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087 憂いの奥山<後篇>

 

 村を襲ったオークどもを如何にして討伐するか。その作戦はすんなりと決まった。何しろ、相手は群れているとはいえ基本的に頭が悪く、実のところそれ程強い魔物ではない。馬鹿力や粗雑と言えど武器を使う能力が脅威になるのは、そこいらの村人や徴兵されたばかりの新兵くらいだ。複雑な策の必要な手合いではないだろう。

 野伏技能に長けたユニが斥候を担当して敵の巣穴やグループ構成を把握。後は塒から叩き出して、攻撃を担当する者が殲滅していけば良い。そういう手順で討伐することになっている。

 本来なら、これでも十分に込み入ってると言っても良いだろう。何しろ、討伐側の戦力は圧倒的だ。元高位冒険者にヴァンパイア討伐の功を誇る騎士、加えてオムニアの神官までいるのだから。多少変わった個体のいるオークの群れ程度など、片手間でも殲滅出来る。

 では何故そうしないのかというと、オークに攫われた村の女性たちの存在があるからだ。言わば敵に人質を取られているような状態。根こそぎ皆殺しにしても良いのなら、魔法で巣穴を潰したりドゥーエを好きに暴れさせたりすれば事足りる。だが、敵陣の中に要救助対象がいるとなると難しい。段階を踏んで相手を誘き出し、助ける相手の安全を確保しておくことが求められるのである。


 ――というのが、勇杜に説明された内容だった。


「それじゃあ、念の為にもう一度手順を確認しましょう」


 翌日の昼。現在彼らは討伐の現場に向けて荷駄車で移動中である。相も変わらず中身の無さそうな笑顔で音頭を取るのは、この地方を治める貴族トゥリウス・シュルーナン・オーブニル侯爵。領民たちを安堵させる為に、領主自らが魔物の討伐へ当たるとのことだった。正直に言って、この男がそんな殊勝な心掛けでいるとは、到底信じられない。ヴォルダン州に入ってからこっち、彼の領内で奴隷が過酷な労働に喘ぐ様を見せられ通しなのだ。


(何を企んでいやがるんだ、コイツは……?)


 彼には悪印象しかない勇杜からすれば、そんな感想も抱いてしまう。

 無礼なことを思われていると知ってか知らずか、トゥリウスは淀み無く続けた。


「間も無く、偵察に出したユニが戻って来る頃合いでしょう。彼女と合流したら、僕とあの子でオークを穴の外へ引き付けます。上手くすれば大部分は釣れるでしょうね。皆さんは、それを見計らってから敵の巣窟へと突入し、攫われた方々を救出して下さい。……何かご質問はありませんか?」


「……はい」


 おずおずと挙手すると、赤銅色の髪の男は興味深そうに眼を細める。正直、値踏みされているようで嫌な気分だった。


「何かな、衿宮(●●)くん?」


「一応聞いておきますけれど、どうして俺たちが突入するんですか?」


 名前を呼ばれた際の微妙なニュアンスに小首を傾げつつも聞く。どう考えても作戦実行の際にリスクが大きいのは、敵の本拠地に突っ込む側である。オムニア側の戦力、即ち勇杜らはこちらに振り向けられていた。本来ならヴォルダンに取って客人の筈の彼らが、だ。これはおかしくないだろうか。ヴォルダンの問題なら、血を流す危険を冒すのは統治の責任者であるトゥリウスの側だろうに。

 問われた側は、笑みに苦笑の色を混ぜながら返答する。


「理由は三つあります。まず一つには、攫われた村人たちの為ですよ。彼らがオークに攫われてもう四日目。そんなにも長い間を、怪物の巣穴などという劣悪な環境に置かれているのです。一刻も早く、治癒を為される神官の方と合流するのが望ましいでしょう」


「はい。私もそのつもりです」


 言って、固い顔をしながら胸の前で指を組み祈るイルマエッラ。

 簡単に言ってくれる、と内心で毒吐く。彼女が大好きで堪らないらしい善行とやらをしに行くのは勝手だろう。だが、勇杜はそれに付き合わされるのである。怪物の巣の中にまでだ。人を巻き込んでおいてそのつもりもあるか、という思いだ。


「第二に、そちらには聖騎士候補バルバストル卿という戦力がいらっしゃる。彼女の腕の程は僕からも保証しますよ。何しろ去年には轡を並べた仲ですからね」


「まさか、また貴公と組むことになるとは思っていなかったがな。それもこんなに早くに」


 と何処となく気乗りしなさそうな口ぶりのエリシャ。


「まあ、敵にヴァンパイアよりも恐ろしい魔物でもいない限り、大丈夫でしょう」


 そう言うトゥリウスだが、聞いている勇杜にとってはヴァンパイアとオークのどちらが恐ろしいのかは判然としない。ゲームなどでは豚面のオークよりも、美麗に描写されるヴァンパイアの方が格上である場合が多いように思うが、この世界でもそうなのだろうか。


「そして最後に、オークの大部分はこちらで引き受けることになると思います。でないと、巣に囚われているだろう人々を救出するのが難しくなりますからね。流石にお客人の方にばかり、負担を押し付けるような真似はしませんよ。ご安心下さい」


 安心しろと言われても、その引き付ける為の手段とやらを教えて貰わなければ無理な相談である。が、勇杜の他の面々はそのことを気にする様子は無い。エリシャもイルマエッラもだ。そんなにもトゥリウスの手配りを信頼していいものなのだろうか。それともオークの巣穴へ突入するなど、そんなに怖気づく程のことでもないと思っているのだろうか。ともあれ、女性二人が泰然としているところで不安顔をしているのも格好がつかない。勇杜は渋々ながら引き下がることにした。

 替わるようにエリシャが口を開いた。


「私からも一つ聞くが、ドゥーエ・シュバルツァーは出さんで良かったのか? あの男なら格好の前衛となると思うが」


 彼女の言うように、あの両手剣の戦士はこの一団に同行していなかった。オークが動いていた場合に備えて、村の方にも防衛戦力が必要とのことで、残してきているのだ。代わってこちらに随行しているのは、異様に無口な彼の部下たちである。


「村人たちにも頼り甲斐のある護衛は要るでしょう。あの村にも去年の戦に従軍していた人がいたら、彼の活躍も知っている筈。まあ、宣撫政策の一環とお考え下さい。それに、当家にも彼以外の人がいるというところもお見せしましょう。そうだね、君たち?」


「「はい」」


 完全に頭部を覆う所謂クローズド・ヘルムの奥から、籠った返事が唱和する。身に着けられた黒鉄の装甲に、背には大剣、腰に幾つかの予備武器。完全武装のオーブニル兵たちは、顔すら見えない重武装ということもあって、まるでロボットのようだという印象を勇杜に抱かせた。或いはドゥーエ・シュバルツァーという男を量産したかのような。


