プロローグ
「皆様、本日はわが社の新商品発表会にお越しいただき誠にありがとうございます!」
全身を黒一色のスーツで包んだ男の声がマイク越しに会場に響く。
兵器会社のなかでも最大手、XXXXX・XXコーポレーションの発表会ということもあり、大量の人が集まっている。
一つ、また一つと新たな兵器が紹介されていくごとに、小さな話し声とボールペンを走らせる音が静かに鳴り響く。
発表会が終わり、会場がしんと静まり返った後、帰国のために空港へ出発しようとしていたどこかの国のもとへ駆け寄る男がいた。
「あなた方の国へ是非ご紹介したいものがありまして」
ということで応接間に呼ばれたため今私は空調が効きすぎなくらいの部屋で人を待つ。
いったいどんな兵器を紹介されるのだろうか。そんなことを期待しながら待っていると何やら高級そうなスーツを身にまとった男が部屋に入ってきた。
スーツにさほど詳しくない私が一目でわかるのだ。さぞ高級品なのだろう。
そんなスーツに身を包むということはXXXXX・XXコーポレーションでもかなりの地位なのだろうと考えながら、その男にあいさつする。
そして例の紹介したいものについて話始めた。
「それは地雷です」
地雷、なんて前時代的な兵器であろうか。それは設置は簡単なのに対し、撤去が難しいことによりその土地の利用価値までも無くしてしまう。
それは22世紀になっても変わらない。第3次世界大戦でいくつかの国が地雷で足の踏み場もなく無人の地になってしまったのを忘れてしまったのだろうか。
その発言は私を失望させるには十分だった。私の目からそんなことを読み取ったのであろうか、男はいきなり声の調子を変えてこう続ける。
「地雷と言ってもただの地雷ではありません」
そういって男は兵器の説明をする。
それは地中を潜り地雷を設置していくモグラ型の機械だそうだ。さらに特定のパスワードを送信することで簡単に地雷としての機能をなくせることができる、同じように再起動も容易である。
さらに電池が続くかぎり利用できるそうだ。
「なるほど。そんな新兵器があるですか、確かにそんなものがあれば私どものような小国でも十分に他の国と渡り合えましょう」私は言う。
「そうでしょう、しょうでしょう。ではご購入されるので?」
「しかし1つ疑問があるのだ、そんなものをなぜ我が国へ?」
もっと大きな国に売れば何倍、いや何十倍もの利益が上がるだろうに。
「それは簡単なことでございます。私どもの会社の者はすべてあなたの国の国民でございまする」
「でも壇上にたった男は白人だったと思うが」
そう、我が国の国民は9割が黄色の肌、残りの1割が黄緑色である。白色の肌は我が国の人間ではない。
「正しくは社長や会長といった上の方は、ですね。
私、この会社の副社長でして。ほら私の肌の色は黄緑色でしょう。」
黄緑の肌は我が国にしかいいないといっても過言ではないほど他国にはいない。
なるほど、信用してもいいかもしれない。
「わかりました。でも我が国の国王に一度報告をさせていただきますね」
「意見が固まりましたら、またいつでも」男は笑顔でそう返す。
その2か月後、XXXXX・XXには少しずつ新型地雷の注文が来た。
その注文は26か国にもおよぶ。
そしてある日世界中で爆音が響く日が訪れる。
駅やビル中の広告パネルが一斉にXXXXX・XXのことを映し出す。
「皆さん!楽しんでいただけたかな!これからは私たちが世界を支配する!」
「ちなみにこの地雷は足や腕を飛ばすのではなく即死する威力があるから逆らわない方が懸命だ!」
非常に上機嫌な声でそう続けた。
その後、XXXXX・XXがさらに配信することはなくなった。なにやら新兵器の誤作動により本社が消滅したらしい。
本社で地雷を操っていたためすべての地雷が作動状態で停止したということだ。
現在世界には50億個を超える地雷が設置されている。
モグラどもはあと数年は動けるようだ、もはやこの世に安息の地はなくなった。
人口はそれほど残っているか。それを調査している間に億単位で人口が減っていくのでそんな調査にもう意味はないが。
これは、そんな世界で生き残った少女の話である。