番外編・年末年始・後編
気づけばあっという間に4周年でした
この物語が4年も続くなんて誰が想像できただろうか……
無論、俺も想像してなかった
今後もよろしくお願いしますゥ!!
前話の追加改稿を1日に行いました
12月分のやつを、2月1日に
1月1日。
つまり元日。
そんな一年の始まりの日に俺は家族と神社に来ていた。
もちろん来たのは昨日来た神社と同じだ。たった1日で屋台の数が2倍以上になってる。すげぇ。
そして俺達家族はここで篠宮一家を待っている……のだが……。
「篠宮さん達遅いわねー」
「そうだなー、あの人達に限って遅刻はないと思って早めに来たんだが……。銀河、何か連絡はきてないのか?」
「『ちょっと遅れます』とだけしかきてないな」
新斎義父さんが政治家だからか、篠宮一家は基本的に時間に厳守だ。
待ち合わせをすればいつも10分前には来てる。まぁ蓮名と想愛とはいつも一緒に出かけるから待ち合わせなんて学校ぐらいでしかしないけど。
もちろん遅刻なんてされたことない。
……のだが、今まさにされようとしている。あと1分で待ち合わせの時間になってしまう。
まぁ別に1、2分遅れたぐらいで遅刻だと怒りはしないしそもそも遅刻の定義って待ち合わせから何分後だ?個人的には10分後ぐらい。だからまだ全然遅刻ではない。
でもこれはちょっと心配だな。
「父さん、母さん。俺ちょっと探してくる」
「別にいいけど……行き違いになったらどうするの?」
「それはたぶん大丈夫。きっとなんとかなるよ」
「……そう。ならいってらっしゃーい」
「うん、いってきます」
謎の自信。
それは俺ならば蓮名と想愛を見つけられると、行き違いなる前に気づくという圧倒的な自負。信頼という名の自惚れ。
だから大丈夫。
「なにあれ芸能人?アイドル?」
「わたし双子って初めて見たかも」
「きれー………かわいー………」
ほら大丈夫だった。
そこら辺にいた女の子達の目線の先にはちょっとした人だかり。
その中心には蓮名と想愛が—————
「———っ!?」
———その中心には、振袖姿の蓮名と想愛がいた。
子どもらしく純真無垢さを表す白に、少しの大人っぽさを感じるアダルティな紅色を足した綺麗な紅白の振袖。
そんな逸品を身に纏う2人の姿はまさに圧倒的煌びやか、圧倒的艶やか。
1月1日の神社だし天気気温的にも絶好の初詣日和だからか他にも振袖の女性は多く見かける。
だけどあの2人は他の女性達とはまるで違う。優雅さが、美麗さが、他の比ではない。
これで中学生ってのが一番恐ろしい…。
高校生になって可愛いから綺麗に変わり、胸が成長したらいったいどうなってしまうのだろうか。
少なくとも俺が理性を保てるとは思えない。
その時が来るのが待ち遠………末恐ろしいぜ。
……って、今はそんなこと考えてる場合じゃなくて!
夢のある未来も良いけど現実的な今の方が先!
「蓮名!想愛!」
「ッ!お兄ちゃん!」
「っ!お兄様!」
蓮名と想愛が俺を見つけるなり抱きついてくる。周りの奴等はこっち見るんじゃねぇ!鬱陶しいんだよ!