「去年は見なかったが、随分と金の掛かった兵隊と見える」


「新たに国境の地を預けられましたからね、軍備にも手は抜けないのですよ。お陰で幾ら予算があっても足りやしません」


 困ったように頬を掻くトゥリウス。裏表の読み難い男だが、こればっかりは本音であるように聞こえる。

 と、その時だった。


「只今戻りました」


 微かに木々を揺らす音が聞こえたかと思うと、山野に不似合いなメイド服の女が、ヒラリと荷台に舞い降りた。偵察に出ていたユニが戻って来たのである。


「お疲れ様。どうだった?」


「報告いたします。痕跡を追跡した結果、この先にオークの拠点になっていると思われる洞窟を発見しました」


「洞窟か……厄介そうだね」


 主従は何やら問題視しているが、勇杜には何処が問題なのかさっぱり分からない。オークだって雨露を凌ぐのに洞窟くらい使うだろう。

 不思議そうに思っていたのが顔に出たのか、エリシャが補足するように口を開く。


「穴を掘ったのではなく天然の洞窟に潜伏されたということだ。知能の低い連中に大規模な巣穴をまともに作れる筈は無い。手狭になってきたからもっと広げようなどと適当に掘っていたら、地盤を掘り崩して生き埋めになってしまうからな。だから巣穴を拠点にする群れは自然に小規模になる訳だ」


「……つまり洞窟に籠られたってことはその逆で、群れは大きくなると?」


「そういうことになるな」


 そして自分たちはオークがうようよといるだろう洞窟の中に、突入する役へと割り当てられたのだ。不安が再びぶり返して来る。トゥリウスらが多めに敵を引き付けてくれるとのことだが、本当だろうか? 実は自分たちを囮にでもするつもりじゃないだろうか? そんな疑いで頭がいっぱいだった。


「さて、それじゃ準備に掛かろうか。ユニ、例の物は見つかった?」


「はい、こちらに」


 ユニが取り出したのは、薬草らしい植物や笠にイボある毒々しい色付きの(キノコ)などだ。偵察の道すがら、この山で採集してきたらしい。トゥリウスがそれを受け取り、荷物の中にあった薬研(やげん)――窪みに沿って円盤状の重しを動かし薬の材料を潰す道具――に放り込んで、ゴリゴリとすり潰し始める。


「えっと、侯爵様? 何を為さっておいでなんです?」


「見て分かりませんか? 調合ですよ」


 それは言われなくても分かる。イルマエッラが聞いたのは、何でまた魔物の巣を襲撃するのに調合を始めるのか、ということだろう。


「……オークを誘き寄せるのに絶好の匂いの素です。ああ、覗き込まないで下さい。人間にも結構効き目がありますので、貴女みたいな人が吸い込んだりしたら大変だ」


「はあ」


 そんな危険なものを屋外で、しかも馬に牽かれる荷駄車の上で作っても大丈夫なのだろうか。が、彼の手付きは異様に手慣れており、窪みの外に野草の汁さえ飛ばさずに調合を続ける。そして最後に、擂り終えて混ぜ合わされた汁をガラスの小瓶に集める。


「はい、出来上がりっと。……おや、丁度良く到着出来たみたいですね」


 ピタリと車が止まった。そこは森の間道を少し外れた先の開けた場所、勾配がちな傾斜にぽっかりと口を開いた洞窟の前である。予想よりかなり大きい。入口の幅だけで十メートルはある。


(何て言うか、ホントにRPGにでも出てきそうな洞窟だな)


 こんな時でもなければ、その光景に冒険心を覚えたりしていたのだろうが、今はそんな余裕は無い。複雑な心境の勇杜を余所に、その光景を見たトゥリウスは不服そうに唸る。


「何だってまた、こんな目立つ洞窟が今まで報告に上がらなかったんだか。お陰でモンスターが巣食ってダンジョンになってるじゃないか」


「ヴォルダン東部の地理は、未開発ということもあって把握されていない部分が多いので」


「エルピス=ロアーヌの視察から帰ったら、もう一度ここらへんも調査しないとね……ああ、また仕事が増える……」


 彼は慨嘆の吐息を漏らしながら地面に降りると、何やら屈みこんでまた作業を始める。

 ブツブツと何事かを唱えてみたり、地面に翳した掌をぽおっと光らせたり……どうやら魔法か何かを使っているようであるが。


「罠を仕掛けているのか?」


「ええ、≪錬金≫による構造変化を応用し、地盤を脆くしたり空洞化してやって落とし穴を少々。通る時は僕のいる辺りを四~五メートルほど迂回して下さいね。踏んだら落ちますから。あと、底の辺りを尖らせているので、落ちたら怪我しますよ」


 エリシャの問いに、作業に集中しているのかぶっきら棒な調子で答える。そういうことは始める前に言ってほしい。

 やがて落とし穴を仕掛け終えた彼は、立ち上がってこちらを振り向く。


「さて、そろそろ誘き出しに掛かりますが、準備の方はよろしいので?」


「ああ、問題無い」


「私も大丈夫です」


 女性二人はそう声を揃えるが、勇杜の方はと言うと心の準備さえ出来ていない。彼が声を上げなかったのに気づいたか、イルマエッラがチラリとこちらに目を向ける。いかにも心配ごかした目付きだったが、勇杜をここに連れて来たのは彼女だ。いや、正確に言うとエリシャが、


『イルマが行くなら、傍役のお前が後ろで引っ込んでいる訳にもいかんだろう』


 と引っ張り出したのだが。ともあれ、今更になって巻き込んだ者を心配するなら、初めから何もしないでいれば良かったではないか。そのお為ごかしにむかっ腹が立つ。


「……準備は出来ているよ。剣持ってるだけだけどな」


 向こうっ気が刺激された所為か、そんな台詞が口を衝いて出る。実際、内心を別とすれば彼に準備が必要なものなど無かったこともあるが。


「では、作戦を開始しましょう。僕らが敵を誘引しますので、皆さんは木陰から様子を窺い、機を見計らって突入して下さい。出来れば、袖口でも構いませんので口元に布を当てておくように……それじゃあユニ、よろしく」


「畏まりました、ご主人様」


 勇杜らが言われた通りに身を隠すのを後目に、トゥリウスはユニへ例の小瓶を手渡す。匂いで引きつけるということは、あの中身の匂いでオークを釣るつもりだろうか。だったら人に渡さなくとも、自分で割るなり蓋を開けるなりすれば良いと思うだが、どういうことなのだろう。木陰から窺いながら、不思議に思った。


「……。ああ、衿宮くんは少し目を逸らしていてくれませんか」


 それはどういう意味だ、と問い返そうとした時である。

 しゅるり、とどこか艶めかしい衣擦れの音がした。


「………………はっ?」


 声が漏れる。目を疑う。ユニが纏っていた、複雑そうな構造のエプロンドレス。それが手品のようにするりと脱げ落ちていた。彼女は更に流れるような手付きで下着までも外してしまう。後に残るのは継ぎ目の見えない首輪、それとホワイトブリムとガーターくらい。

 端的に言うと裸だ。太陽の照る真っ昼間の原野に白い肌を晒して立つ女性。あまりの突拍子の無さに勇杜は度肝を抜かれる。これは一体どうしたことだ。何故脱ぐ。これから魔物の討伐を始めるのではなかったのか。ぐるぐると疑問が頭の中を巡るが、それはそれとして少年の視線は本能的にくびれた腰つきや形の良い尻、胸元、或いは秘密めかした部位を忙しなく眺めやり――、


「見ては駄目ですっ!」


 ――と、しようとしたところで、イルマエッラの手で目隠しをされてしまう。


「だから見ないでくださいね、って言ったじゃないか。まったく」


 どことなく憮然としたようなトゥリウスの声。同時にユニの方から何かを嚥下するような音が微かに聞こえた。トゥリウスの調合した何かは、どうやら飲み薬であったらしい。しかし、薬を飲ませるのは兎も角として、どうして脱ぐのか?

