忌まわしい事件に感動と涙の終止符を打つ!
読む前にハンカチを用意して下さい。
理由は、作者の俺自信が一番知っています。
「伐山さん?」
拘束されている真理絵は声を掛けた。
「何だ?」
「これって、何のつもり?」
「自分に聞いてみろ。」
真理絵は今までの事を思い返した。
「解らないわ。」
「とぼけるな。お前なんだろ、妻を殺したのは?」
「はあ!?」
訳の解らない事を言われた真理絵は、目を点にして叫んだ。
「何で私が貴方の奥さんを殺さなくてはいけない訳!?」
伐山は、ポケットから写真を取り出した。
その写真には、亡くなった真理絵の父が写っていた。
「こ、これって!?」
「そう、これはお前の父親の写真だ。」
「な、何であんたが親父の写真を!?」
「1年前にある女が殺人容疑で逮捕された。その時の被害者がこの男だ。」
な、何だって!?
「待って、親父は自殺の筈!」
それは初耳だ。
「それが違うのだよ。
君の父親は俺の妻が殺したんだ。」
おおよその事は作者から聞いていたが、この二人にそんな繋がりがあったとは、ナレーターの私も知らなかった。
「信じないよ。そんな事、私は信じないよ。」
「それは無理もない。父親の件は、裁判によって自殺と処理されたからな。
生前、君の父親は、不倫をしていた。
それが発覚したのは、父親が自殺した前日の事。
その日、君の両親は、夫婦喧嘩をし、母親は愛想が尽き、君を連れて家出。
そして、翌日に父親は、それを苦に自殺した。
だが、それは俺の妻が計画した事だ。
当時、君の父親は、遺産の相続人を、俺の妻にしていた。
妻はそれを狙って、君の父親を自殺に見せかけて殺し、多額の現金を手に入れた。」
「う、嘘よ!」
伐山は、遺書を出し、開いて見せた。
それには、"全ての遺産の相続人を、伐山 恭子にする"、と、父親本人の字で書いてあった。
真理絵は驚いて声も出なかった。
が、直ぐに平常心を取り戻した。
「貴方にしちゃ上出来な推理ね。」
真理絵は、巧く行った、と思いながらほくそ笑んだ。
「だけど、残念ね。」
「何?」
伐山は顔色を変えた。
「貴方の負けよ。
ラジオをNHKに合わせなさい。無ければテレビでも良いわ。」
伐山は真理絵に言われるがままにテレビを付けた。
「臨時ニュースです。
本日、綾瀬川の橋の上から身を投げた男の遺体が発見されました。
男は、先日、伐山の事件で誤認逮捕された高山 洋一氏で、橋の上に遺書が残されておりました。
遺書には、"伐山 恭子を殺害したのは自分だ"と書いてありました。
警察は今後、詳しい調査をして行く方針です。」
伐山はテレビを消した。
「これがどうしたと言うんだ?どうせ、これもあんたの仕業だろ?」
「・・・・・・。」
真理絵は考え込んだ。
「(9月1日午後9:30、伐山 恭子が寝室で死んでいるのを、帰宅した伐山弁護士が発見した。
死亡推定時刻は、午後9:00。
警察は当初、高山 洋一を殺害容疑で逮捕したが、後でアリバイがある事が解り、釈放された。
そして、その高山が、綾瀬川の橋から飛び下りて自殺した。
現場には遺書が残されていた・・・。
成る程、読めてきたわ。この事件の裏に隠された忌まわしき事件が。)」
「どうした?真実を突き付けられて声も出ないのか?」
「いいえ。
物凄く単純過ぎて声が出なかっただけよ。」
真理絵は言い放った。
「何だと?」
「恐らく、犯行はこうよ。」
時間は1日の朝に戻る。
恭子は、ぐっすりと静かに眠っていた。
そこへ、男が包丁を持って入ってきた。
男は、眠っている恭子の胸に、包丁を突き刺した。
「いやああああ!」
あまりの激痛に、目を覚ます恭子。
「あ、あ・・・な・・・た・・・。」
恭子は男に手を伸ばして呟いたが、直ぐに事切れ、手を落とした。
男は、寝室のエアコンを40度の暖房に設定後、オフタイマーを午後9:00にセットしてその場を後にした。
真理絵は大体こんな事を言った。
「そ、それで?は、犯人は誰なんだよ?」
伐山に焦りが見える。
「続きはまだありますよ。」
それは、綾瀬川での出来事。
「話しとは何だ?」
高山に呼び出された男はそう言った。
「俺、見てしまったんだ。」
高山は笑いながら言った。
「何をだ?」
「あんたが恭子を殺す所をだよ。
あの日、俺は隣の空き家で恭子の寝ている姿を監視していた。
そしたら、あんたが恭子に包丁を刺した。
警察にバラされたくなかったら、全財産を俺に寄越しな。」
男は、クロロフォルムを染み込ませたハンカチを、高山の鼻に当てがった。
「うっ!?」
高山は、眠くなって眠ってしまった。
男は、嘘の遺書を置き、高山を落とした。
そして、その場を去った。
「で、犯人は誰なんだよ?」
「伐山さん、犯人は・・・貴方よ。」
「ハッハッハ、こいつは傑作だ。俺が犯人だ、と?