ちなみに抱きつかれた時に両脇腹を振袖の帯で抉られたけど必死に耐えた。
「2人とも大丈夫か———って2人?あれ?新斎義父さんと紅葉義母さんは?」
「お父さんとお母さんは……その……」
「ちょっとした事故に会いまして……」
「事故!?」
「あ、いや、事故っていうか……」
「自爆……ですかね…」
「自爆!?」
事故?自爆!?とりあえず何かヤバイ事が起きたってことは伝わった。
……何があったのかはさっぱりわからんが。
「とりあえず新斎義父さんと紅葉義母さんは遅れて来るってことか?」
「うん、そうなる……かな?」
「来るとしたらかなり遅れると思います…」
「ならひとまず父さん達に伝えに戻るか。ここに留まってたら人目が集まりやすい」
「そうだねー。さすがに周りからの視線が鬱陶し……邪魔……目障りだし」
「蓮名、気持ちはわかりますが全然言い換えられてません。むしろ酷くなってます」
「あとそれと………蓮名、想愛」
「うん?」
「はい?」
「2人とも……その………その振袖、似合ってる。……綺麗だ」
「「—————っ!」」
余計な言葉は使わない。
ただ思うままに、感じたままに、素直に褒める。
正直ちょっと(?)人間離れしたこの2人なら俺の思考なんて読み取れるという謎の確信を持っているが、それでも言葉にするのは重要だ。言霊が込められる。
それに褒められるのが嫌な人なんていないしな。
周りに人が大勢いるのもあって少し気恥ずかしくて小声になっちまったけど、ほぼ同じ顔でほぼ同じ表情をしている双子の姿を見ればちゃんと伝わった事が伝わった。
その、照れながらも嬉しさを隠しきれないはにかんだ笑顔を見れば……。
「さぁ行くぞ。蓮名、想愛」
「……うんっ♡」
「……はいっ♡」
蓮名が右腕に、想愛が左腕に再び抱きついてくる。
その際、また俺の両脇腹が2人の振袖の帯で抉られたが、今回も全力で我慢した。
カッコつける為ならば痩せ我慢上等だコラ……!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「つまり………猫が路上で寝ていて車に轢かれそうになっているところを助けようとした。しかし下駄を履いてる事を忘れて駆け出そうとしたため見事に転倒。着物の重さで咄嗟に受け身がとれずに顔面強打。そのため奥さんを連れて病院に直行……と」
「「そうなります」」
「あらあら〜……」
父さんが苦笑しながら新斎義父さんの状況を伝える。母さんも苦笑せざるを得ない。
え〜と……何その新年早々大アクシデント。
あの人一応日本の政治を担う有力国会議員なんだよな?
あ、ちなみに猫は新斎義父さんが転倒した音で起きて逃げたそうだ。良かった、新斎義父さんの犠牲は無駄じゃなかった。
「そんなわけでお父さん達は来れるかわからないから」
「だから私達だけでも先に来たってことです」
「そうだったのか…。ではおふたりを待たずして例年通り神社を巡ろうか」
父さんの合図で出発する。
新斎義父さんと紅葉義母さんには悪いけど来れるかどうかわからない人を待てるほど元日の初詣は甘くない。
それに人混みが苦手な蓮名と想愛のためにも早く参拝してさっさと帰らねば。
……そんなわけで。
軽く手水を済ませてからいざやってきました神社拝殿。
人が多い……多過ぎる……が、早めに来ておいてよかった。おかげであまり待たずに参拝できそうだ。
その通りに10分も待たずに俺達の番になる。
5人で賽銭箱の前に立って会釈。
賽銭箱に1円を入れ(御縁はすでに最高の為気持ちだけ)、二礼二拍手一礼。その間に夢というか願いというか野望っぽい事を神様に伝える。
夢はできる限り自分で叶えますが、できれば神様パワー(?)で手助けしたくださいと願いを込めて。
そして最後にもう一回会釈をして神前から撤収、退却、後ろに向かって全速前進DA☆(※境内で走ってはいけません)
「よし、じゃあ後はおみくじでも引いてから帰るか」
「そうだねー。……あっ、それとさっきお母さんから連絡があったよ」
「お父さんのケガは地面に頭から突っ込んだ割にはたいしたことなかったそうです」
「それは良かった」
新斎義父さんの無事も確認できた。これで心置きなく初詣を楽しめる。
ちなみに願い事については聞かない。
いくら蓮名と想愛の全てが知りたいからといって心の内に秘めた願いを聞くのはさすがに傲慢かもしれないからな。
「ところで蓮名ちゃんと想愛ちゃんはさっきどんなお願い事をしたんだ?」
「……おい父さん」
『傲慢かもしれない……』とか思った直後になんてこと聞いてんだうちの父さんは!!
これだと父さんが空気読めないのか俺がヘタレなだけなのかわかんないじゃないか!
というかいくら家族同然だからって40代のおじさんが多感な女子中学生の願い事をそうやすやすと聞くな!
……やっぱり俺は聞かなくて良かったかもしれない。
まぁそれはそれとして、2人の答えは……。
「「安産祈願」」
「「安産祈願!?」」
俺と父さんの声がハモる。
ちょっ、待て、違う、違うんです。だから父さんも母さんもそんな目で俺を見るなァ!!
「「というのは半分冗談で」」
「半分本気だったの!?」
「銀河……お前やっぱり……」
「さすがに責任取れる年齢と収入になるまで生はダメよ…?」
「いや違うから!やっぱりって何!?」
生じゃなければいいと母親から許しを得てしまった……。
………いやいや!蓮名も想愛も中学生、まだ早いまだ早い……!
「本当はお兄ちゃんに近寄る女が消えますようにって神様にお願いしてたんだー」
「今みたいに私達が近くにいる時は私達で駆除できますけど修学旅行とかだと離れ離れですからね。だから神様に頼んだのです」
「……………」
「………銀河」
「……これも愛故に、よ。受け入れなさい」
こんなお願い、神様もびっくりだろうよ。
そして俺もびっくりだよ。
……駆除って何?何したの?もしかして蓮名と想愛の為に必死で外見とかオシャレに気を使ってるのに他の女子に一切話しかけられたりしないのと何か関係ある?