 そう思ったところで、


「んっ……そろそろ、効果が出ます」


 不意にくらりと立ち眩みしそうな甘ったるい匂いが鼻孔に飛び込んで来た。ばくばくと胸が高鳴り、血流が加速していくのを感じる。


(ヤバい、何だこれ……)


 早まる呼吸を何とか抑える。理性を薄れさせ、逆に本能を煽りたてられる芳香だった。


「成程、こうしてその娘を囮にするつもりか」


「ええ。中に人質がいることを思うと、火を焚いて燻り出す訳にはいかないでしょう? ≪エンチャント・テンプテーション≫が使えれば楽なんですけれど、あの魔法は囮が相手の視界内にいないと効果が出ませんし」


 エリシャとトゥリウスが事務的にそう話す声が聞こえる。つまりあの薬は、服用した者のフェロモンか何かを強烈に分泌させる、媚薬めいた効果を持っていたということだろうか。この匂いでオークを巣穴の外へ引き摺り出すという算段であるらしい。


「あの、これって御召物を脱がれる必要はあるのでしょうか?」


「あります。着衣によって匂いの放出が妨げられますので……それより、来ますよ」


 囮役の平坦ながら何処となく熱に浮かされたような声が合図だった。


「――ブォオォォォォっ!!」


 洞窟の奥から聞くに堪えない濁声を上げながら飛び出して来る、怪物の群れ。ずんぐりとした人体に動物の頭を取り付けたような化け物ども。ある者は毛深い猪に、またある者は桃色掛かった皮膚の豚に似ると、相応に個性はある。が、一様に醜悪な見た目をしている、明らかに人外の生物たちだった。


(これが、オーク……これが、モンスター……!)


 初めて目にする魔物の姿に、勇杜は息を飲む。これまでも魔法など、元の世界では決して見られない存在を目の当たりにしてきた彼だが、これは極め付けだった。ゲームの中から抜け出て来たような怪物どものリアルな造形に、現実感と非現実感が混淆していく。

 ぞろぞろと現れたオークどもの数は、ざっと見ただけで十体を超えていた。その全てが甘い蜜に誘われる昆虫めいて、裸身のまま佇むユニ向かって吶喊する。見るだに興奮しているのが良く分かった。そしてその先頭が、トゥリウスの仕掛けた落とし穴を無警戒に踏み抜いて落ちる。


「ブギャアアアぁぁぁっ!?」


 全く知性の感じられない絶叫。穴の底は尖らせてあると説明があったが、恐らくそれで傷を負ったか絶命したのだろう。だが、後続の集団は勢い余ってか、それとも女の匂いに度を失くしてか、立ち止まることも迂回することもせずに突っかけて来る。当然、後から後からと落とし穴に嵌っていき、あっという間に穴は一杯になった。これでは底の罠には掛からなかった者も、上から落ちて来る後続に潰されて圧死しかねない。


「入れ食いというものですね……≪ゲイルエッジ≫」


 何となく呆れたような口ぶりで言いながらユニが魔法を放つ。穴に落ちなかった一頭が、風の刃に首を刎ねられて絶命した。かと思えば、短剣一本を右手に携えただけで敵中に飛び込み、的確に急所を切り抉り刺し貫いていく。真っ裸で多数の毛むくじゃらに包囲されていながら、この大立ち回りである。あの女性も凄まじい度胸をしているものだと感心してしまう。


「さ。君たちも見ているだけじゃなく働いてくれよ」


「「はい」」


 更にはトゥリウスの命を受けて、例のロボットじみた兵隊たちも攻撃に加わる。一方的な殲滅だった。これでは自分たちが手を出すまでも無いのではなかったかとさえ思う。

 呆然と成り行きを見守っていた勇杜の方を、エリシャがぐいっと掴んだ。


「見惚れているなよ、少年。行くぞ」


「わ、分かっています!」


 何はともあれ囮の効果は抜群のようだ。これだけの数が誘き出された以上、中は手薄。であれば、後は突入して攫われた村人たちを助け出すだけである。三人は乱闘に背を向けて、未だ獣臭の残る洞穴目掛けて駆け出した。







 洞窟の中は想像以上に明るかった。壁面や天井に群生する苔がぼんやりと光を放ち、日の当たらない地下に光源を齎している。大気や地脈から魔力を吸って光る、マリョクヒカリゴケという生態そのままな名前であるらしい。不思議そうにそれを見ていた勇杜に、イルマエッラが聞いてもいないのに説明したのだ。

 内部は典型的な鍾乳洞で、年季の入った石筍が床から天井からと伸び、見るからに寒々しさと刺々しさを伝えてくる。冷たい空気に饐えた体臭や得体の知れない悪臭が混じっているのが、何とも不快だった。如何にも魔物の巣窟になりそうな洞窟といった具合である。


「風の魔法でそれとなく探ってみたが、出口になりそうな穴は我らが入ってきたものが一つに、そこの横道から通じるものを合わせた二つのみ。この分岐路さえ押さえておけば、奥に残存する者がいたとしても逃がさずに済む。それと、万一の場合の脱出路でもあるな」


 そう言って横合いの脇道を顎で示すエリシャに、イルマエッラが小首を傾げた。


「万一の場合、ですか? オークの巣穴にそれほど危険な魔物がいるのでしょうか」


「さて、な。……ここで我らに手を出すとも考え難いが、備えておくのにしくは無い」


「え?」


「何でもない。こっちの話さ」


 誤魔化すように打ち切ると、彼女は先頭に立って歩き出す。手には抜き放たれたサーベル。魔法の苔の怪しい光を反射して輝く白刃は、勇杜の目にも味方の武器ながら空恐ろしい物であるように見えて来た。


(誘き出されたオークが全部じゃなかった場合、戦いになるんだよな。俺たちで……)


 そのことを思うと、今更ながら不安で頭がどうにかなりそうになる。ゲームの知識で言えば、オークなど序盤の雑魚モンスターだ。レベルが低く装備も整っていない内は苦労するだろうが、多少経験を積めば怖くもなんともない相手。だが、それは画面の向こうであればの話。自分が実際に立ち向かうとなると、醜い容貌といいおぞましい匂いといい、何とも近寄りたくない手合いだった。


(エリシャさんもイルマエッラも平然としているし、実際あのユニってメイドさんだって軽く倒していたんだ。ふ、不安に思うことなんてない、はず……)


