番外編:幸せのWHITE ALBUM
祝・総合評価700突破!現実では得られない幸せがここにはある!なぁにがクリスマスだー!!
誰も不幸にならない幸せのクリスマス
タイトルはもちろん胃が痛くなるあのゲームから
しんしんと雪が降り積もり、昼間にも関わらず七色に光輝くイルミネーションが街を幻想的に照らしている。
今日は12月24日、俗に言うクリスマス・イヴだ。(正確には今日の夜からだが)
雪が降り積もるなかでリア充は喜び街駆け回り、非リアはコタツで丸くなると言われているこの日に、俺は蓮名と想愛を連れて街に来ていた。
………勝った。なんというか、社会に。
それはともかく、
いつもは家に居て外に出るのは嫌いな俺達がどうして遠出してまで街に来たかというと、やはり12月24日が特別な日だからだ。
さっきも言った通りクリスマスイヴは街にリア充が多い。つまりカップルが多い。とにかく多い。爆発しろと思うぐらいに多い。
だから、今日はそれを利用させてもらう。
話は変わるが、俺が蓮名と想愛を外出させたくないのはこの2人の天使級笑顔を他人に少しでも見せたくない、つまり独占したいからだ。
千枝ちゃんが亡くなった今、蓮名も想愛も家族以外に本物の笑顔を見せるつもりは微塵もないらしい。
嬉しいような少し悲しいような…。蓮名と想愛には千枝ちゃん以上とは言わないが千枝ちゃんぐらい本音を言い合える女友達ができないものかと蓮名と想愛の兄として切に願う。
男友達?ハハハ♪そんなのできた瞬間に俺がこの手ですり潰すよ。
男は下心で蓮名と想愛に近づくに違いない、男女の間で友情は成立しないからな。
蓮名と想愛の可愛さ可憐さ美しさに惚れない男などこの世に存在するわけがない、俺の言っている事は正しいのだよ。
と、そんなわけで俺達3人はいつも家に居る。ぶっちゃけ引きこもっている。
だから昔『いつも家に居るけど暇じゃないか?もしも蓮名が、想愛が行きたい場所があるなら俺はどこへでもついて行くよ?』と2人に聞いたことがある。
すると、
『ありがと♪お兄ちゃん♡だけど私達はお兄ちゃんと一緒に居られるなら場所はどこだって良いんだよ?』
『蓮名の言う通りですよ♪お兄様♡私達はお兄様の隣に居られるのなら小さな密室でも光の届かない地下でも良いのです』
と、遠回しに『私達は監禁されても全然困らない』という大変危険で大変素晴らしい言葉を返してくれた。
ほんと、良くできた妹達だ。食べちゃいたいぐらいに。
1人ずつガッとやってチュッと吸ってHAAAAAN!!!したい。そして双子ならではの微妙な味の違いを目一杯堪能したい。
聖夜を性夜に変えてやろうか……そんなアホみたいな考えが出てくる今日この頃。俺もだいぶ狂ってきたな。
だからいつもは家に居るのだが、今日はクリスマスイヴだ。街にはリア充カップルがたくさんうろついている。
それについてはたいへんうざったいのだが、今日は別だ。
なにせカップルというのはすぐに2人だけの空間を作るから俺達はあまり視界に入らないと思うし、なにより彼氏は彼女が隣にいるのに蓮名と想愛を長々と見る事はできないからな。
つまり蓮名と想愛を野郎共にあまり見せたくない俺にとっては今日という日は外出するのにもってこいなのだ。
と、いうわけで俺は今蓮名と想愛と聖夜デートを楽しむために電車で1時間かけてこの周辺で1番の都会であるこの街に来ている。
……交通機関が発達したこの現代で電車で1時間かかるって…。自分が住んでいる場所がいかに田舎かがよくわかるな。星鏡学園に通学するのにもバスで片道30分かかるし。
まぁ蓮名と想愛がいるから全然苦ではないんだが。
それにしても……寒かったなぁ。
この街に到着してから急に雪が強く降り始めた。1つ後の電車に乗ってたら間違いなく到着が遅延してたな。
ちなみに今日は例年に比べてかなり寒くなるらしい。確かに去年はこんなに雪が降ってなかった気がするから納得だ。