……まさかね。
………まさか、ね……。
……………。
「………さ、おみくじ引こ!おみくじ!」
「うんっ♪」
「はいっ♪」
俺は逃げた。
逃げるは恥だがなんとやら。
戦略的撤退だ!
「さて、今年のくじ運はどうなるか…。昨日…ってか去年は最後の最後で良いの来たし」
「今年は絶対に大吉がいいなー。だって今年から高校生になるんだもん」
「やっとお兄様と同じ高等部に通学できるのです。きっと大吉でしょう」
「……高校生……そういえばこの時期の普通の中学3年生って高校受験で忙しいのか」
「星鏡学園がエスカレーター式でよかったぁ……」
「おかげで受験勉強の時間をお兄様と過ごす為に使うことができました」
正直言って蓮名と想愛の学力なら星鏡学園よりももっと偏差値の高い高校に行けるだろう。
でも言わない。
そんなこと言いたくもないし……2人も言われたくないだろうから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
………おみくじの結果。
俺:大吉
蓮名:中吉
想愛:大吉
父さん:凶
母さん:小吉
「なんでお兄ちゃんと想愛が大吉で私が中吉なのー!?」
「日頃の行いのせいでしょうね」
「なにをー!?」
「なんですー!?」
「まぁまぁ……中吉も悪くはないだろ」
「私だけお兄ちゃんと違うのが嫌なのー!!」
「小吉と吉ってどっちの方が良いのかしらねぇ……」
「あの〜……誰かお父さんの凶についてのコメントは……」
「「貴久お義父さんは黙ってて!!」」
「……これが反抗期の娘をもった父親の気持ちかぁ……」
哀れなり、父さん………でもないな。何故かちょっと感動してやがる。放っておこう。
そんなことより俺のおみくじの内容についてだ。
『恋愛:重い愛こそが青春』
『縁:二つの縁が確定』
……これなに?
重い愛て……思い合い、だよな?
なにこの誤字……わざと?わざとか?
……これが神様パワー(仮)かー、強い。
そして縁の部分……『二つの縁が確定』ってマジかお前。マジか。
神様に二股推奨された。
いや二股じゃねぇよ、重婚だよ。二股と重婚じゃ意味が全然違う。
神様に認めてもらった重婚だ、やったね!
「お兄ちゃーん!想愛がいじめるの。慰めて?」
「おぐっ!?」
「ちょっ!蓮名!?」
なんて考えてると蓮名に正面から抱きつかれる。
帯が(ry
「お兄様!私そんないじわるなんてしてませんから!」
「お、おぅ……」
「いえウソですやっぱりしました!なのでお仕置きしてください!」
「どっち!?」
てか新年早々なに言ってんの!?一応ここ神社内だからな!?
……いやいいか、神様だって俺達の関係認めてくれたし。
「というか蓮名、いつまで正面を陣取っているつもりですか!私はいったいどこに抱きつけばいいんですか!」
「ずっとかなー。想愛はお兄ちゃんの後ろに抱きつけばいいじゃん。そして私よりもちっちゃいおっぱいを当ててみたら?……私は正面からだけど♪」
「胸は1cmしか変わらないでしょう!いいから離れなさい!!」
「いーやー!!」
「俺の息子が圧倒的リア充な件について。……いいなぁ…俺もこんな青春送りたかったなぁ……」
「……あなた?それは私だけじゃ物足りなかったってこと?」
「いえそんなつもりは全くございませんごめんなさいすみませんでした誠に申し訳ありませんでした!!」
父の威厳、崩壊。
でも何故だろう、俺も将来蓮名と想愛の尻に敷かれる未来しか見えない。
これが天陵家の男の宿命か……。
「お兄ちゃん!」
「お兄様!」
「は、はいィ!?」
「「今日は一緒に 寝よ!/寝ましょう!」」
「どうしてそうなった!?」
わからない。さっぱりわからない。
……が、はっきりわかることがある。
それは俺とこの双子とはずっと、ずっと仲良しだってことだ。なんたって神様のお墨付きだし。
「さぁ行こー!お兄ちゃん♪」
「さぁ行きましょう!お兄様♪」
「……あぁ、そうだな!」
新しい年になっても、何年経っても、俺達は3人で仲良く過ごしていく。
………ところで帯が(ry
最近投稿ペースが凄まじく不規則になってるような……(実際なってる)