 言い聞かせるように内心を宥めるも、勇杜の心臓は一向に落ち着いてくれなかった。

 例えば、そこの物陰からあの化け物が不意を突いて襲ってくるんじゃないか? 雑魚は大したことなくても、ボスキャラのように奥へ控えているオークの親玉は凄く強いかもしれない。いやいや、実は更に強力なモンスターがこの洞窟に潜んでいるかも……推測とも妄想ともつかない疑念が、次々に湧いてくる。

 並んで歩く女性二人は、そんなことなど思ってもいないように見えた。或いは検討はしても大したことは無いと考えているのか。いずれにせよ、縮こまるように後ろを付いていく勇杜とは裏腹に悠然とした足取りだった。

 彼女たちには、本当に命懸けの戦いの場へ来ているという自覚があるのだろうか。ふと彼の胸にそんな思いが去来する。ここは人間を襲う化け物の住処だと言うのに、どうしてそうも平然としていられるのか。騎士であるエリシャはまだ理解出来る。戦う為の訓練は積んでいるだろうし、実際に戦功も挙げたと聞いていた。が、イルマエッラはと言えば神官であり、他の者たちからお嬢様呼ばわりされることすらある箱入り娘だ。何を思ってそんなに気楽にしていられるものなのだろうか。オマケに自分までこんな土の下に引っ張り込んで。

 少年の中で、また反感の火が燻り出した。


「どうした、さっきから黙り込んで?」


「え?」


「敵陣の近くで無駄口を叩かないというのは見上げたものだが、少し固さが気になってな」


 放胆な物言いのエリシャに対して、二の句を上げられない。勇杜は不安から緊張していただけなのだが、まさか素直にそれを言える訳が無かった。女たちが平気な顔をしていると言うのに、男の自分が怯えていましただなどと、恥ずかしいにも程がある。

 それを誤魔化そうという心理もあったのだろう。彼の口は思わずあらぬことを口走っていた。


「……別に。何で俺たちはこんなところにいるんだろう、って思っていただけです」


「ふむ?」


「だ、だってそうでしょう? 元々、俺たちの仕事はザンクトガレンってところに行って、内戦を止めるように交渉することじゃないですか」


 舌が勝手に、思ってもいない言葉を繰り続ける。


「人を救うのがオムニアの役目だって言うなら、そっちを早く果たす方が重要なんじゃって」


「ユート様……」


 痛ましげに自分の名を呼ぶイルマエッラ。そこに含まれた非難がましい響きに、彼はまたむかっ腹が立った。


「……それに、オーブニルとかいう貴族の戦力でも十分にオークは倒せるでしょう? わざわざ俺たちがこんな――」


「少年」


 女騎士の呟くような声が彼の口上を断ち切った。決して固くも鋭くも無い素っ気ない声。だが、それは彼を黙らせるのには十分な力を孕んでいる。


「随分とらしくないことを言う。まるで、村に置いてきた坊主連中の主張と同じだな」


 耳に痛い言葉だった。心底見下げ果てている軽蔑の対象と同じことをぬかしていると、そう指弾されたのだ。勇杜は思わず下を向いてしまう。


「そのことについては説明されただろう? 補給する筈だった村が魔物に荒らされた以上、どの道ここで足止めを喰う外無いと」


「そういう、ことじゃなくて」


 じゃあどういうことなのだ、と自分でも思いながら、反射的に抗弁していた。


「お、俺たちが戦う必要なんて、無い、んじゃって……」


 苦し紛れで理も筋も通らない反論。それに対して、エリシャは容赦なく言ってのけた。


「嘘はいけないな。本当はこう言いたいのだろう? 『俺たち』が、ではない。『俺』が戦う必要は無い、と」


「っ!」


 屁理屈の裏に隠していた本音を鋭く突かれ、勇杜は唇を噛む。


「あの……そう、なのですか?」


 おずおずと横から口を挟んでくるイルマエッラ。当たり前だろう、と叫び返してやりたかった。何度も何度も言っているではないか。自分は戦える人間なんかではない、ましてや勇者などではないと。

 ただの外交の為の旅程ならば文句は無かった。無いではないが、呑み込めたと思う。護身の為に剣を帯びることも許容出来よう。だが、今やろうとしていることは何だ。積極的に矢面に立って、害意に満ちた怪物と戦う羽目になっている。こんなことは、自分の――ただの高校生のすることじゃない。それを、今更になって「そうなのですか?」とは何だ。ふざけているのか、この尼は。

 ドロリとした感情が熱を持って煮え滾り始める。苛立ちが堰を切って流れ出す、その直前、


「なら構わん」


 エリシャはそう言って、ふいっと背を向けた。


「えっ?」


「戦いたくない、その自信が無いと言うのなら、強引に鉄火場に突っ込ませるのも可哀そうであろう? お前はそこで待機していろ。すぐに片付けて戻るさ。無理を言ってすまなかったな」


 そうしてツカツカと奥へ進み始める。本気で置いていくつもりなのだ。


「まっ――! ……待って下さい、もしオークが出たら?」


 高い声が出かけたのを押さえて問い直すも、返事は無情だった。


「その時は逃げるか、我らの方へ知らせに走るか、好きな方を選べ。ああ、逃げるのなら来た道を戻る方が賢明だぞ? 素人が抜け道から森に迷い出ても、遭難がオチだからな。それならオーブニル侯と合流した方が幾らかマシ……かもしれん」


「そんな……」


 エリシャは勇杜を置いて歩いていく。彼は動けなかった。この世界に来てから唯一と言える頼れる相手が、自分を見放したように進んでいくのに、追いかけようとすることすら出来ない。彼女の行く先に戦いがある。いや、そうとは限らない。現に出口の方には大量のオークが誘き出された後。それを思えば敵などいないかもしれないではないか。だというのに、化け物との闘争の可能性を考えただけで足が石筍(せきじゅん)の一つと化したかのように動かなかった。


 ――何をぼうっとしている、歩け、走れ、追いかけろ。幾ら自分より強いとはいえ、女の人が危険に向かって進んでいるじゃないか。ここで付いていかなかったら男じゃない。絶対に後悔するぞ恥ずかしいと思わないのか馬鹿野郎。そう自分を叱咤するも、結果は変わらない。


 ――知ったことじゃないじゃないか。……勇杜の中の冷めた部分が嘯く。日本にいた時と同じだ。何かをしなければ、今とは違うものになりたいと思いながらも、お前はどうしていた? 何もしなかったじゃあないか。リスクがあるから、周りと違うことをしたくないから、その為の力が無いからと言い訳をして、結局自分では動こうとしない。

 その癖、世の中がつまらないだのとほざいていた。一番つまらないのは、自分自身だと言うことから目を背けながら。それはこの世界でも変わらなかったというだけだろう。良いじゃないかつまらないままで。怖いことも面倒なことも危ないことも、全部他人に任せて知らない顔をしていればいい、と。


(違う! 俺は、俺は――!)


 なら、自分はどうしたい? 何をするべきなんだ?

