表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ハエと一緒に勇者召喚されてハエ人間になった

作者: 竹炭

 五月隼雄は異世界に勇者として召喚される物語に憧れている無職の35歳であった。

 中学生なら可愛いものだが隼雄は35歳のおっさんである。


「あー、異世界に召喚されねーかなー」


 隼雄はパチンコを打ちに行った帰りに、そんなことを呟きながら歩いていた。

 今日は生活保護費が支給される日だったので、生活保護費を受け取った隼雄は早速パチンコを打ちに行ったのだが……結果はマイナス。


 今日はついてない日だ。

 そんなことを思いながら歩いていたその時だ。


 地面に光り輝く魔法陣が現れ、隼雄の身体を光が包んだ。


「お、これってもしかして勇者召喚ってやつ?」


 これが噂の勇者召喚か。

 たぶん、チートが与えられて無双するんだろう。

 異世界に行ったらとりあえず可愛い性奴隷でも買って宿屋に行くか。

 そんなことを考えている間に隼雄の身体は光に分解されて異世界へと送られるのであった。


 しかし、隼雄は気づいていなかった。

 一匹のハエも一緒に魔法陣の光に包まれて異世界に送られたことに。


 魔法陣の仕組みについて簡単に説明すると、勇者召喚の魔法陣とは一種の転送魔法である。

 魂と肉体を一度分解して別の場所で再構築する。

 しかし、紛れ込んだハエも魂と肉体が分解され……

 分解された隼雄の魂と肉体と融合した状態で異世界で再構築され……


「なんだこいつは勇者召喚失敗か!」

「どういうことだ?」

「まさか、魔界の悪魔、蠅の王ベルゼブブなのか?」


 召喚されたはいいが、周りにいる中世ファンタジーっぽい服装の兵士たちの様子がおかしい。

 隼雄は兵士たちの中に綺麗なドレスを着た可愛い少女がいるのを見つけた。

 あれが姫様に違いない。

 隼雄は姫様の方に歩いて行き「自分が勇者ですよ」と自己紹介しようとした。

 しかし。


「ぎゃぎぃいぎぃぎっぎぎぐゅ……」


 おかしい。

 声が出ない。

 どうなっている?

 隼雄は自分の腕を見てみた。

 そしてその異形に悲鳴をあげた。


「ぎゃぎぃぎぃぃいいっ!!」


 隼雄の腕は毛が無数に生えた節のある……まるで、昆虫の脚のような醜い形状になっていた。

 兵士たちが見た隼雄の姿はまるでハエを人型にしたような醜悪なものであった。


「ハエの化け物が姫様の方に!」

「姫様を守れ!」

「化け物を殺せ!」


 兵士に囲まれ、隼雄は槍で刺された。


「ギュイイィッ!?」


 隼雄は深い傷を負いながらも背中の羽根を本能で使い、その場から飛んで逃げ切った。

 隼雄は全身から体液を噴き出しながら、逃げた先の湖の水面に映る自分の姿を見て悲鳴をあげた。


 なんだこれはまるで化け物じゃないか……

 どうしてこんなことに……


 どうしてと言われたらハエが魔法陣に紛れ込んだからとしか言えないが、紛れ込んだ理由は隼雄が一ヶ月風呂に入っていなかったため、臭かったからハエが寄って来たのである。

 つまり、自業自得なのだったが隼雄はそんなこと知る由もない。


 傷は深く致命傷で、もう助かりそうもない。

 消える意識の中で隼雄は思い出した。


 そういえば今日はついてない日だった……


 翌日、湖の近くに住む村人がハエの姿をした化け物の死体を発見した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 電送装置の演算処理に一部ファミコンを使用したら、 パ○クマンが混じったというプロ作家のオハナシもあるので(1980年代)、 既に「ハエ」ならは古典に類するレベルなのでセーフでは。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