笑わせるな。」
伐山は笑って言った。
「事件の背景は1年前に遡る。」
真理絵が言うと、伐山は真剣な顔をした。
「1年前、恭子さんが遺産目当てで私の親父を殺害し、裁判に掛けられた。半年後、何も知らない貴方は、裁判で無罪を勝ち取った。
そして今回、事実を知った貴方は、恭子さんが眠っている間に刺殺した。
が、それを高山さんに見られ、口封じの為に、彼を橋から落とした。そうなんでしょ?
真犯人の、伐山 和雄さん。」
真理絵は真相を語った。
「良く解ったな。
ついでだから聞こう。
動機を答えてみろ。」
「動機?
あの写真、貴方にそっくりですよね。
貴方、奥村 和彦と言う双子の兄がいるわね?」
「・・・・・・。」
「私の親父、旧姓が伐山なの。ここまで言えば、私の言いたい事、解るわね?」
「・・・・・・。」
「確認の為に一応言うけど、恭子さんを殺害した動機は、私の親父・・・つまり、貴方の兄、和彦が殺された事の復讐でしょ?」
「流石だ。
だが惜しいな。
君の父、和彦は俺自信だ。」
「ほえ?」
「1年前殺されたのは、弟の和雄だ。
和雄は、俺の身代わりになって、死んだんだ・・・。」
衝撃的真事実発覚に真理絵は驚くと、急に悲しくなって涙した。
「今縄を解いてやる。」
真理絵を縛り付けていた縄をほどいた和彦は、涙を堪えながら、ゆっくり玄関へと歩いて行った。
が、それを真理絵が制した。
「パパ!」
真理絵が叫ぶと、和彦が振り向いた。
真理絵は、和彦に抱きついた。
「行かないで!
やっとパパに会えたのに、また離れ離れになるなんて、嫌だよ私。
お願いだから、ずっとそばにいて!」
真理絵は泣きながら言った。
「でも俺は・・・。」
「お願い!
自首なんか、自首なんかしないで!
今回の事なら、私が何とかするから!
だから、だから、だからずっと側にいて!
本当は、本当はいけない事だって分かってる。
でも、でもパパには、家に帰ってきて欲しいの!
パパのいない生活なんて、私には耐えられないよ!」
真理絵は、心の底から込みあげてくる気持を全て吐き出した。
「真理絵・・・。」
和彦は、真理絵を、ギュッと抱きしめた。
その後、真理絵は警察に行き、高山が真犯人だ、と言う嘘の推理をし、事件はストーカー男の高山が恭子を殺し、綾瀬川の橋から飛び降り、後追い自殺をした、と言う事で丸く納めてしまった。
その晩、真理絵は部屋に篭り、朝まで一晩中泣き続けたと言う。
感動と涙の悲しい結末でした。
これを書いてる時、真理絵の感情を直に受けてしまい、俺自信まで泣いてしまいました。
おかげで、自首させるつもりが、こう言う結末になってしまいましたことをお詫び申し上げます。