 その答えが出せずに、少年は立ち止まり続ける。


「ユート様……」


 そんな彼に、事の元凶が物言いたげな目線を寄越す。


「何、だよ……」


「……いえ。私もエリシャさんと行きます。どうかご無事で……無理は為されませんように」


 ――馬鹿にするな、無理なもんか。

 ――そうか、ならお言葉に甘えて。


 矛盾した答えが我先に口から飛び出ようとして、堂々巡りになる。結果、彼は口元を引き結んで黙り続けた。そんな少年に小さく一礼して、少女もまた女を追って小走りに駆け去っていく。

 後には、答えを出せずに迷い続ける若者だけが一人残された。




  ※ ※ ※




「良いのか、イルマ? あの少年を置いてきて。私が安全を確保するまで彼と共にいるという手もあったろうに」


 巣穴の奥へと向かう道すがらエリシャは何とは無しに聞いてみた。イルマエッラは勇杜に対して、勇者と召喚者という関係もあってか、色々と気を砕いているように見える。幾ら気まずい雰囲気とはいえ、その彼を置いて自分と同行するとは意外であった。

 その旨を聞くと、彼女は訥々と話しだす。


「良くはないです。けれど私がユート様のお傍にいても、果たしてそれが良いことと言えるのかどうか」


「ふぅん?」


「だって、彼が苦しんでいることの原因は私なのですよ? 戦いたくはないと言うあの方が剣を持つことになったのも、こうして魔物の巣の只中に来ることになったのも、この世界――あ、いえ、何でもないです」


「ん? ああ、悪い。聞き逃した。何だって?」


 危うく秘密を漏らし掛けたイルマエッラに、エリシャは空々しく聞いていない振りで応対する。知るべきではないことを知っている身というのも、中々に苦労するものだと内心で嘆息。


「えっと……兎に角、全部私が悪いのです。でも、それは謝って済む問題ではなくて、それで彼に何と言えば良いのか分からなくて」


「普通に謝れば良いのではないのかな」


 一通り聞いてから、率直にそう言う。


「謝って済む問題ではないと言うが、謝らなければますますただでは済まんことになるだろうに。下手に格好を付けようとするから拗れるのだ。悪いと思うなら悪かったと言えば良かろう」


「それは……そうなのですが」


 イルマエッラもその論の正しさは認めているのだろう。悪い事をしたと思ったのなら謝罪する。それが人としての基本だ。今更論を俟つようなものでもあるまい。だが、分かってはいても実行には躊躇いを抱いている。


(とはいえ、これも政治か。面倒臭いことだな)


 エリシャは事情を察して苦い思いを味わう。オムニアが召喚した勇者に対してすんなりと頭を下げることは出来ない。いや、有り難がるという意味でなら幾らでも下げるが、罪を謝することはあり得ないだろう。何故なら人類の危難に当たって勇者を呼び、戦わせるのはことは正しい(●●●)ことなのだ。それで頭を下げていたら、オムニアの大義も聖王教の威信もいっぺんに傷付く。ましてや戦うことを拒むような勇者を呼んでしまったとなれば、事は更に深刻だ。救済を待つ人々は失望するであろうし、ザンクトガレンやマールベアのような教会の思惑から離れつつある国は、これを口実としてさらに離反を進めるであろう。

 それにイルマエッラ自身の倫理観からしても、今謝ることは出来ない。彼女には謝罪の対価に差し出せる物が無いのだから。勇杜の最大の望みは元いた世界とやらに帰ることだろう。だが、それには魔王を倒すか復活を妨げることが必要不可欠。どれほど心を込めようが、対価も無しに頭を下げては形だけの謝罪になるのではないだろうか? そんな少女らしい潔癖な心理もあるのではとエリシャは考えている。


(青臭い子どもを、政治だの軍事だの外交だのの、込み入った部分に関わらせるからこうなるのだ)


 エリシャとしては、そんな理屈はどうでもよろしい。オムニアの苦労はオムニア人が背負い込めばいいし、勇杜とイルマエッラの関係もどちらかが譲る姿勢を見せなければ二進も三進も行きそうにない。相対的に見れば余裕があるのはイルマエッラの側なのだから、とっとと頭を下げてしまえば良いだろうと思う。


「なあ、イルマ。あのくらいの少年は言葉にせねばなにも察してはくれぬぞ? こちらの悩みを理解して譲歩してくれるのは、大人――それも良く出来た大人だけだ。彼は若いし、物語の主人公でもない。若者相手に高望みをするより、こっちの側から行動せねば」


 言いながら彼女が脳裏に思い描くのは、第二騎士団時代の新入りの扱いだった。若い男というのは得てして我儘で甘えた者であるので、指導する側としては色々と苦労させられたものだ。最終的には面倒臭くなって、ぶん殴って目を覚まさせてから言うことを聞かせるのが常だが、ファントーニからも大事に扱うよう言われている勇杜に同じことは出来ないだろう。

 そんな経験からの言葉なのだが、聞いた側はあらぬ意図で受け取ったらしい。


「……は、はい。エリシャさんって、やっぱり大人の女性なんですね」


「? 何を言う。当たり前のことではないか」


 当年とって二十五歳である。これが大人でなければ何だと言うのだろうか。エリシャは小首を傾げる。イルマエッラが言っているのはそういう意味ではないのだが、彼女はニュアンスの違いに理解が及ばなかった。


「さて、楽しいお喋りはここまでだ。そろそろ最奥部に着くぞ」


 表情を引き締め直し、手にした鋭剣を進行方向に向けて構える。イルマエッラも即座に意図を理解し身構えた。


「やはり、誘き出されたものが全てではないと?」


「臭いが強過ぎる。残り香などではあり得ないな。奥にまだいるよ。恐らく囮に掛からない程度の知能を持つ者がな」


 ユニと違って野伏の心得がある訳ではないが、エリシャとて山野での行軍訓練や匪賊討伐の経験は重ねている。本職には劣るが、この程度の索敵はこなせて当たり前だった。


「出て来い、下郎。それとも、婦女子の招きに応じるのは恥ずかしいのかな?」


 挑発的に声を上げる。果たして、すぐさま応えがあった。


「……ググフフフ。外の囮だけでなく、中にまで獲物が来てくれるとはな?」


 奥から響いて来たのは鼻息の荒い濁声。くぐもって聞き取り難くはあったが、確かに言葉を話している。人語を解すとは低能のオークらしからぬ知性ではある。そして光苔の乏しい明りの中へ、その巨体が現れた。見上げるような巨体に、古木の幹じみた丸く太い手足。手に携えるのは刃渡りだけで大人の背丈ほどもある巨大な石剣。あんなものをまともに食らっては、並の人間なら一撃で挽肉に変じよう。口から突き出た牙も長く、従来種のそれとは比較にならぬ威風じみたものすら感じさせる。


「オークロードか」


 オークの上位種。高い知能と屈強な肉体を以って、我欲に狂う同胞どもを統率する長。この怪物に率いられた群れならば、辺境の村落の一つや二つは壊滅してもおかしくはない。討伐を頼んできた村が半壊で済んだのは、単にまだ群れが小さかったからに過ぎないのだろう。