電車から降りて人気がない場所で蓮名と想愛が左右から抱き付いてきた瞬間に身体はポッカポカになったけど。さらに胸と腰を押し付けてきた時には逆に身体が熱くなった。
『どんなに暖かい暖房器具よりも人肌の方が何倍も温かい。双子ならその温度も感触も喜びも幸せも全てが2倍。まったく、双子は最高だぜ!!』
なんだろう、謎の迷言まで出てきてしまった。
でもおかげで今は全然寒くない。
右腕を蓮名と、左腕を想愛と腕を組み、超長い1つのマフラーを3人で使っているのに寒いと感じるわけがない。
そのおかげで最高に心地良いのだが、たった1つだけ欠点がある。
それは……俺の上半身がほとんど動かせない、ということである。
両腕は蓮名と想愛と繋がっているし、首には1つのマフラーを3人で使っている。ぶっちゃけ軽く首が絞まってる。
首輪を着けたらこんな感じなのかなぁ。俺にそっち方面の性癖は無いはずなんだけど蓮名と想愛になら別に良いかな。というかこの2人になら何をされてもいい。ナニをされてもいい。……こりゃ重症だな。
それからは街中を散歩し、巨大なショッピングモールに入って買い物を楽しんだ。
父さんと母さん、紅葉義母さんと新斎義父さんに頼まれていた物や、蓮名と想愛の服やアクセサリーを買っていたらなかなかの量になったので荷物は宅配で送ることにした。
荷物を気にせず買えるって気持ち良いな。そのせいでつい買いすぎてしまう。
俺も蓮名も想愛も基本的に家に居るから買い物にあまり行かない。というかそれ以前に近所に店が少ない。
だからお金はけっこうあるのだよ。そのわりにはよく人に奢ってもらってるけど。
買い物に行かないかわりに俺たちはネット通販を利用する事が多い。
ネット通販って便利だよな…何でも揃ってるし。この時代に生まれてきてよかった。
ちなみに蓮名と想愛の私物である首輪(人間用)や手錠や拘束具等もネット通販で買っている。蓮名と想愛曰く『現実だと年齢制限に引っかかって買えないし、そもそもそういう店に入れないから』とのこと。
さらに新斎義父さんと紅葉義母さんが仕事で遠くに出かけている日に家に届くように設定しているからバレる事もない。
俺の妹達が少し悪い子になっている……これは後でたっぷりとオシオキしなければ。
オシオキといえば、俺を女性下着売り場に連れて行ったことに関しても2人に罰を与えなければ。
蓮名と想愛の側に居られるのなら何処へだって付いて行くと心の底から思っている俺だが、2人とも試着室に入って俺だけ1人残された時はさすがに居心地が悪かった。
ただでさえ女性下着コーナーに男子高校生(俺)が1人いるってことで店員に注目浴びているのに、そんな奴が思春期真っ盛りと思われる年代の美少女双子に兄と呼ばれて仲良く御来店——ともなれば、もう注目どころではなく完全に店員に監視されていた。
それなのに蓮名も想愛も何度も俺を試着室内に引き入れるものだから非常に困った。……いや、素晴らしく眼福な光景を何度も見れたのだから全然困ってはなかったけど。
ただ、試着室を出た時に店員さんと目が合ったのはものすごく気まずかった。
長く、気まずく、最高に幸せだった買い物を終えた俺達は次にカラオケに行った。
今日という日は特別な日なのでいつにも増して客が多く、部屋が足りてなくて多くの人が順番待ちをしていたが、事前に電話での予約戦争を勝ち抜いた俺達は多くの人達の前を堂々と通って部屋へと案内された。
受付付近にたむろする人達の前を天使2人連れて歩くのはなかなかに気持ち良かったな。
ちなみに部屋は一番防音のきいた部屋を予約した。
理由はもちろん蓮名と想愛の天使の歌声をほんの少しでも他人に聞かせたくないからだ。それにもし芸能関係の人にこの歌声を聞かれたらどうする、間違いなくスカウトされるぞ。
蓮名と想愛がステージでデュエットなんてしたらあっという間にトップアイドルになってしまう。アイドルマスターになってしまう。そしてファンが双天使の歌声によって浄化されてしまう。俺も初めてカラオケにて蓮名と想愛のデュエットを聴いた時には危うく昇天しかけたからな。
