深海の神秘
祝・総合評価1350突破!ヒャッハー!
投稿直前に突破した!
『一方的な愛を、愛という言葉で括るな。』は名言だと思う
強すぎる恋心の一方的な片想いをかってに愛へと昇華してはならない(超☆持論)
水族館にある海鮮料理店にて昼飯を食べ終えた俺達は、またいろいろな魚を見て回った。
まぁ、とりあえず深海コーナー行くよね。だってさっきオオグチボヤっていう深海の神秘を見ちゃったんだもん。
「……なんつーかグロい見た目が多いな…。これなら確かにさっきのオオグチボヤが可愛く見えるわ……」
「奇遇だなぁ銀河…。俺もまったく同じことを考えてた……」
わかってたことだけど深海魚ってものすごく変な形態のやつが多いな……。よくテレビで特集組まれてる理由がわかったぞ…。
とくに……なんだこいつ、ホウライエソ?なにこれめっちゃ怖いんですけど。見た目だけならサメより怖いぞ。
……っていうか本当に生き物なのか?コイツは。
『実はCGです!』とか言われても納得しそうだ。そのくらい化け物みちてる。
「この水槽にいるのは…テングギンザメ?すげぇ口……ではなくて鼻なのかこれは」
これまた初めて見る魚だな…。
英名ではロングノーズ・キマイラか。訳すと長い鼻の化け物。
うん、コイツにぴったりの名前だ。
「これはさすがに気持ち悪いね…」
「そうですね蓮名、私も同じ気持ちです」
「え?つぶらな瞳がチャーミングじゃない?長い鼻も個性的で可愛いし」
『え!?』
俺達だけではなく偶然その場にいた人達も皆驚いた。
なにこの一体感。掃除していた水族館スタッフも驚いてこっち見てるし。
ていうか何人かわざと俺達の近くにいたよね。盗み聞きしてたよね。とくに蓮名、想愛、鈴子ちゃんの近くにいる男子3人組、テメェらだよ。
「烈、手伝え」
「OK銀河、任せろ」
蓮名達と男子3人組との間にさりげなく…もなくかなり強引に入りこみ、烈とともに殺気を向け……もとい睨みつけたらあの3人組はしぶしぶながら離れていった。
ふぅ、これで心置きなく楽しめる。
「深海魚っていえば……やっぱりマンボウ!」
「マンボウって深海魚だったのか…。あれ?最初に見た大水槽にもマンボウいなかったか?」
「あれは普通の水域でも生きられる特殊なマンボウなんです。マンボウって本来は深海魚なんですよ?………さぁさぁさぁ!よく見てください銀河お兄さん!最初に見たマンボウとこの深海型のマンボウとでは形態がちょっと違うでしょう!?」
「えっ!?………蓮名、想愛、違いわかるか?」
「ごめんすずちゃん……私にもわからない…。想愛は?」
「私にもわからないです……」
「えー!?なんでー!?」
だよね、普通そうだよね。
蓮名と想愛の優れた記憶力をもってしても違いがわからないのなら、それは普通わからないものなんだよ。
「ちなみに烈は違いがわかるのか?」
「あぁ…。昔、30分ぐらいかけて説明されたことがあるからな……」
……それは災難だったな。
興味のない話を30分も聞かされるのは地味にキツイぞ。
「兄ちゃんでもわかったんだから銀河お兄さん達ならすぐに違いがわかるって!髪型を同じにしたれんちゃんとそーちゃんよりは見分けがつくから!」
「「私達って魚よりも見分けづらいの(ですか)!?」」
同じ顔で同じタイミングに驚愕する双子。そしてさらっと烈をdisる鈴子ちゃん。
蓮名と想愛は髪型や口調が違うだけで顔も身長も体型もほとんど同じだからなぁ。
髪型と口調を同じにしたらほとんどの人は見分けがつかないと思う。
実際に髪型と口調が同じだった幼少期には父さんや母さんはもちろんのこと、新斎義父さんや紅葉義母さんですらたまに間違ってたからなぁ。
……そんなに見分けがつかないかなぁ。
確かに蓮名と想愛は双子だから超似てるけど、蓮名には蓮名の、想愛には想愛の個性がちゃんとある。
個性が違えば生活態度も違う。双子であっても、互いにわかり合っていても蓮名と想愛のクセは同じではないのだ。違いがハッキリとあるのだ。
だから『絆の証明』を含めて間違えた事なんて一回もないぞ、俺は。
……めっちゃ悩むことはあるけど。
「あ、オオグチボヤ発見。……やっぱりコイツを食いたいとは思わねぇなぁ…」
海鮮料理店で食事をした後になんとなく調べてみたら、やっぱりコイツは食べられるらしい。
……本当に食べられるの?食べようとした瞬間その大きな口で『ワハハハハハ!!』とか言わない?