 現れた怪物は女二人を下卑た目付きで眺めまわすと、満足げに鼻を鳴らす。


「女騎士に聖職者か。これはまた上物が掛かったものよ」


「掛かったとは異なことを言う。罠に嵌ったのはお前の手下どもであろうに」


 エリシャが呆れを隠さずにそう言うが、相手は小馬鹿にしたように鼻で笑った。


「ああ、あの堪えの利かぬ盆暗どものことか? あの匂いは囮だと言ったというのに、愚かなことよ。だが、愚図な下僕の替えなど幾らでも利く。また新しい群れでも乗っ取るか、さもなくば雌の胎でも使って増やせば良い。なあ、そうだろう? グフフフっ」


 笑いながら、瞳に好色な色を灯す。情欲を向けられることに慣れていないのか、イルマエッラが身を固くする気配が伝わって来た。

 一方、エリシャは、


「阿呆か、お前は」


 下衆な算段を一言で切って捨てる。


「……何?」


 愉悦に水を差されたオークロードが不興げに顔を歪めたが、女の口は止まらない。


「部下どもが愚かだと? その愚か者の手綱も取れぬなら、長たるお前も同類だろうに。群れの統率も出来ずにボス気取りとは片腹痛い。囮だと言ったろうに? 根城の入口に陣取られて袋の鼠であると分かっていながら、どうして対策の一つも取れないのか。せめてさっきの横穴から逃げ出しでもすれば、格好も付いただろうにな。まっ、こちらとしては追う手間が省けて僥倖というものだが」


 立て続けに相手の落ち度を指摘していく。

 戦闘とは実際に刀槍や魔法を交える前から始まっているのだ。言葉合戦も合戦の内。挑発で冷静さを奪い、筋道だった理屈でプレッシャーを加えることで、戦闘開始前から優位を奪うのも作戦なのだ。


「ふんっ……ロードといえど、所詮は言葉を喋るだけの豚か」


 トドメにそう言って鼻で笑ってやる。ただし、あくまでも優雅に、だ。


「……黙れ女ァ!!」


 耐えかねたように上げられた叫びがビリビリと洞窟内を震わせる。気の弱い者ならこれだけで卒倒しそうな雄叫びだが、言い合いに負けての末のものとなると些か威勢を欠いていた。


「もう良い、言葉など不要! 弱肉強食の掟に従って――」


「ほう、もう良いか。だとさ、イルマ」


「はい。……≪ライトレイ≫!」


 エリシャが長口上を聞かせている間に詠唱を済ませていたイルマエッラの魔法が放たれる。太い光の束が槍の穂先のように伸びて、魔物の左肩を貫いた。


「――ぐわぁあああああっ!?」


 光の魔法による一撃は、相当に堪えたと見える。オークロードは悲鳴を上げて数歩蹈鞴を踏んだ。そして、先程まで言葉を交わしていた相手を憎々しげに見据えて吠える。


「ひ、卑怯だぞ貴様っ!?」


「油断をするから馬鹿を見るのだ。元より二対一だぞ? なのに一人にしか目を向けておらんからそうなる」


「は、恥ずかしいとは思わんのか! 貴様らは騎士と神官だろうに!」


「神敵にして無辜の人々を脅かす魔物に、慈悲も礼儀も不要です」


 エリシャが飄々と言い返し、イルマエッラも普段の気弱さが欠片も窺えない硬質な目つきで切り捨てる。相手が尋常な人間であったり、亜人であっても敬服すべき知性を持っているのであれば、二人もまた別の対応をしたであろう。だが、目の前にいるのは、人語を解するだけでその実獣欲に駆られているモンスターに過ぎない。ならば一々作法を踏まえての戦など馬鹿らしい。隙があったら殺しにいく。それが当然なのだ。


「ガァアアアァぁぁぁっ!! 舐めるな雌どもがァ!!」


 怒りに任せた石剣の一撃が、エリシャに向かって振り下ろされる。洞窟内ではあるがここはたっぷりと広い造りだ。この豪撃を遮られる心配は無いだろう。女騎士を脳天から叩き割る感触を想像してか、それとも上等な獲物を殺してしまうのを惜しんでか、怪物の目が一瞬だけ細められる。

 が、そんなことなど心配する必要は無かった。


「遅い」


 水を切ったように手応えの無い感触。次いでズズンと石壁に何か重い物が衝突する音。オークロードは一瞬、空振りを訝しむように目を瞬いた。だが、それにしてはおかしい。エリシャは一歩たりとも動いていない。狙いを定めて振り下ろした時と位置は変わっていなかった。ならば、何故当たっていないのか。

 答えはすぐさま、激痛を伴って理解出来ただろう。


「……ぎぃいぃやぁあああああっ!?」


 右腕から血が飛沫く。鮮血というには脂っこく粘る液体が、洞窟の床を赤黒く濡らした。手首が無い。オークロードの右手は、バッサリと切断されている。見れば切り離されたそれは、いまだに武器を握ったまま壁にめり込んでいた。攻撃の中途で、エリシャの斬撃が断ち切っていたのだ。


「なっ、言っただろうイルマ? 私一人に任せておいても大丈夫だろうと」


「はい。それは存じておりましたが、奥には治癒を待つだろう方々も囚われておりますので」


 戦闘の最中とは思えない呑気な会話を交わす二人の女。片や先年にヴァンパイアという討伐等級Aランクの大物を平らげた凄腕の騎士で、もう一方はこの若さにして法力のみでオムニアの司祭の位階を授かる傑物だ。他方、オークロードは冒険者ギルドの討伐等級ではCどまり。元より勝負の土台に上がれるような相手ではない。囮を用いた作戦など、人質を安全に救助する為の手配りでしかないのだ。


「はぁ……はぁ……く、糞っ! こうなったら――」


 手負いの怪物は荒い息を吐きながら、物陰に残った腕を伸ばす。左肩とてイルマエッラの魔法に貫かれている筈なのだが、存外にタフなのか、それとも生命の危機に苦痛を度外視しているのだろうか。何にせよ、オークロードはそこから急場を凌ぐ為の切り札を引き摺り出す。


「き、きさっ、貴様らァ! これを見ろォ!」


 そう言って突き出したのは、ボロボロの衣服、その残骸を辛うじて身に付けている女性だ。村から攫われたという女だろう。怪物は女の頭を人形のように掴み上げて翳す。


「こ、コイツらだろう!? 貴様らはコイツらを助けに来たのだろう!? こ、これを殺されたくなければ、み、み、道を開けろォ!」


「む」


「お、おお、俺が少しでも力を入れれば、この女は熟れた果実のようにグシャっ、だ! 分かったなら道を開けろォ! す、すぐにだっ!」


 言いながらも手の中に少しずつ力を込めていく。ほとんど死体も同然のように見える村人だが、辛うじて息があるらしい。強まる圧迫に、


「ぁ、ぐ、かはっ……」


 と苦しそうに声を漏らす。


「た、たすけ、て……」


 苦痛が刺激となって目覚めたか、それとも朦朧とする最中のうわ言か、そんな言葉まで口にした。


「……エリシャさん」


「ちっ、仕方ないな。……分かった、道は開けよう」


 困ったようにこちらを見るイルマエッラに首を横に振り、エリシャは素直に一歩脇に退く。のみならず、相手を安堵させる為か、手の中の武器すら床に捨てた。無論、彼女は敵にそこまで甘くしてやるたまではない。


