田舎の山と川
前話の追加改稿を12日に行いました。
クリスマス?なにそれ、そんな名前の行事知らない!
—— 5月2日 ——
「おっはよーぅございま〜す!銀河お兄さん、朝ですよ〜!」
目が覚めたら見知らぬ天井……ではなく、小さい頃から数えきれない程泊まったことのある篠宮家での俺の部屋。
ただいつもと違うのは俺を起こしにきたのが愛する妹達ではなく、そのいとこの鈴子ちゃんだということ。
「……おはよう鈴子ちゃん。蓮名と想愛は?」
「2人ともぐっすり寝ていたので起こすのはかわいそうだなーって思って」
「あぁ…うん、なるほど、了解」
そういえば昨日は街に行ったり水族館に行ったりといろいろあったからなぁ…。2人とも途中で気分が悪くなってたし。
だから結構疲れがたまってたんだろう。ならばこころゆくまで寝かせてあげないとな。
「ところで烈は?」
「れんちゃんとそーちゃんを起こそうとしたからイスに縛り付けた」
「ありがとう鈴子ちゃん、アイツは後で釜茹でだ」
眠気なんて瞬時に消え去った。
蓮名と想愛の天使のような寝顔を見ていい男は俺だけなんだよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「今日はどうする?」
蓮名と想愛によって培った人体の縛り方を烈でたっぷり実践した後、蓮名と想愛も起きてきて、昨日の夜に買っておいた朝食を食べながら今日の予定を考える。
「出かける……しかないでしょうね。この家にはゲームがありますけどそこまで多いわけじゃないですし、それに一日中ゲームをやるってのもキツイですからね」
「でも出かけるっていっても街まで行かないとここ周辺には何もないよ?」
「えー!また1時間も電車に乗るのー!?れんちゃんもそーちゃんも銀河お兄さんもよくそんな生活に耐えられるね…」
「来る時にいつも思ってたけどここ周辺って本当に何もないよな……川と山と田んぼしかねぇ…。というか前来た時より家の数減ってないか?」
「そういや俺、この前近くの山でイノシシ見たなぁ…。もしかしてここ、田舎なのん?」
今日の予定を話していたはずなのに気がつけば田舎談義になっていた。
どこに行くにしても移動だけで結構時間がかかるんだから早めに決めなきゃいけないんだけどなー。
でも途中で話が変わったものの、言いたいことはもう言ってるんだよな。
何かをするためにはまた街に行かなきゃならない。
しかし、それだと移動だけでも疲れるうえに、時間も交通費も結構かかる。(俺達は学校にバスで通学しているため、電車の定期券は持ってない)
でも家じゃあなー。せっかく烈と鈴子ちゃんがいるのに一日中家でゲームってのもなー。
近所で時間が潰せる場所かぁ…。なんかないかなぁ…。
「……あ、そうだ。釣りしようぜ」
「釣りかぁ……そういや最近全然やってなかったよね」
「そうですね、コツを取り戻すのに時間がかかりそうです」
「釣り……うん、そうだな。悪くないな。久しぶりにやってみるか!」
「だろ?鈴子ちゃんは?」
「釣りはやったことないですねぇ。だからこそやってみたいです!」
よし、決まりだ!
というわけでさっそく準備にとりかかる。
「釣竿って5本もあったっけ?」
「たしかうちの倉庫に3本ぐらいあったはずです」
「なら残りは俺の家から持ってくるか。探せば2本ぐらい見つかるだろ」
秘技・田舎特有釣竿無双!!
田舎の家の倉庫ってアウトドア用品がたくさんあるよねって技。……技?
