『雲居 千枝』
祝・総合評価500突破!わっほい!!
ありがとう (日本語)
Thank you (英語)
スパシーバ (ロシア語)
イヤイライケレ (アイヌ語)
にふぇーでーびる (琉球語)
5ヶ国語?でありがとうを言ってみた
それは、私達が小学校に入学した翌日のこと。
『えっと…ちえは、くもいちえ。れんな…ちゃんとそあ…ちゃん?ちえと…おともだちになって、ください!』
それが、私達と千枝ちゃんの初めての出会いだった。
幼稚園の時もそうだったけど、私も想愛も友達はそこそこいた。
だけど、友達よりもお兄ちゃんとの時間を大切にしたり、スカートめくりをしようとした男の子を2人がかりで本気で殴り飛ばしたりしていたら友達はどんどん減っていった。
けど私達は別にそれでもよかった。
男の子はいじわるしてきたし、何よりお兄ちゃんの隣に居るのが嬉しくて、楽しくて、心地良かったからだ。
殴り飛ばした男の子が泣いてしまったがそんなのはどうでもよかった。私達は被害者だ。
そんなわけでさらに友達は減っていった。
だけど、千枝ちゃんだけは変わらず私達と仲良くしてくれた。
お兄ちゃんと遊ぶから、という理由で千枝ちゃんが家に遊びに来るのを断ったり、ずっとお兄ちゃんの話ばっかりしてたり、私と想愛が同じ事を言ってたりしても、千枝ちゃんは私達の友達でいてくれた。
今ならこれがどれほど凄く、またありがたいものだったのかがよくわかる。
別にお兄ちゃんと過ごした時間が悪いというわけでは決して、絶対に、断じてない。
ただ、友達の大切さを知ることができたから、お兄ちゃんがいなくても数時間は大丈夫だという事がわかったからこそ、私達は今、お兄ちゃんがいない学校へと通い続ける事ができるのだ。
でも結局千枝ちゃん以上に私達と仲良しな友達はできなかった。
そして男友達もいなかった。いらないけど。
そんな私達と違い、千枝ちゃんは友達が多かった。男友達はいなかったけど。
千枝ちゃんはおとなしく、可愛い女の子だった。
おとなしい子だっけけど、両親から挨拶について厳しく言われているらしく、見知らぬ人に挨拶できるぐらい度胸があった。
私も想愛も他人に挨拶ができない(したくない)から、千枝ちゃんがどれほど凄いのかがわかる。
そんな凄く、可愛く、人望がある千枝ちゃんと1番(と2番)仲良くなったおかげで、私達は学校生活を楽しく過ごせた。
お兄ちゃんが山の学校やら海の学校やらわけのわからない学校行事に連れて行かされた時には魂が抜けた私達を励まし、さらに家に泊めてくれた。
友達の家に泊まったのも、遊びに行ったのも千枝ちゃんの家だけだ。
また、クジ制のクラス替えで私と想愛と千枝ちゃんは6年生まで、つまり6年間同じクラスという奇跡を起こした。
そのおかげで私達はクラスで孤立することなく、楽しい学校生活を送れた。
そのまま時間が流れていき、私達が6年生のときの1月17日…。
悲劇は突然訪れた。
・・・・・・・・・・・・・・・
1月17日、その日は3日前の大嵐でぬかるんだ地面がやっと乾いた頃だった。
冬休みが終わり、学校が再開したため、私達は学校に居た。そして午後1時頃、給食を食べ終えた時にある災害が発生した。
地震。震度は4だった。
そこそこ揺れたものの、震度は4。本来ならば死者も大きな被害もないはずだ。
でも、今日に限って不運が続いた。
3日前の大嵐で地面がぬかるんでいたせいか、近くの山で土砂崩れが起きたのだ。
しかも、その山の近くには千枝ちゃんの家があった。
千枝ちゃんは今すぐ帰りたいと先生に言ったけど学校側は危険だと判断し、学校での待機を言い渡した。
その後電話で千枝ちゃんの両親の安否がわかり、家周辺には被害はでていないという事がわかった。そして夕方5時に待機が解除された。
土砂崩れが起きたというだけで、被害の大きさはよくわかっておらず、その時は家が一軒潰れただけとしか報道されなかった。(その後の調査で死者が数人と山の頂上にあった神社が潰れていた事がわかった)
