第1話 異世界へ
第一話 異世界へ
途中までは、うまく行っていたのだよ。初めての彼女。話も合うし、価値観も一緒。ただ、一つだけ”相容れない部分”があり、俺はそれをうまく隠していたのだが、ふとした瞬間に露呈してしまった。
「わははは! 何それ? ワロリンヌ!」
「え? ワロリンヌ? 何それ、キモ、別れましょう」
そう、俺と彼女は、”言語的不一致”が原因で、お別れしてしまったのだ。
「さよなら」
彼女が俺の前から去って行った瞬間、目の前が真っ暗になった。これは比喩ではなく、本当に真っ暗になった。何も見えなくなった。
「あれ? こ、ここは……」
数秒後、視界が開けた。眩しい光を受けた俺の瞳には、見知らぬ”世界”が広がっていた。
そう、俺は失恋のショックから、何故か異世界へ行ってしまったのだった。どういう原理か知らないが、世界は不思議で満ち満ちている不思議箱なのだから、俺はこのファンタジー展開を事実として受け入れることにした。普通の人なら受け入れるまでに10話くらいかかるのだろうけど、俺は違う、コンマゼロ秒で受け入れた。じゃないと話が進まんではないかバカたれ。
「さてと、じゃあまずは衣食住でも探しに行きますか」
俺はとりあえず、町を探すことにした。