?」
「は?」
訝しげに子どもは聞く。
「そこまで話す義理は無い。」
それはそうだ。
だがシルバは問う。
「無いけど、気になるんだよ。なんで?」
「…………。金が無いからだ。」
「お前な……。だからって犯罪に手を染めちゃいけねぇよ。」
「仕方無いだろ!父さんも母さんもいないし、働くこともできない!じゃあどうしろってんだよ!」
「……家族がいないのか。」
「生憎、どっちも死んじまったよ。二人とも魔物に殺された。」
「強いからな、ここらの魔物って。…………お前、一人か。」
「……そうだよ。」
「飯、食いに行くか。」
「え?」
・・・・・・・・・
二人でやって来たのは、とある食堂。
ラーメンを啜る少年を見ながら、シルバは呟く。
「こっちの世界にもラーメンはあるんだな……。」
「ラーメン?」
「いや、何でもない。」
こちらの世界ではメンラーという名で通ってるらしい。
業界用語のようだ。
「私も食べるか……。いただきます。」
まずはスープを一口。
……なるほど、匂いでも薄々感じていたが、豚骨に似ている。
「……おおっ、美味い……。」
麺を口に含んでみたが、なるほど。
豚骨ラーメンだ。
ここまで再現されているのなら、メンラーも捨てたものではない。
仲間達と再会できたら、是非誘ってみよう。
「美味いか?」
「……おう……。」
少し照れ臭そうに言う少年。
「そっか。」
シルバは微笑み、二口目を食べる。
「うん……これは病みつきになるかも……。」
・・・・・・・・・
「ご馳走さまでした。」
「……ご、ごちそうさまでした。」
「おっ、行儀良くて偉いなぁ。お前は。」
「ふん……。」
メンラーを食べ終わり、一段落したところでシルバは聞いた。
「これからどうするんだ?」
「どうって……。」
「また、盗みを続けるのか。」
「……そうだよ。だってそうしなきゃ生きられねぇからな。」
「だからそれ犯罪だって。どうにかならないもんか……。」
腕を組み、シルバが唸っていると。
「なんでお前、俺につきまとってくんだよ。」
「あ?」
「無関係だろ、俺たち。」
「無関係だな。」
「じゃあこれで終わりでいいだろ。」
「……でも、無関係じゃなくなったし。更正はさせた方が良いだろうから。」
「余計なお世話なんだよ。」
「折角助けてやろうとしてんのに……。」
「それが余計だって言ってんだ!」
「店の中で大声を出すな。」
「…………。」
少年は立ち上がる。
「美味かったよ、ありがとう。…………じゃあな。」
そう言い残し、少年は去っていった。
「……ったく……何を生意気な……。」
虹色を読んでいただき感謝です。
いかがでしたか?
挿し絵とか載っけたいよね。
お次は19日の投稿です。
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。