その後、千枝ちゃんの両親が学校に迎えに来て、千枝ちゃんは家に帰っていった。
その時千枝ちゃんに言った「バイバイ」が、千枝ちゃんと交わした最後の言葉になるとは、私達はまだ知るよしもなかった。
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千枝ちゃんは家に帰った後、緊張がほぐれたせいか制服のまま寝てしまったそうだ。
そして…大きな物音と悲鳴で目を覚ました。
慌てて1階に下りると、そこにはでっぷりと太った見ず知らずの醜い男が血で濡れた包丁を持っていた。
そしてその近くには血まみれで倒れている両親。
男は混乱して立ち尽くしている千枝ちゃんを見るなり、狂気の笑顔を浮かべて襲いかかった。
血まみれの両親を見て呆然としていた千枝ちゃんだったが、奇声をあげて自分へと向かって来る男を見て、本能がこの人は危険だ、このままここに居てはまずいと判断した。
千枝ちゃんは逃げ出した。途中で携帯の入ったランドセルを持って2階へと逃げた。
男も後を追う…が、階段で躓き、階段の角で頭を強打した。
頭から血を流し、蹲りながらもさらに奇声をあげる男。
その間に千枝ちゃんは2階から電動鉛筆削りや目覚まし時計、辞書や水晶などを男めがけて投げ落とした。
そして、落とした水晶が男の後頭部に直撃し、男はそれきり動かなくなった。
千枝ちゃんはホッとした、が、それも一瞬。直後に先ほど見た血まみれの両親や、自分が人を殺したのかもしれないという事に気づいた。気づいてしまった。
そして千枝ちゃんは怖くなって再度逃げ出した。誰に?何に?逃げる場所はないのに、追いかけてくる男は殺したのに。
悲鳴を聞いた近隣住民がすぐ駆けつけてくるだろう。ランドセルの中には携帯電話がある。充電も満タンだ。それで救急車や警察を呼ぶ事もできるだろう。
それでも千枝ちゃんは何もせず、ただただ逃げ出した。何かに———両親が死んだこの現実に、誰かに———冷静に男を殺した自分自身に、恐れをなして。
しかし、逃げる場所がなかった。
1階には両親。階段には男。3階はない。2階にしか居られない。だけどこの家から1秒でも速く逃げ出したい。
そして千枝ちゃんは—————
—————2階の窓から飛び降りた。
・・・・・・・・・・・・・・・
その後、千枝ちゃんと千枝ちゃんの両親は病院に搬送されたが、そこで3人とも死亡した。
両親は刺し傷による失血死で、千枝ちゃんも飛び降りた時の怪我で失血死だった。
本来なら2階から飛び降りても死ぬ可能性はとても低い。
しかし、千枝ちゃんの家が大きかったこと、地面がコンクリートだったこと、飛び降りたのが家の裏の人目につかない所だったため発見が遅れたなどと不幸が重なり、千枝ちゃんは帰らぬ人となってしまった。
また、医者曰く千枝ちゃんの精神が壊れかけていたのも死につながったという。
そして…千枝ちゃんが殺した、殺したと思っていた男は生きていた。
男が死んでいない事に悲しむべきか、千枝ちゃんが人殺しにならなかった事に喜ぶべきかは、私はいまだにわからない。
男は警察に捕まった後、すべてを自供した。
男は30代後半の近所でも悪い意味で有名なヒキニートで、仕事をせず、アルバイトもせず、ハローワークにも行かずに部屋でエロゲーをやって毎日を過ごしていたらしい。
普通ならば男は親に見捨てられて野たれ死ぬはずだが、残念ながら男の家は裕福だったため、お金で困る事はほとんどなかった。
さらに男の親は最後まで男を、息子を信じていたため、男は自分の欲望に忠実に生きる事ができた、できてしまった。
しかし、1月17日の地震によって土砂崩れが起き、唯一被害を受けた家…つまり男の家が潰れてしまった。
しかし、残念ながら男は生きていた。この時に死ねばよかったのに。
そして家が、ゲームが、自分の生きる理由と自分が生きた証が潰れたのを見て絶望して近くの公園のベンチに座っていた男の前を、たまたま千枝ちゃん一家が通り過ぎた。