深海生物って不思議だねぇ。
「リュウグウノツカイまでいる…。何この水族館、深海生物に力入れ過ぎじゃない?深海コーナー広いし、いるのは深海魚でもマイナーで希少なヤツばっかりだし…。どれほど金かけてんのさ」
「深海生物って飼育するのも超大変なのに凄いよねー。まぁ私としては貴重な深海マンボウが見られて大満足です!」
「深海コーナーだけじゃなく他のコーナーも広くて凄ぇのにここの入場料って特別高くはなかったよな。……この水族館、経営大丈夫なんだろうか…」
確かに不安になってくる……が、俺にはそれより不安に思うことがある。
少し前から蓮名と想愛の元気がだんだんとなくなってきているのだ。
2人とも楽しそうにしているが、だんだんと口数が減ってきているし、歩くスピードも少し遅くなっている。
鈴子ちゃんも烈もまだ気づいていないぐらいの些細な変化だが、俺にはわかる。だてに15年もこの双子の兄をやっていない。本物じゃないけど。
だからもちろん、こんな状態の妹達をこのまま放っておくつもりはない。
さりげな〜く鈴子ちゃんと烈から離れ、小声で蓮名と想愛に話しかける。
「蓮名、想愛、どうした?気分悪くなったのか?」
「お兄ちゃん……私達と人気の無い場所、行こ?」
「へっ!?」
「ここ、人が多過ぎます…。とくに男が…」
「あ…あぁ、そういう意味ね…」
うん、わかってた、わかってたヨー。
だってオレ、2人のお兄ちゃんだからネー。
わかるのは当然ダヨー。
………とまぁ冗談はここまでにして、これはかなりヤバイ状況だな。
どうやら蓮名も想愛も人混みに酔ったらしい。
GW初日なうえにこの水族館は思ってた以上に有名らしく、都会育ちの烈と鈴子ちゃんでも軽く引くぐらい人が集まってるからなぁ。マンモス校で有名な星鏡学園の全校生徒と全教職員が集まってもこんな数にはならないだろうってぐらい多い。
しかも、ここは男子に人気の深海魚コーナー。
ただでさえ人混みが苦手なのに、軽度とはいえ男嫌いでもある蓮名と想愛がこれ以上耐えられるわけがなかったのだ。
なぜ俺はそんなこともわからなかったのか、そう思うと後悔のあまり死にたくなってくる…が、死んでる場合も後悔してる場合でもないので即刻動く。反省はその後だ。
「烈、鈴子ちゃん、蓮名と想愛が人混みに酔ったらしい。だから人が少ない場所に行ってくる」
「えっ!?本当!?……れんちゃん、そーちゃん、気づかなくて無理させてゴメン……私が2人を歩き回らせたから…」
「いやいやいや!私達が弱かっただけだから!すずちゃんのせいじゃないから!大丈夫!すぐ良くなるから!」
「そうです!すずちゃんは何も悪くないです!……むしろ私達のせいで空気が悪くなってしまってごめんなさい…。すぐに戻ってきますから」
そう、誰も悪くない。でもあえて言うなら人混みが悪い。人がゴミのように悪い。
蓮名と想愛の元気をなくさせた奴等はラピュタの雷を受ければいい。
「蓮名ちゃんも想愛ちゃんも大丈夫なのか?スタッフを呼びに行こうか?」
「俺としては今すぐそうしたいが……そこまでおおごとにしたら逆に困っちまう。少し休めば良くなるらしいから俺達はちょっと外行ってくる」
「……あれ?俺は?」
「鈴子ちゃんはともかくお前はいらん。……というのは冗談…でもなくはないけど今は俺に任せてくれ」
烈と鈴子ちゃんには悪いが、さっき蓮名は『俺と一緒に人気の無い所に行きたい』と言ったんだ。それに、想愛も鈴子ちゃんに『すぐに戻ってくる』と言っている。
それはつまり、蓮名と想愛は俺と一緒に外に出たいということ。
だから烈と鈴子ちゃんには悪いが、俺はその思いを優先させてもらう。
烈と鈴子ちゃんと別れて深海魚コーナーから出て館内を歩き回り、中庭っぽい場所に出る。
外に出るだけで疲れるとは……さすがは夏、春、冬休みに次ぐ大型連休のGW、人が多すぎる。
親子連れにカップルに高校生らしき女子のグループに中学生ぐらいの男子3人組に……ってまたお前等か!滅べ!