(これで調子付いて更に攻撃してくるようなら、無詠唱の魔法でも喰らわせてやれば良いが。さて……)


 空いた手に微かに魔力を溜めながら様子を窺う。

 怪物は若干拍子抜けしたように戸惑いながらも、


「憶えているが良いっ!」


 捨て台詞を吐き捨てると、脇目もふらずに逃げ出した。その姿が通路の角を曲がって見えなくなると、エリシャはさっさと捨てていた剣を拾い上げる。


「道を開けるとは言ったが、追わないと言った憶えは無いな。イルマ、お前は奥に残っているだろう他の人質を助けておけ」


「はい。分かっています……あの、大丈夫なのでしょうか? 魔物が逃げた先には――」


 イルマエッラが言っているのは、分岐路に残してきた勇杜のことだろう。このままでは逃走を図るオークロードと鉢合わせになってしまう筈。それを危惧しているのだ。

 だが、エリシャはまるで問題としてはいなかった。


「任せておけ。こう見えて脚には自信がある。それに――」


 ――存外、余計な手助けなど要らぬかもしれないぞ?

 そんな続きは敢えて言わずに、女騎士は来た道を音も無く駆け戻り始めた。




  ※ ※ ※




 穴の奥からは野卑な怒号や、鈍いが大きな音が聞こえてきていた。どうやらまだ中に残っていた敵がいたらしい。エリシャたちはそれを相手に戦闘を行っているようだ。そのことを察しても、勇杜はまだ動けずにいる。本来なら、この剣を手にして自分も駆けつけるべきだろう。だが、それでもだ。


(行けっこないだろ……戦える訳無いだろ……!)


 ギュッと剣の柄をお守りにでもするように握り締める。

 それでも彼は戦うのが嫌だった。いや、はっきりと言って怖かった。ファントーニやドゥーエと立ち会った時のような、命の保証があるものではない。神官どもと揉めた時のように、命の取り合いまではいかないものでもない。敵を相手にしての生死を懸けた戦いをする覚悟が、どうしても出来ないのである。かと言って、引き返すことも無理だ。入口には囮を引き受けているトゥリウスらがいる。彼らに女性二人を置いて逃げ帰った姿を晒せるほど厚顔にはなれない。現状でも十分に格好の悪いことは承知していてもだ。

 戦うのも嫌、逃げるのも嫌。どっちつかずのまま立ち止まり続ける少年。

 そんな彼にも、選択の時は有無を言わせずにやって来た。


「餓鬼ィ? ……伏兵かァ?」


 洞窟の奥からぬっと姿を現した巨体の化け物。手首の無い右腕から血を滴らせ、左の肩口からもブスブスと焦げ臭い煙を上げた満身創痍の態だが、それでも人間の一人や二人は一捻りで殺せそうな威圧感である。


「オー、ク?」


 勇杜は混乱した。どうしてオークが向こうから出てくるのか? エリシャやイルマエッラはどうしたんだ? 自分を置いて行った、自分がいなくても大丈夫だと平気な風でいた二人は? まさか、まさかとは思うがこの怪物に――


「……邪魔だ、どけっ!」


「がはっ!?」


 巨体のオークは、その太く短い脚で眼前に立つ少年を蹴り飛ばす。いや、短いと言っても体躯に比しての話。人間にとっては遠い間合いも、大柄な魔物にとっては十分に射程の範囲だった。不意を打たれて素っ飛び、壁に激突する勇杜。

 ……衝撃はあったが、思ったより痛くはなかった。神経が昂る余りに痛覚が鈍くなっているのだろうか。それとも痛みを感じないほどの重症なのか。いずれにせよ、その衝撃で彼は正気付く。

 そして、同時に目に入れた。

 怪物が左腕にぶら下げている何かを。


(女の……人?)


 勇杜は一瞬、先行していた彼女らのいずれかかと疑ったがすぐに違うと悟った。怪物が乱暴に掴み上げているのは、エリシャでもイルマエッラでもない。見知らぬどこかの誰か――多分、攫われたと聞かされた村人だろうと見当を付ける。

 村人の女性は酷い有様だった。衣服は切れ端と成り果てて身体に辛うじて引っ掛かっている程度。露出した肌のあちらこちらに打ち身や擦り傷をこさえている。そして宙吊りになっている間も足の間からぼたぼたと垂れる何か。彼女の身に何が起こったのかは明白だった。

 カッと頭が熱くなるのを感じる。


「お、前……!」


 立ち上がり声を掛ける少年に、怪物は不興そうに振り向く。


「何だ、餓鬼が。黙って寝ていれば見逃し――」


「お前、その人に何をしやがった……!?」


「――フンっ。貴様、ひょっとしてこの雌の番いか? 俺が言わんでも想像はついているのだろう?」


 勇杜の激昂に、彼女と関係があったと勘違いでもしているのだろう。目元を一転して愉悦の色に(やに)下がらせるオーク。


「貴様を殺す前にじっくりと語り聞かせてやるのも面白そうだが……いや、残念だなァ。何分、先を急ぐ身だからなァ」


 目の前の化け物がごちゃごちゃと何かを言っている。少年はその言葉を聞いていなかった。視線はピタリと怪物の手の中に囚われている村娘に合わせられていた。

 彼女は酷い顔をしていた。傷だらけだから、という意味ではない。表情に生気が無い。感情の抜け落ち切った焦点の合わない目。半開きの唇は時折力無く動いて、何かを呟いている。勇杜に相手の唇を読むなどという芸当は出来ないが、それでも言わんとすることは肌で理解出来た。

 ――たすけて、と。彼女は何度も繰り返している。


(何でだよ……何でこんなことが出来るんだよ、お前ら。何でこんなことばっかりなんだよ、この世界は)


 ガリっと、奥歯を噛み潰す。

 攫われた村の女たちがどうされるかなど、一言も聞かされていなかった。ただ囚われて衰弱しているのだろうとしか理解していなかった。どうしてイルマエッラが強硬に迅速な手当てが要るなどと主張していたのかも。……当たり前だ。オークが女性を攫う目的など、大っぴらに言えることでもないし、この世界の人々にとっては常識なのだろうから。

 知らなかったなどという言い訳も通らない。少し考えれば分かることではないか。何で女などを攫うかなんて。どうして女の匂いが囮として有効かなんて。この化け物どもが人間の女を何の対象として見ているかなど、目の当たりにするまでもなく考え、承知しておくべきだった。だが、彼は考えるのを止めて、分かるはずのことを分からない振りをし続けていたのだ。

 頭が芯から熱くなる。怒りだけではない。この感情は、恥だ。勇杜は自分が恥ずかしかった。


(俺は、我が身可愛さで、この人たちを見捨てようとしていた)


 他に力のある人間がいるから、自分がいなくても大丈夫だろうから、自分には関係無いからと、他人の不幸を見て見ぬ振りしようとしていた。そのことが堪らなく恥ずかしい。後悔の念さえ抱いている。だからそれは――今すぐにでも雪がなくては。


「死ね、餓鬼。貴様の断末魔で、この傷の痛みも少しは癒えようっ!」


 豚の鳴き声がうるさい。すぐにでも黙らせてやる。勇杜はこの世界に来てから初めて、殺意を以って剣を取った。


『今、お前が頭に浮かべてるのは、本当に剣を――人殺しの武器を振るうのに足りる理由なのかい?』


 不意に、以前剣を合わせた相手の声が脳裏を過る。

 彼は今、それに是と肯いた。

 こんな化け物は生かしておけない。理由はそれで十分だ。


 ――それで良い。

 ――傷付く無辜の人々を救いたい。

 ――その願いが、間違いであろう筈が無い……!


