第三話「壊れされた居場所」
すもももーん。
桃色の軌跡編
第三話「壊れた居場所」
「…………。」
朝。
バスバロの町・喫茶店……だった場所。
「うぅ……っ!」
「…………。」
経営者のおじさまとおばさまの隣で、崩壊したそれを、彼女は黙って見ていた。
先日まで働いていた喫茶店。
災害でも事故でもない。
彼女にはこうなった心当たりがあった。
「…………。」
彼女は歩き出す。
「…………どこへ行く?スモモ。」
おじさまに呼び止められて、彼女は振り向いた。
隠しきれない怒りの表情を向けて。
「大丈夫。すぐに帰ってきますから。」
・・・・・・・・・
先日、貴族の男が来店した。
クレームをつけられて店内で騒ぎがあった。
……その男だ。
根に持ち、逃走したあの男の仕業に違いない。
その真実を知るのは簡単だった。
屋敷に着くと、その前で兵士に止められた。
「通してください。」
「何用ですか。」
「知ってるくせに……。あの調子に乗ったクソ野郎を出せって言わなきゃ分かりませんか?」
「貴様……。」
「おう、待て待て。呼んだのは俺だ。」
ヌッと入口から出てきたのは、スモモが目的としていた貴族の男。
「……!」
とりあえず、一発。
蹴りをいれておいた。
「ぐおあっ!?」
「ジャグチー様!?」
「ふぅ……。」
すると、どこから現れたのか、多くの兵士たちにすぐさま囲まれた。
「痛ぇな……お前……!」
「はあ!?おばさま達の心の方が痛んでますけど!?」
「俺に二度も手ぇ出しやがってよ……!!」
「何を仰っているのか。出したのは足ですよ?」
と、スモモは足をぷらぷらと振りながらそう言った。
「コケにしやがって……!お前ら、その女を捕まえろ!!」
「……!!」
本当に人が多い、でも負ける訳にはいかない。
群衆に向かって駆け出した、その時だった。
「うおっ!?お前誰だ!?」
「ぎゃあっ!!」
その群衆の後ろの方から、悲鳴が聞こえた。
何が起こっているのか分からずに皆が固まっていた。
「ふん…………小童が。」
「おじさま!?」
兵士の合間を抜けて出てきたのは、今は無き喫茶店の経営者であるおじさまだった。
スモモのもとまで歩み寄り、こう言う。
「…………無関係のお前が、一人で突っ込むな。」
「す、すみません……。」
「あそこは俺の店でもある。……二人でやるぞ。」
「……おじさま……!」
背中合わせになる二人。
「もう少し早けりゃ、色々と教えてやれたんだがな。」
「え……?」
「来るぞ。」
「あっ……はい!」
虹色を読んでいただき感謝です。
いかがでしたか?
動かしにくくも動かしやすくもない。
それがスモモ。
お次は10日の投稿です。
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。