男子3人組から逃げるように人混みをかき分け、なんとか人気のない場所にくることができた。
といってもGW初日という今日この日に人が完全にいない場所などなく、ベンチで休んでいるお爺さんお婆さんや、ベビーカーで寝ている赤ちゃんのために静かな場所にやってきたであろう若い夫婦。仲良く手を握りあっている大学生ぐらいのカップルがいた。
……なんだろう、この温かくて優しい空間。
数メートル先はとても騒がしいというのに、この空間だけは静かに感じられた。
この場所にずっと居たい、そう思えるほどに、安らげる場所だった。
「あれ〜?こっちに行ったと思ったんだけどな〜」
「なぁ、もう諦めようぜ。警備員さんとか呼ばれたらどうすんだよ」
「何言ってんだよ!見るだけならなんの罪もないだろ!」
………そう、安らげる場所だった。あのストーカー3人組が現れるまでは。
とっさに蓮名と想愛の手を掴み、裏路地に入って隠れる。
なぜ俺達が隠れなきゃいけないのだろうか……そう思うとイラッとくるが、隠れた後ではもう遅い。
素直にこのままやり過ごすことにした。
「おっかしいな〜。あんな美少女簡単に見失うわけがないんだけどな〜」
「それにあの娘達って双子…だよな、超似てたし」
「美少女!双子!つまり可愛さ2倍!最高じゃねーか!!」
そうなんだよ!最高なんだよ!ハッ!わかってんじゃねーか!!
……と、言いたくなるのを必死で堪える。ここでしゃしゃり出ては隠れた意味がなくなってしまう。
それにしても……あの3人組、ここら辺の者じゃねーな。
星鏡学園の生徒なら『星鏡の双姫』こと篠宮蓮名と篠宮想愛を知らないわけがないからな。
それに星鏡学園の近くには他の学校がない。
だから星鏡学園から離れた場所に住んでる俺達も星鏡学園に通わなければならなくなった。
そうやって人数を集めているから星鏡学園は日本屈指のマンモス校になったんだろうな。
なんか『星鏡』って文字がゲシュタルト崩壊してきた。
まぁそれはともかく、あの3人組は今日初めて蓮名と想愛を見たのだろう。
なるほど、それなら地球上最も愚かな生物といわれる男子中学生が変な行動をしても仕方ないな。
けどストーカーは犯罪だからな?今度やったら隠れずに真正面から殴り飛ばすぞ☆
「ふぅ、やっと帰ったか。……あいつら、いつか捕まるんじゃねーか?」
結局あの3人組はすぐに帰った。けど隠れた身としては体感的に長く感じたな。
ほんと、なんで隠れてしまったんだろう。
「蓮名、想愛、コソコソと隠れさせて悪かったな………蓮名?想愛?」
蓮名と想愛はお互い顔を見合わせ、頷きあっていた。
いったいどうしたというのだろうか…?
表情を見るに、少なくともこっちは悪くないのにコソコソと隠れさせたことに対して怒ってる……というわけでもなさそうだ。
まぁ、とりあえずベンチに座って後から聞けばいいか。
そう思い、裏路地から出ようとする、が———
「「えいっ!」」
「うおぉっ!?」
———いまだに手を繋いでいた蓮名と想愛に後ろに引っ張られた。
……あぁ、そういえば今日は2人とあまり手を繋いでいなかったなー。
ふと、そんなことを思いながら、俺はこけないようにしながら蓮名と想愛に裏路地の奥へ奥へと連行されたのだった。
昨日はラピュタが放送されましたね
例のシーンで私と母は「バルス!」と叫びました
でも一番好きな宮崎映画はもののけ姫
サンかわいいよサン




