本屋で出会うあの人
前回の続き、そして最終話です。初の作品ですので、拙い部分多くありますが気に入って下さると嬉しいです。
振り返ったはいいものの、どう返事すればいいか悩み「えっと、、そう、です」
変に口ごもった言い方になってしまった。
「あぁ。やっぱり」
その人は優しく微笑み、テーブルの横にあった荷物置きから重そうな袋を取り出し、私に見せた。
「さっき買った本です。やっぱり買おうとしてたんじゃないかと思って、、俺が帰るまでにはなるんですけど、良かったら読まれます?」
優しいのか人とズレているのか、よくわからない提案に受け取るも断るも咄嗟にできなかった。
「、、あの?」
「あっ、大丈夫です!小学生の時に読んでいたシリーズで、、。懐かしいと思って手に取ろうとしただけだったんです!だから、、」
「へぇ!小学生の時にこのシリーズを!?俺も中学生の時にこのシリーズにハマったんです!当時は何回も同じシリーズを借りるから、って図書委員から変な目で見られたなぁ、、」
「へぇ、、」
突然の語りに困惑した。こういう時どう反応するのが正解なのだろうか。
「どの話が1番好きです?」
「あっ、、。3話の主人公と母親の話が好き、ですね」
「そうなんですか!俺もなんです!うわぁこんな偶然あるんだなぁ!俺より若いから3話のシーンは感情移入しにくいだろうに!わかってるなぁ」
「そんなこと、、。3話は主人公の過去がやっと見え隠れした感じだったし、母親とのシーンも小学生ながら泣きそうになりました」
「俺も俺も!主人公の人間っぽい部分が全面に出てて、学校で読んだときには恥ずかしかったから我慢したけど、家に帰って泣いたよ」
拙くも受け答え出来ている感じがして、少し楽しかった。年上だからこそ小説の内容で盛り上がれるのかもしれない。それからいつの間にかその人は私の向かいの席に座り、カフェラテが来てもお構い無しにシリーズ本の話を続けた。私もキチンとカフェラテを飲みながらもシリーズ本達の魅力を熱く語った。
「私は最終回の最後の展開に納得いかなかったです。あそこは今までの主人公の行動からは、かけ離れた行動過ぎました」
「、、あの展開ね、、。あのシリーズ本マニアの中でも賛否分かれる展開だったよね、、。俺はあの展開嫌いじゃなかったなぁ」
「えっ?」
「だって、それまで他人優先だった主人公が最後の最後に自分優先の決断をした。結局は、人間誰もが自分が一番可愛いんだ、っていう人間の心理を見事表していてこの作者はすごいと感動したよ。でも確かに主人公の優しさに惚れ込んでいた読者達には、あの展開は裏切られた感がでるよなー」
その人はそう言うとやっとカフェラテに口をつけた。
「、、君は小説をよく読むのか?」
「いえ、、最近は漫画ばっかりです」
「そうか、、。最近は小説を読む人も少なくなってきた。このシリーズ本も皆から忘れられているんだろうと思ってたよ」
そう言ってその人はシリーズ本達を優しく撫でた。
「君がこのシリーズを覚えていてくれて嬉しいよ。俺はこのシリーズの関係者でもなんでもないけど、元々このシリーズが好きだったマニア達も、次の本や漫画に興味が移ったみたいで、、。それがなんだか寂しくてさ。あんなに熱く語り合った本が、誰にも見られず飾ってあると思うとなんだか、、。おじさんっぽいだろ?自分でもそう思うけど、寂しいんだよなぁ」
そう言われてハッとした。私もさっきたまたま見かけたからこのシリーズ本を思い出したのだ。見かけなかったら、一生思い出さずに過ごしていたかも知れない。小学校の時に読んだきりでも、こんなに熱く語れる本のことを、忘れていた。
「あっ、もうそろそろ行かなきゃ!またどこかで会えたら、また本の話しようね」
「あっ、、はい。ぜひ」
その人は残していたカフェラテを一気に飲み干し、シリーズ本達と鞄を持ってお金を払い、足早に店を出ていった。少し前までにあの人に抱いていたあの羞恥心はなんだったのか。時計を見ると随分話し込んでしまったのがわかった。
「、、」
私は立ち上がり、会計を済ますと店をでた。足は自然と本屋へと向かっていた。
それから2度と会えないと思っていたあの人とは、以外とすぐに本屋で出会い、手に小説を持っているのがバレると少しだけニヤニヤされた。それから連絡先を交換し、仲良くなっていっていろいろなことが起きるのはまた別のお話。
元々、長くダラダラと書いてしまう癖があるので、今回は二話完結にしました。「私」のことも「あの人」のことも多く語られなかったこの作品。皆さんの心に残ると嬉しいです。