これが、千枝ちゃんの最大の不運だった。
男は千枝ちゃんを知っていた。法事で家を追い出されていた時に公園で1度会ったことがあったのだ。
その時30代後半の男は千枝ちゃんに、10代前半の小学生に一目惚れした。そして声をかけようとした、が、何年も人と話していない男がまともに喋れるはずもなく、千枝ちゃんを見て小声で何かをぶつぶつ言うだけだった。
そんな見るからに危ない人である男に話しかけてくる人など当然いない。
しかし、挨拶に厳しい両親に育てられた千枝ちゃんは男に「こんにちは」と声をかけた。
さすがの千枝ちゃんも顔面ポツダム宣言な男に笑顔で挨拶はできなかったものの、何十年も人から挨拶された事がなかった男にとっては千枝ちゃんは天使のように見えただろう。
その時男は千枝ちゃんをストーキングし、家を特定した。
土砂崩れによって存在意義を失った男は千枝ちゃんの家を思い出し、包丁を持って千枝ちゃんの家を襲った。
これが事件の真相らしい。
男は裁判所で無期懲役を言い渡された。
私達は死刑にしてほしいと願ったが、ダメだった。
その後、男がどうなったのかは知らない。知りたくもない。
ただ、千枝ちゃんの攻撃が原因でのちに両目を失明したらしい。
これでもう2度と生きがいである2次元美少女を見れなくなった。男はこれから先、2度と光を見ることなく闇に覆われたまま死ぬだろう。
男はもう嫌いな現実をもう見なくてすむのだ。よかったではないか。
日本は犯罪者にも優しい国だから、精神が壊れかけていた男には精神安定剤が渡された。つまり、光が見えないのに狂う事すらできなくなったのだ。
男にはぜひとも苦しんで死んでほしいと思う。
こうして男———井口光士郎は、今も気が狂う寸前で苦しみながら独房で、光が見えない、生きる意味がないのに『生きる』という拷問を受け続けている。
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私も想愛もこの事件で家族以外で唯一信頼できる親友を失い、男性恐怖症にもなった。男性恐怖症になるのは全然構わないし何も問題無いのだけれど。
千枝ちゃんが死んだ後、私達は1週間引きこもった。部屋で泣いて過ごした。
そんな私達に、お兄ちゃんは学校を休んでまでずっと私達のそばに居てくれた。
泣いている私や想愛を抱きしめてくれた。泣き疲れた私達に添い寝をしてくれた。私と想愛、左右から抱きつかれて身動きが取れないのに何時間もその姿勢でいてくれた。
1週間の間、私と想愛、お兄ちゃんの3人はトイレ以外はずっとそばに居た。私達はずっとお兄ちゃんに抱きついていた。一緒にお風呂にも入ってもらい、裸同士であろうとも抱きついた。
別にこれはお兄ちゃんを誘惑したかったわけではない。………お兄ちゃんのお兄ちゃんがお兄ちゃんになってたのを鮮明に覚えてるけど。
ただ、お兄ちゃんの温もりを、お兄ちゃんがここに居るという事を、お兄ちゃんは決して私達の前からいなくならないという事を確認したかっただけなのだ。
その結果、私も想愛もお兄ちゃんのおかげでなんとか立ち直れた。
立ち直った後も1週間ぐらいその生活を続けていたらなんだか肌ツヤが良くなった。
だけど、私達はいまだに千枝ちゃんの事を考えると胸が苦しくなる。
そして千枝ちゃん以上の友達はまだできていない。千枝ちゃんの代わりはどこにも存在しないのだ。
だから私達は願い続ける。千枝ちゃんが天国でも幸せな生活を送れますように———と。
・千枝ちゃんが一度遭遇した事のある男を見ず知らずと思ったのは、無意識で記憶から消していたからです
・語り手(蓮名)が最後まで男の名前を言わなかったのは、蓮名が井口光士郎という名前を言いたくなく、思い出したくもなかったからです
PSVita買ったぜぇぇえええ!!イェェェェイイ!!!
戦極姫とうたわれるものが俺を待っている!!