……まぁそれはともかく。
結局篠宮家に釣竿が5本あった。だけど結構汚れている竿があったので俺の家からも釣竿を持ってきて、釣竿5本はすぐに用意できた。
準備はできた。あとは……。
「釣りってどの川でするんだ?一番近くの川か?」
「ん〜……山の方へ行ってみるか。そっちの川の方が魚が多い」
「でもあそこって少し遠くなかった?歩きだと疲れるかも…」
「なら自転車で行きましょうか。お父さんとお母さんの自転車を使えば鈴子ちゃんも烈さんも行けますし」
「私はどこでもいいよー。ここら辺の川も釣りの事もよく知らないし」
よし、これで行く場所もそこへの行き方も決まった。
何か他に考えなきゃいけない事は……準備しなきゃいけない事は………うん、もうとくにないかな。
では行きますか!
女性陣の出かける準備を待ち、さらに烈と鈴子ちゃんが自転車のサドルを調節し終えるのを待ってから山の中にある川へ向かって出発する。
ちなみに釣竿を自転車に乗せてこぐのはロッドホルダーを使っても地味に危険なので人が多い場所では極力しないように。
まぁここはド田舎だから電線ぐらいしか気をつけるものがないんだけどさ。
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「ん〜〜〜っ!やっとついた〜〜〜!!」
「ここに来るのも久しぶりですね、いろいろ懐かしいです」
「確かに懐かしいな〜。山の方には基本行かないからなぁ、店も少ないし」
しばらくして俺達は目的地の川についた。
川付近独特の涼しさが5月の気温と自転車をこいだせいで少し火照った身体に気持ちいい。
「川でっけぇ……。俺らの家の近くの川とは大きさっつうかスケールっつうか壮大感が全然違うな……」
「いかにも『田舎の大きな川』って感じの川だよねー。涼しいし静かだし良い感じってカンジ!」
そうだよ、田舎の大きな川だよ。
どうやら烈と鈴子ちゃんもこの川を気に入ってくれたようだ。良い感じってカンジらしい。
「そういや今回って本気の釣りなのか?釣り針にワーム付けるかんじ?」
「えー!?私イモムシなんて触りたくないよー!?」
「大丈夫だ、付けないかんじだ。……っていうか俺もそんなに釣りが上手いわけじゃないんだ。本気な釣りなんかやった事ない」
「いつも釣り糸を垂らしてボーッと日向ぼっこしてただけだったよねー」
「でもそれだけで何もしなくても釣れるぐらいこの川は魚が多いですよ。超初心者向けです」
そう、俺達にとっての釣りとは自然の中でのんびりすること。
父さんや新斎義父さんは釣る場所やエサなどを変えたりしてたけど、俺達3人は一番景色が良い場所で肩を寄せ合ってのんびりしてた。
けどまぁ釣りってそういうもんだろ?
上級者はこだわるけど初心者は釣り糸を垂らしてのんびりするだけ。そしてたまたま魚がかかった時だけ超!エキサイティン!するものだと俺は思ってる。(※個人的な意見です)
「そういうもんか。……そういや確かに俺もそんなかんじだったな。釣れるまでテキトーに友達とダベってたわ」
「私もそれでいいですよー、楽ですし。それにこんな大自然の中でのんびり日向ぼっこするなんてうちのトコではできませんからねー」
烈も鈴子ちゃんも俺達流の釣り方でいいらしい。
……本当はこの川で釣りをする予定だったけど……気が変わった。
久しぶりに山まで来たのだ。少し山の中を歩くことになるが……行ってみたい場所がある。
ならば行くとするか。きっと烈と鈴子ちゃんもその場所を気に入ってくれるだろう。
「ただの友達なら絶対にしないが……お前達はいとこだからな、今日は特別に俺達のお気に入りの釣り場に連れて行ってやろう」
「いや、俺と鈴子は蓮名ちゃんと想愛ちゃんのいとこであってお前のいとこではないんだが」
「何言ってんだ烈、俺と蓮名と想愛は兄妹だぞ?」
「何言ってるの烈さん、お兄ちゃんと私達は兄妹だよ?」
「何言ってるんですか烈さん、お兄様と私達は兄妹ですよ?」
「………ア〜、ウン。ソウダネ。そういうところ、兄妹っぽいネ」
