夜桜の綺麗な夜に
祝・総合評価450突破!すばらっ!すばるっ!すっばるーんっ!
〜想愛side〜
「ん………」
深夜、私は目を覚ましました。
私も蓮名も一度寝たら朝まで起きることがないほど寝つきが良いのに…どうしてでしょう?今夜は寝つきが良くありません。
「…いえ、違いますね」
今日の私の寝つきが悪い理由…本当はわかってます。
今日…正確にはもう昨日になりますが、放課後にお兄様とあの男の会話を聞いたからです。
いえ、別にお兄様が悪いというわけではありません。断じてありません。全てはあの男が悪いのです。お兄様は欠片も悪くありません。お兄様に非などあるわけがないのです。
あの男のせいでお兄様が言わざるをえなかった人名———『雲居 千枝』。私と蓮名は彼女の名前を聞いたとき、大いに動揺しました。
お兄様の言った確認の言葉、それは正しいです。(元々お兄様の言う事に間違いなどないのですが)
私と蓮名の事を詳しく知っているのは、お兄様やお母さんといった家族以外には彼女だけなのですから。
「……………」
今夜は…本当に眠れそうにありません。
せっかく夜中に起きているのですからお兄様に夜這いをかけたいところですが…篠宮家は良くも悪くも広いです。つまり庭も広いのです。
なので、昔の恋愛漫画によくあるような『隣の家に住む幼馴染と窓を開けたらお互いの部屋を行き来できる』ということができないのです。
こういうとき、私達の家に不満が出てきます。
というか別々の家なのに窓を開けたら部屋を行き来できるぐらい近いって…その家を作った建築会社はいつか訴えられそうです。
…いえ、今はそんな事どうでもいいのです。今考えるべきは『どうやったらお母さんや華月お義母さん達に気づかれずにお兄様の部屋に侵入できるか』です。
「う〜〜〜ん………」
………無理ですね。
それができたのならとっくの昔に私も蓮名も毎晩お兄様に部屋に行ってお兄様の寵愛を受けているでしょう。そして今ごろはお腹が膨らみはじめ、2人の愛の結晶の名前を考えている頃のはずです。
私とお兄様の子ども…嗚呼、なんて素晴らしいのでしょう!今すぐにでも授かりたいものです!
お兄様が望むのであれば双子であろうが三つ子であろうが六つ子であろうが産んでみせます。
私とお兄様との愛の力があればそれぐらい簡単なのです。
あぁ…お腹の奥がキュンキュンしてきました…。これはお兄様にどうにかしてもらわなければ…。具体的には命を産み出す創聖合体を行って鎮めてもらわなければ…。
でも部屋が、家が遠いからそれができない。隣同士であるはずなのに、遠い。
そもそもの話、どうして私達とお兄様が別々の家に住まなければならないのでしょうか。兄妹で同じ家に住むのは当然なのに…。
華月お義母さんと貴久お義父さん(お兄様の父親)は今も、そして将来も私達の親である事は変わらないのに。
「………はぁ」
どれだけ嘆いても今からお兄様に逢えるわけではありません。
…仕方ないですね。スマホでお兄様の写真ホルダを眺めてから眠るとしましょう。写真といえどお兄様を見たのなら安眠できるに決まってます。
私はベッドから起き上がり、机の上に置いたスマホを取ろうとします。
「「………あ」」
そのとき、私のベッドと密接している壁とは反対側の壁に密接している蓮名のベッドから、蓮名がほぼ同じタイミングで起き上がりました。
同じタイミングで起き上がるなんて、さすがは蓮名、私の双子の姉です。
そして…この時間に起きている理由も、同じ。
・・・・・・・・・・・・・・・
〜蓮名side〜
「「………あ」」
今夜は眠れないから机の上に置いたスマホでお兄ちゃんの写真を見ようかな〜って思って起き上がったら、想愛もまったく同じタイミングで起き上がった。
さすがは想愛、私の双子の妹だね。
そして…この時間に起きている理由も同じなんだろうな。
「想愛、おはよう」
「おはよう蓮名。…まだ夜中ですが」
想愛、ナイスツッコミ!突っ込まれたいのはお兄ちゃんだけど。
「この時間に起きてるのって…やっぱり放課後の事?」
「えぇ、やはり蓮名もでしたか」
だと思った。というかそれ以外の理由がとくに思いつかなかった。…お兄ちゃんの事を想ってモンモンしていた、とか?それならありえる。
それにしてもやっぱり放課後の事かー。そう思うとなんかもう完全に目が覚めちゃった。
私も想愛もベッドから出て、窓に近づく。
窓から見える景色は私達の家の庭と近くの空き地、そしてお兄ちゃんの家だ。
お兄ちゃんの部屋の電気が消えてる。お兄ちゃんはもう寝ちゃったのかな?寝顔見たい。添い寝したい。夜這いしたい。
もしかしたら寝惚けたお兄ちゃんが逆に私を襲ってくるかも?…なにそれ凄く興奮する。ぜひともお願いしたい。
そんなことを考えてると、強い風が吹いたのか庭の木々が揺れた。
空き地の方に目をやると、ほとんど緑色に染まった桜の樹が揺れ、残りわずかとなっていた桃色の桜の花びらを落としていた。1枚、もう1枚と可憐な桜の花びらが散っていく。脆く、儚く散っていく。
「………千枝ちゃん、今ごろ何してるのかなぁ」
気づけば、私は想愛にこんな質問をしていた。
「…幸せになっていると思いますよ」
そして、なんとも想愛らしい答えが返ってきた。
千枝ちゃん…雲居 千枝。
私達の友達、そして私達が家族以外で唯一信じる事ができた親友。
そんな彼女は今、星鏡学園にいない。
この地域(星鏡市)にもいない。
そして—————
—————この世にも、もう存在していない。
4日間で2000字、4000字、2000字、3000字のレポートを終わらせた
………死ぬかと思った