そしてこの時ぐらいにヒトカラに行くと言っていたキクゴローからメールが来た。
そこには『非リアはクリスマスに楽しむ事すら許されないのか、今年も滅入り苦しみます』と書いてあった。
たぶんカラオケに行ったら予約が多くて数時間待てと言われて諦めたんだろうな。
まぁキクゴローはクリスマスの数日前から『いつから日本はキリスト教の国になってしまったんだい!だいたいメリークリスマスのメリーって何!?あぁそうだ嫉妬だ嫉妬の何が悪い!!』とか言ってたからな、聖ニコラウスからバチが当たったんだろう。ざまぁ。
蓮名と想愛の双天使の歌声をたっぷりと堪能した後、カラオケ店を出た時には雪がさらに強くなっていた。
それにより、この後の予定であった『イルミネーションを楽しみ、蓮名と想愛と良い雰囲気になる』を中止せざるを得なかった。
俺達ほどの愛の熱さと厚さがあれば寒さなんて関係ない———と言いたいとこだが、万が一にも蓮名と想愛が風邪を引いたら困る。この双子の兄として、それだけは絶対に防がなければ。
……ちくしょう雪め…。お前は場をロマンチックに演出するだけで良いんだよ。何で頑張っちゃってんの?やる気ありすぎだろ。
しかもこの雪の影響で電車に遅れが出ているらしい。俺達は家まで遠いから、そのせいで早めに帰らなければいけなくなった。
ふむ……困った。これはマジで困ったぞ。なぜなら俺は夜7時にレストランを予約しているからだ。それなのに天気予報によると雪はこれからさらに強くなるみたいだし……ふむぅ。
………まぁ、なんとかなるだろ。なにせこっちには女神様が2人もいるんだ。これで不幸になるはずがない。
それより今は晩御飯までの急に空いた時間を如何に過ごすかだ。晩御飯まで後1時間か……。10分前行動をするとしても残り50分、微妙な時間だ。
この天気では外に出れないから……そうだな、もう一度ショッピングモールに行って買い物を楽しむとしよう。そしてカイロを買おう、蓮名と想愛に少しでも寒い思いはさせたくない。
そして50分後、雪はまだ降り積もっているものの、降る勢いは弱くなっていた。
さすがというかやはりというか当然というか、天候を司る神も蓮名と想愛という美女神には敵わないようだ。
このままいけば電車の遅れも小さくなりそうだな。
いやぁ危なかった。もしもあのまま天気予報通りの空模様だったら家に帰るのが深夜になるところだった。
電車がダメなら父さんか新斎義父さんに車で迎えに来てもらうという手もあるが、そしたら車がこの街に着くのが深夜になってしまう。それまで俺達はどこにいればいいのかという問題が出るし、何より蓮名も想愛も寝る時間が早いため、迎えに来る前に2人とも寝てしまう可能性が高い。
蓮名と想愛にはちゃんと暖かい布団で寝てもらわなければ、何度も言うが妹達に風邪を引かせるわけにはいかないんだよ。
だから俺達はどれだけ遅延していようが電車で帰るしかない。もしも電車が運行しなかったらどこかのホテルに泊まる事になる。
いくら兄妹とはいえ男子高校生が女子中学生2人とホテルに泊まるのはちょっと……な?ヘタしたら通報されかねない。
それだけは勘弁してほしい。
そんなヘタしたら取り返しのつかない危険があるのに時間ギリギリまで街に残るのには、ちゃんと理由がある。
何度も言う通り俺も蓮名も想愛もほとんど外出しない。いつも家に居る。
そのせいで、天陵家と篠宮家には数えきれない程の思い出があるのにも関わらず、外で遊んだ記憶というのがあまり存在しない。
だから今日は時間が許すまでめいっぱい楽しみ、ギリギリまで家に帰らず、外出の思い出をたくさん作ることにしたのだ。
俺と、蓮名と、想愛の、3人の大切な思い出を空白のアルバムに埋めるために。
私はもちろんコタツで1人悲しく丸くなる方です
クリスマス?バイトだよ?
だからクリスマスの予定は空いていない。そう、相手いない。
続きます