これほど棒読みっぽい棒読みは初めて聞いた。鈴子ちゃんも苦笑いしてるし。
……まぁいいけど。俺達3人が狂ってる事なんて自分達が一番よくわかってるから。
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「おぉ!こりゃスゲェな!!」
「うわぁ〜……すっごいキレイ!いかにも『大自然の中にある大きな湖』っぽい!」
そうだよ、大自然の中にある大きな湖だよ。
最初にいた川から少し歩くことになったが……2人とも文句なくついて来てくれた。
まぁお気に入りの場所に連れて来たんだから文句なんか言わせないけど。
「懐かしいね〜、この湖!ここに来たのって何年ぶりだろ?」
「少なくとも1年以上来てませんでしたが……何も変わってなくてなによりです」
「あぁ、ほんとにな。久々に来たが……相変わらずここは落ち着くな」
先程も言ったが、俺が2人を連れて来たのはキレイで大きな湖だ。
湖の周りは木々に囲まれ、水は魚がはっきり見えるぐらい透き通っている。
周りを木々に囲まれているとはいえ、湖が大きいので上からの日光はちゃんと届いている。しかも、もし太陽の光が強すぎて暑くなってもすぐ近くに木陰があるので、そこで休むこともできる。
そしてもちろんこの湖も魚がいっぱいいて釣りの超初心者向けだ。
まさに完璧。
小さい頃、父さん達に付き合わされた釣りに飽きた俺達がたまたまこの湖を見つけた時はかなり感動したのを覚えている。
……ただまぁ、一つ不満があるとしたら今が5月のせいでイモムシが多いってとこかな、うん。これじゃ木陰に座ることもできない。
女性陣3人が虫に強くてよかった…。
「そういえば釣った魚はどうすんだ?持って帰って飼うのか?」
「もちろんリリースだ。ここは湖だからな、無闇矢鱈に魚を捕るわけにはいかない」
「そういうもんか」
「そういうもんだ」
人間の娯楽のため、ただの暇つぶしのためだけに針を刺され、釣り上げられては湖に戻される魚がかわいそうだと思わなくもないが、俺は人間なので魚の事情なんかは考えないようにする。
というわけで………let’s フィッシング!
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「ぐわぁぁぁ〜!負けたぁ〜!!」
「フ、当然だ。この俺が烈に負けるなんてありえないからな!!」
顔と性格以外で。
ただ釣るだけではつまらないということで、釣った魚の数と大きさで勝負することになった。
その結果、俺は烈に勝った!
ちなみに魚の数では、鈴子ちゃん>想愛>蓮名>俺>烈
魚の大きさでは、鈴子ちゃん>蓮名>想愛>俺>烈
だった。
……それでも俺は烈には勝った!チキショーメ!!
「俺が二つとも最下位かよ〜…。もう1時間ぐらい勝負しようぜ!」
「いや、もう飽きた」
「マジか…。でもまぁ結構長い時間やったからなぁ。この後どうすんだ?家帰って夜までゲーム?」
「それも悪くはないが……そうだな、夜までまだ結構時間あるし一旦家に荷物を置いてからまたどっか出かけるか」
「だな。そうするか」
「まぁその『どっか』はもう決めてるんだけどな」
「え、マジで?どこ行くんだ?」
「あぁマジだ。さっき思いついた。ヒントは……家から自転車で10分のところにある施設だ」
「……あぁ、あそこねー。うん、行きたい!」
「いいですね、あそこなら結構時間を潰せますし」
「どこだよ!!」
「わからないですよ〜」
4通りの回答、正解者は2名だ。
「行けばわかる。とりあえず荷物置きに一旦家に帰ろうぜ」
不満そうにしている烈、それと鈴子ちゃ…んはとくに気にしてなさそうだな。
とにかく、不満顔の烈、とくに気にしてなさそうな鈴子ちゃん、次の予定を聞いて楽しそうにしている蓮名と想愛を連れて、俺達は家に帰った。
今年も1年間ありがとうございました!!
1年間で12話しか更新してないという超スローペースですが、これからもエタらずに頑張っていきますので、来年もよろしくお願いします!!




