第二話「禁酒」
シルバ本人にとっては大変なことなんです。
銀色の軌跡編
第二話「禁酒」
「…………。」
ベッドに寝転がり、天井を見ていた。
特に理由は無い。
起きる気にならないだけだ。
……ふと、仲間の事を考える。
10日前に別れた仲間達の事を。
ビリングの合宿所にて襲撃に遭い、シルバは一人この町へ逃れた。
キイ、アカネはどうなったか分からない。
キイの指示で、恥ずかしながら逃走を図った。
囮になった事もあってか、スモモは合宿所から逃がす事に成功した。
そのあと何事も無かったのなら、どこかで無事に保護されているはずだ。
クロサキも、シュンカも、テレも、グレースも、あそこで知り合った誰も彼も、安否は不明、逆に生存を知らせることも出来ない。
「……くそっ……。」
途端に、弱い自分が嫌になった。
むしゃくしゃした気分を解消するため、今日も魔物を倒す。
体を起こし、両手銃を手に取ると……。
「…………あっ。弾、買っておかなきゃ。」
弾丸が不足していた。
弾丸と言ってもとある木の実なのだが……これがここらではあまり手に入らない代物だった。
「2発で何か出来るのかよ……。」
苦笑して、流れの商人のもとへ向かった。
・・・・・・・・・
「おっ、あったあった。」
「いらっしゃい。」
シルバが求める木の実はハッカヤクと呼ばれる木の実だ。
衝撃を与えることで破裂し、中身がはじけ飛ぶ。
その特性を弾丸として用いた。
当然、食料には向かない。火薬の代わりとして雑貨屋で扱っていることもあるが、幽霊の町周辺では採取出来ないのだ。
「おっさん、これ。」
30個セットを3つ。
計90個購入する。
お金も底をつきそうだ。
「酒のせいかな……。」
毎晩飲むのはやめた方が良いのかもしれない。
ハッカヤクを持ち、酒場へ向かう。
魔物を倒して金を稼がなければ。
「あっ、こらっ!!」
その時。
商人のおっさんが叫んだ。
振り向くと、そこには小さなフード姿が。
「うわっ。」
ぶつかりそうになったので、シルバは避ける。
「待て!」
フードを追いかけていく商人。
「な、なんだ……?」
シルバが理解出来ないまま、商人達は姿を消した。
・・・・・・・・・
「今回の報酬は?」
「こちらでございます。」
酒場にて、魔物退治の報酬を貰う。
今のシルバが食いつなぐ為の手段だ。
「172ニコ……。」
今回の稼ぎはかなり良い。
これなら酒も……。
いやいや、毎晩飲むのはやめようと思ったばかりではないか。
「……そういえばお客様、盗人の話はお聞きになられました?」
酒場のマスターが話しかけてくる。
「盗人?」
「最近、シベヤの町で万引き被害が多く出ていましてね。何でも、その犯人はまだ子どもだとか。」
「子ども……。」
そこで、シルバはハッとした。
先ほどの店での出来事……あれはまさか……。
「あいつだったのか……。」
「はい?」
「いや、何でもない。それじゃあ帰るよ。また宜しくな。」
「ありがとうございました。」
虹色を読んでいただき感謝です。
いかがでしたか?
好きなことを我慢するって、大変なんだよ。
お次は17日の投稿です。昨日は忘れちゃっててごめんね!
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。