第一話「酒場には銀色」
また新章でっせ。
銀色の軌跡編
第一話「酒場には銀色」
魔物を倒せば生き残れる。
ここはそんな町だ。
……いや、ここに限った話ではないが……この町では『それ』が顕著に表れている。
シベヤの町近辺では、戦闘音が日常的に聞こえていた。
仕方無いのかもしれない。
ここいらの魔物は強く、侮れない相手だ。
そんな町なのに、派遣された兵も警護に雇われた傭兵もいない。
それでもこの町がこうして町として成り立っているのは、その魔物を求める強者が集まるからだろう。
だからと言って活気があるとは限らない。
身分を隠す者も多く集まり、町も暗い。
マントを羽織ったり、フードを被っている者ばかり。だからこそ幽霊の町としても有名なのだ。
「マスター。あいつら狩ってきた。」
一人のフード姿の人間が、そう言って小さな袋を置いた。
「これはこれは……ご苦労様です。中を確認致しますので暫しお待ちください。」
「ああ。」
軽く返事をしたあと、カウンター席に座った。
「…………。ん、これは……。」
ふと目に入ったのはボトル。
レモン色の液体が入っている。
「……。」
「お待たせ致しました。こちら、報酬金となります。先日の酒代を差し引いた余りとなります。」
「ん、ありがとう。」
ジャラジャラと音がする、布製の袋を受け取る。
「何ニコ入ってるんだ?」
「73ニコでございます。」
「まずまずだな。…………あそこの酒は飲めるか?」
「新作の海レモンですね。50ニコになります。」
「えっ……高っ……。」
「お止めになります?」
「……ああ……宿代が無くなっても困るからな……。」
ため息を吐いて、立ち上がる。
「じゃあまた来るわ。」
「はい。ありがとうございました。」
そうして、フード姿の人間は店を出た。
……外を歩く。
突如、大きめの風が吹いて覆っていたフードが捲れた。
「…………強い風だな。」
銀髪の長い髪がなびき、その容姿端麗な顔は眉を寄せたせいで歪んでいた。
「チッ……早くここから出てぇな……。」
フード姿だった女性・シルバは呟く。
いなくなった仲間たちを思いながら。
虹色を読んでいただき感謝です。
いかがでしたか?
お次は14日の投稿です。
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。