第二話「ちょっとした災難とおじさま」
にじいろー。
桃色の軌跡編
第二話「ちょっとした災難とおじさま」
「すみません、おばさま。」
「ん?いいんだよ、スモモちゃんも災難だったねぇ。ぶかぶかのワンピースだけど許してねぇ。」
濡れた制服を着替えるスモモ。
貴族の男からのクレームでちょっとしたいざこざがあったのだが、経営者であるおじさまのおかげで、なんとか落着したのだ。
「あっ、その事ではなくて。……いえ、勿論それもあるんですけど、訊ねたい事がありまして。」
「私のスリーサイズ?」
「特に気にはなりません。おじさまの事です。」
「上から80でしょ?真ん中を飛ばして……。」
「何故真ん中を……。っていうか話を聞いてください!」
「ごめんごめん、ふと寂しくなっちゃってねぇ。」
「寂しく……ですか。私もです……。明日でお別れって事もあるんですけど、ここ、私の母の部屋に少し似てるんです。」
「スモモちゃんのお母ちゃん?」
「はい。家の中でも手狭で、でも物は多くて、でもそれが楽しい……っていうか、表現は難しいんですけど……。落ち着くんです。」
「そうかい。それならもっと早くに入れてあげたら良かったねぇ。」
「そんな事ないですよ……。」
……。
…………。
「って、話が脱線しちゃってます!!」
「スモモちゃん良い子だから、つい……。」
うふふと笑うおばさま。
「…………照れますもも……。」
「うふふ……で、旦那の事だったね。あの人の何が聞きたいんだい?」
「えっと、おじさまって何かやられてたんですか?あの人を追い払ってくれた時、微動だにせずに押さえつけてたじゃないですか!それも足で!」
「ああ……。」
「昔は戦士だったとか……そんなのでは……?」
「ううん、あの人は傭兵だったのよ。」
「傭兵……ですか?」
「それなりに名の知れた傭兵でね、まあ、私もその強さに惚れた口なんだけど。」
「へぇ……。」
無口で頑固そうな人で、黙ってついてこい……みたいな事を言いそうなおじさま。
成程、ガタイが良いのにも理由があったか。
「ただ、ある時にね、腕を怪我しちゃったのよ。それはもう酷いものでねぇ……。」
「腕を……?」
「護衛の依頼でね、護衛対象の女性を庇ったのよ。腕が使い物にならないからって、その時に使ったのが足技。」
「き、切り抜けたんですか!?」
「だから今も生きてるのよぉ。その腕を見て女性はわんわんと泣いてねぇ。それで治療してくれた腕をもう傷付けないって、戦いで腕を使うことをやめたのよ。」
「か、格好いい……。それで足技を鍛えたって事なんですね。」
「そうなのよぉ。……さて、昔話はこれくらいにして、そろそろ店に戻るわよ。」
「はい!」
・・・・・・・・・
「ひゅう!スモモちゃん、ワンピース姿も可愛いねぇ!」
「ありがとうございます、魚屋のおじさん。……っていうかお仕事は宜しいのですか?」
「女房に任せてるから大丈夫だぜ。」
「それは大丈夫では無いのでは……。」
苦笑するスモモ。
仕事を再開し、ウェイトレスに精を出す。
やがて昼になり、今日までの業務を終えた。
「今日までありがとうございました。」
「こちらこそありがとうねぇ。スモモちゃんが来てくれたおかげで最近は大繁盛だったんだよ!」
「そ、それは私のおかげではないですよ……。おばさま達が良い人だったから……。」
「あれまぁ、この子ったら!じゃあ今日はご馳走にしようかねぇ。」
「あっ……楽しみです!私もお手伝いしますよ!」
「じゃあ後で買い物にでも行ってもらおうかねぇ。」
「はい!」
虹色を読んでいただき感謝です。
いかがでしたか?
主人公スモモ、二話目です。
お次は8日の投稿です。
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。