 カチリ、と。

 何かの歯車が噛み合ったような音が、聞こえた気がした。


「死ぬのは――」


 抜き放った刃を頭上に振りかぶる。激情に任せた、型も構えもあったものではない粗雑な一振り。熟練の剣士からすれば、嘆息を禁じえない代物だったろう。

 しかし――、


「――お前だァっ!!」


 手に走る、肉切り骨断つ手応え。顔を身体をと濡らす生温かい血。刃は肩口から入り、オークの心臓まで一息に至る。断末魔すら無い呆気無さ。

 怒号と共に放たれた一閃は、目の前で粋がる獣を絶息せしめるには十分だった。







「うぇ……げぇえええっ……!」


 びちゃびちゃと音を立て、洞窟の地面を戻した物が汚していく。嘔吐を催した理由は、醜悪な化け物とはいえ命を一つ奪った実感の所為か、それとも単に血と臓物の悪臭に耐えかねてのことだろうか。我がことながら、勇杜には今一つ区別出来なかった。

 そんな彼の背に、ポンっと労うように手が置かれた。


「ご苦労。初陣ながら見事な働きであった」


 エリシャである。無事だったのだ。ということは、やはりあのオークは彼女らに追い詰められ、逃走を図ったものだったのだろう。

 勇杜は振り向くと、血塗れの顔をのろのろと上げた。女騎士の満足げな顔と視線が合う。


「エリシャさん……アイツは――」


「イルマの事か? 彼女なら奥の方に囚われていた者たちを治療している。おっつけ、こちらにも来るだろうさ。治癒の魔法が必要なのもいるだろうしな」


 言って勇杜とオークの人質にされていた女性とを見比べる。


「お前の方は必要か? 私も修行の成果で多少の心得ならあるが」


「いえ、俺は良いです」


 この身体を濡らしているのは全て返り血だ、と考えたところで気付く。


(……あれ? 全然痛くない)


 あのオークには出会い頭に強烈な蹴り――数メートルを素っ飛んで壁にぶち当たるような――を喰らっていた筈だった。先程までは夢中になっている所為で痛みを覚えていないと思っていたのだが、人心地付いた今も何も感じないでいる。攻撃を受けた辺りを摩ってみるも、やはり普段通りの感触しかない。


(もしかしてこれが……勇者の力ってヤツなのか?)


 普通の高校生が一ヶ月やそこら訓練を積んだ程度で、テレビで見たレスラーより二回りは巨大な怪物の攻撃を受け止めたり、のみならず一撃で殺したりすることが可能だろうか? 出来る筈が無い。あるとしたらそれは何か不可思議な力が働いているからで……勇杜にとってその心当たりは、イルマエッラによって勇者として召喚されたことしかなかった。

 そうこう考えていると、


「ユート様っ! ご無事ですか!?」


 奥からそのイルマエッラが駆け戻って来る。


「む? あちらの方の人質はどうしたのだ?」


「ああ、エリシャさん。身体の方の傷は問題無く治癒出来たのですが……その、心の方までは魔法で治す訳にもいかないので」


 非力さを悔いるように言う彼女。つまり、生きてはいるが自発的に動けるような精神状態ではないと言うことなのだろう。勇杜も苦い気持ちと共にそう理解する。何の変哲も無い村の女たちが、数日間オークによって虐げられても尚、自分を保ち続けられるかどうか。自分が何とか助けることが出来た女性の惨状を見るだに難しいだろうと分かった。


「……じゃあ、この人も早く治療してあげてくれ。他の人と同じ目にあっただけでなく、化け物に無理やりここまで引っ張って来られたんだから」


 言って、通路の壁に凭れて細い呼吸を途切れ途切れに続ける女性を示す。オークの手からは解放されたものの、身体か心かの傷の影響だろう、即座に気を失ってしまっている。


「は、はい! ≪天に坐します我らの主よ――≫」


 イルマエッラが両手の指を組んで祈るのと同時に、女性の傷がみるみる塞がっていった。

 彼女は治癒のみならず更に詠唱を重ねる。


「≪また重ねてお祈り申し上げる。この者の身を侵す不浄を祓い清め給え――≫」


「これは?」


「確か、浄化の魔法……だったと思うが。折角助け出したというのに、子――ごほんっ。……胎の中に魔物が巣食っていたとしたら台無しであるからな」


 エリシャの説明にホッと息を吐く。つまり彼女らは望まない子を得てしまうような結果にはならないということか。この村人らを襲った事態は最悪だったが、少なくともその更に底までには至らなくて済む。不幸中の幸い……と言って良いのだろうか。

 ふと、浄化を終えたイルマエッラの身体がふらりと傾ぐ。


「おい、大丈夫か!?」


 勇杜は反射的にその肩を抱き止めていた。癪なところもある相手なのだが、流石に床に倒れ込みそうになるところは放っておけない。自分の中途半端さに複雑な心境になるものの、腕の中に収まった相手はというと、驚いたような逆に安心したような、曖昧な笑みを浮かべる。


「も、問題無いです。ちょっと法力を使い過ぎただけですので」


「無理も無い。このところ、あちこちを施しの為に廻っていたからな。疲れが出ても当然だ」


 エリシャが手を貸すように差し伸べながら言う。ヴォルダンの奴隷たちに治癒を行い、その主たちに待遇改善を訴えていた活動のことだ。


(コイツも、悪い奴ではない……んだよな)


 そのことを今更ながらに実感する。勇杜がこの世界の現状に不満を並べている間、彼女は常に改善の為に動き続けていた。父親は兎も角、娘の方は善性の人間であることは確かだ。

 ただ、自分をこの世界に召喚したこと、それだけがしこりとなっているだけで。


(……少し、考え直した方が良いかもしれない)


 イルマエッラとの関係のこと。そして、自分がこの世界で為すべきこと。

 まだどうすべきかという答えは明確ではない。だが、答えを出そうと考えてみようとは思う。衿宮勇杜は自分がようやく、そのスタートラインに立ったような気がした。


「よし、では戻るか」


「ええ。救助の為の人手も呼ばなくてはいけませんし」


 まだ少しふらついているイルマエッラをエリシャに預け、三人で来た道を戻る。

 やがて出口が見えて来た。


「おーい、皆さーんっ! ご無事ですかーっ!?」


 洞窟の入口の方から声が聞こえる。

 外から差し込む光、それは彼らの前途を照らす祝福なのか。それとも――その正体はまだ判然としなかった。

 

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