1話 確認と異世界への始まりの一歩
「え?異世界?いきなり過ぎない?」
『でも君毎日に、そしてこれからの将来に退屈してるんでしょ?』
『異世界ならもちろんこの世界と違うのだから、退屈はしないと思うよ?』
「ん~そう言われてもなぁ・・・確かに退屈はしてるけど絶望してる訳ではないし・・・。」
『昔の偉い人は言いました!退屈は人を殺す!ってねw』
「仮に、仮にだよ?異世界に行くとして家族とか友人、知人達の中から僕はどうなるの?」
『そうだね、いきなりこっちでいなくなると行方不明とか事件に巻き込まれたとか大騒ぎになるだろうけど、それは安心していいよ。皆の中から君と言う【存在】は無くなるから。』
「それもどうかとは思うけど・・・まぁ確かに現状は退屈だし、先もある程度は変わらないんだろうな・・・。」
「でもさ、僕を異世界に連れていくメリットって何かあるの?」
『特にないよ。別に君が行かないと世界が滅びるって訳でもないし、ぶっちゃけ君じゃなくてもいいんだよ。本当に単に僕の暇潰し。僕本体は動けないから異世界に送った君がどんな感じで生きていくのかそれを見たいだけさ。』
「・・・分かった。ならその話を受けよう。次があるなんてわからないし、せっかくだしね。」
『そうこなくっちゃね!』
そして少女が何か呪文の様な物を唱え始めると、総士郎の周りに赤く光る魔法陣の様な物が浮かび上がる。
『あっ、そうだ。大事な事を忘れてた。異世界に送る過程で、そのままだと君の魂は耐え切れずに消滅しちゃうからさ、ちょっと魂を弄らせてもらうよ?』
「!?」
『大丈夫大丈夫、痛くないし、すぐ終わるよw君という【存在】を君とたらしめてる物は魂なんだよね。その魂を弄る事で、今の【新田総士郎】という【存在】が変わって、いなかった 事になるんだよ。』
「そう言う大事な事を忘れるなーーー!!」
『ゴメンゴメンw弄ると言っても、君の魂に他の魂の欠片を融合させるだけだよ。もちろん自我は君のままさ。ただ、欠片の影響が何かしらでるとは思うけど・・・まぁ気にしないでw』
「ちょ、おま」
『じゃあ、準備も出来たし、いってらっしゃーいw向こうに行くまでに魂の改変は終わってるからね~』
・・・・・・・・・・・。
「・・・・う、うぅ~ん・・・。ッハ!ここが・・・異世界・・・?」
総士郎が目を覚ますと、そこは古く朽ちた神殿のような遺跡の跡地だった。
「土壇場で大事な事言いやがって・・・ん?何だろうコレ。」
総士郎の目の前にゲームであるようなアイコンが点滅している。
「これ押せばいいのかな?」押すとそれは総士郎の目の前で空間に文字が浮かび上がる。
『やぁ!無事転生出来たみたいだね?一応頼んだ身としては、少しばかり恩恵も与えないとねwこれは君の元いた世界のゲームとかを参考に作らせてもらったよ。スキルを少しとステータスウィンドウ、メール機能と後、無限収納、無限収納の中に少しだけど装備品と数日分の食糧と水を入れておいたから、尽きる前に人里をみつけてねwあ、後このメールに返信機能はないからね。では良き旅を!』
「・・・とりあえず人里目指すか・・・。その前に、ステータスの確認と所持品の確認をしておくか。」
=現在ステータス=
名前:新田総士郎
種族:人間(至人種)
Lv:31
HP:500
MP:250
力:180
敏捷:200
魔力:120
技量:200
パッシブスキル
天然理心流免許皆伝
北辰一刀流免許皆伝
鑑定眼
病魔耐性
自動再生(小)
縮地
アクティブスキル
無明剣
風魔法Lv2
所持品
大和守安定(不変処理済)
黒天の羽織
携帯食料×7
携帯水(1ℓ)×7
金貨5枚
「・・・あれ?剣道なんてした事もないのにこのスキルは・・・?」
そう総士郎が思った時に頭に自分でない誰かの記憶が流れ込んでくる。
「ッツ!?なんだこれ誰かの記憶・・・?気持ち悪い・・・。」
流れこんでくる記憶は過去の日本、幕末の京都で浅葱色の羽織を着て斬り合いをしている人物。
その中でで同じ羽織を着ている仲間達から呼ばれる名前、『沖田さん!』
暫くして記憶の奔流とも呼べる現象が治まると同時に理解した。
「ああ・・・魂の欠片ってこれの事か・・・。それにしても随分とメジャーな人の魂だったな・・・。」
「いきなりこっちの世界にきてまだ自分がどれくらいの強さとか分からないけど、Lvも1じゃないし、そうそう死ぬ事はないだろう。」
「とりあえず人里目指そうか・・・。」
神殿跡で装備を整え、軽く水を飲んだ総士郎はまずは道を探さなければと歩き出す。
なにせここは見渡す限り森なのだ。人里に行くにしろまずは人が通る街道を探すためにその一歩を踏み出した。
歩く事1時間くらいであろうか、ようやく舗装されたとは言い難い、昔の田舎の道のような街道に抜け出す。
「さて、道に出た訳だが・・・どちらに行くべきか・・・。」
森の中から出てきた総士郎の前には道があるのだが左右どちらが人里に向かう、または近いのかは分からない。
「こんな時はあれだね、この木の枝をこう・・・よし右だな。」
どちらが人里に近いかなんて分かる訳もないので、木の枝を倒していく方向を決める。
その間に装備している刀「大和守安定」を鑑定眼で見る。
「大和守安定」
総士郎の魂と融合した幕末の剣士沖田総司の愛刀としても知られ、刀の中では新刀上々作にして良業物であるが、その横に不可解な物が見えている。
「不変処理」
詳しく見てみると、まず刀剣類で大事な刃の部分まずこれが欠けない。また西洋の剣と違って、反っている日本刀は刀同士や、硬い物を斬ったり叩いた場合刀が刀身が元より伸びてダメになることがあるがこれもない。そして1番大事な空気に触れても酸化しない、つまり錆ないという事。
「これ・・・もう武器買う必要ないじゃん・・・。」
その呟きはもっともである。なにせどんな事をしても変わらない、壊れないのだから。