院長殺人事件!
[ドンドンドン!]
「先生!?先生!?」
ドクターが呼び掛けるが、返事は無い。
「どうしたあ!?」
騒を聞き、天道と真理絵が駆け付けて来た。
「さっき、銃声が聞こえて。」
「どけ。」
天道は、回し蹴りを放った。
[ズドーン!]
扉が木っ端微塵になった。
「せ、先生!?」
ドクターが入ろうとしたが、天道が制した。
「入ってはいけない。」
と言いつつ、部屋に入る天道。
「「自殺か・・・。」」
天道と真理絵が同時に言った。
二人の目が会う。
「あの、先生は!?」
「「残念ですが、亡くなっています。」」
再び二人の声が重なる。
「あの、二人一緒に言わなくても・・・。」
全く、その通りである。
「そうだな。
俺は警視庁特別捜査課の天道 総知だ。
あんたの話を聞かせてもらう。」
そう言って、天道は警察手帳・・・いや、黄金の警察手帳を見せた。
この手帳は、特別な事件を捜査をする者に与えられる、世界に一つしか無い貴重な警察手帳だ。
中央に、警察のトレードマークが付いており、その下に、警視庁、と縦に書かれている。
ぶっちゃけ言えば、普通の警察手帳を黄金色に塗っただけだ。
また、特別捜査課は捜査にどんな手段を取っても許される。
「あんたの話を聞かせて貰う。
いや、その前に名前を聞かせて貰おうか。」
天道はドクターに言った。
ドクターの名前は、小島 勝男。水理病院の副院長である。
彼の証言では、銃声が聞こえる前は、トイレに行っており、銃声が聞こえたので慌てて駆けつけて来たと言う。
「それで、他に気づいたことは?」
「いいえ、特に・・・。」
「ねぇ、刑事さん。」
真理絵が呼んだ。
「どうした?」
「見て、この指輪。」
真理絵は、院長がしている指輪を指差した。
真理絵が差した指輪は、少し妙だった。
「何だ、"指貫"じゃないか。」
「サシヌキ?」
「指貫だ。
小島、院長は裁縫をやるのか?」
天道は小島に聞いた。
「えぇ、趣味で仕事の合間にやってますけど・・・。」
「・・・・・・。」
天道は考え込んだ。
「(指貫、裁縫、これなら誰にでも密室は作れるが、肝心の鍵が見つからないんじゃなぁ・・・。)
んあ?」
「あのさ、さっきから呼んでるんだけど?」
真理絵は呆れながら言った。
「すまん。で、また何か見つけたのか?」
「これ。」
真理絵は鍵を渡した。
「これ、何処に?」
「院長さんのポケットに入ってたよ。」
「ポケット?」
「うん。」
「どう言う風に入っていたんだ?」
「こう言う状態。」
真理絵は鍵を天道のポケットに押し込んだ。
天道はポケットに手を入れる。
「んっ!?
(無理だ、裁縫糸で密室なんて無理だ。)」
「刑事さん。」
真理絵が天道を呼んだ。
天道は振り向いた。
「私、密室の作り方解っちゃった。」
「何?」
真理絵は、裁縫セット見付けると、糸と針を取り出した。
天道はその様子を、腕を組んで眺めた。
真理絵は、糸を針に通し、被害者のポケットに刺した。
「待て。」
突然、天道が声を出した。
「それじゃ、密室は作れない。」
「ほえ?
どうして?」
天道の言葉に対して真理絵はそう言った。
「鍵、ちゃんと入っていたんだろ?」
「あ、そっか。じゃあ、どうやって?」
「合鍵だ。」
「合鍵?」
「そう、犯人は・・・っ!?
(俺はここへ来てとんでもない勘違いを!?
この部屋って、密室じゃなかったんじゃねえのか!?
思い出せ、俺たちが駆けつけてきた時の事!)」
天道は静かに思い出した。
「(そうか、解ったぞ!)」
天道はにやりと笑った。
「ど、どうしたの?」
「解ったんだよ。
俺たちは犯人にはめられたんだ。」
「どう言う事?」
「それは、直接犯人に聞こう。
聞かせてもらうぜ、小島。」
天道が小島の方を振り向きながら言うと、小島の顔色が急変した。
どうやら化けの皮がはがれたようだ。
「たった今、総てが解った。
銃声が鳴った時、あんたは慌てて駆けつけて来たと言ったが、あれは恐らく嘘だ。」
「お、おいおい、冗談だろ?」
「冗談なんかでは無い。院長を殺したのはお前だ、小島。
お前は、事件当時、院長室に入り、院長に向かって銃を発砲。その後、お前は院長に銃を握らせ、部屋の外へ出る。そして、俺たちが駆けつけて来たのを良いことに、扉を叩いて院長に声を掛けた。
当然、俺たちはそれを見て、密室だと思う。だが、実際はそうではない。鍵が開いていたんだ。」
「密室じゃないって事は良く解った。だが、犯人が拳銃を持っていたら、いくらなんでも気づくだろ。」
「それがそうでも無い。被害者は気づくことができなかったんだ。これがその証拠だ。」
天道は被害者の指貫を見せた。
「小島、つめが甘かったな。
あの時、被害者は裁縫をしていた。気づける筈が無いんだ。」
「待て。確かに、あの時、院長は裁縫をしていた。
だが、犯人でもないあんたが、なぜそれを知っている!?」
「ほぉ、罪を認めるのだな?」
「俺は殺したとは一言も。」
いや、言ったと思うぞ?
「『確かに、あの時、院長は裁縫をしていた。』」
天道は小島が言った事をそのまま言った。
小島は力が抜けたかのようにその場で膝を付いた。
「あいつが、あいつが悪いんだ。俺の妻を殺しやがって。」
「だから、院長を殺した、と?」
「そうだ、俺があいつを殺して何が悪い!?」
[ブン!]
天道は小島を殴った。
「俺も1年前に親父を殺されている・・・。
お前の気持ちは良く解るが、それでお前の奥さんは喜ぶのか?」
「喜ぶと思うぜ。だってよ、自分を殺した犯人を殺してくれたんだ。喜ばない奴が何処にいる。」
「お前よ、今までどんな人生経験をしてきた?
親父が言っていた。
人を殺す者はろくな人生を歩んでいないってな。」
「ふっ、俺はろく人生を歩んできたさ。俺にとって、最高の人生をな!
お前に俺の気持ちが解るかあ!?」
小島は立ち上がると、ナイフを取り出した。
[グサッ!]
小島は自らの胸にナイフを刺した。
「うっ・・・うう・・・うっ!」
小島はその場に倒れ、息を引き取った。
「小島ぁ!?」
天道は叫んで涙した。
誠に勝手ながら、これで完結です。
今までありがとう御座いました。