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真理絵がサイボーグになった経緯

数ヶ月前の大阪。

[キーンコーンカーンコーン]

放課後のチャイムが鳴る。

「起立、気をつけ、礼、着席!」

日直の生徒が元気良く号令をかけた。

「えーと、特に連絡事項は無いんやけど、もうすぐ、待ちに待った夏休みや。

夏休み入ってからは、事件、事故に巻き込まれぬ様、気をつけておくんなはれ。

では、解散!」

先生の話が終わると、生徒が一斉に下校を始めた。

「由香ちゃん、一緒に帰ろう?」

下駄箱前で一人の少女が由香に声を掛けた。

由香は、良いよ、と答えた。

二人は学校を後にすると、ゆっくりと家を目指して歩き出した。

「あ、信号変わっちゃう!?」

由香は、点滅を開始した信号を、急いで渡ろうと、少し離れた所から走り出した。

が、由香が交差点に進入した瞬間、信号の点滅が終わり、赤に変わってしまった。

[プッ、プー!]

「由香ちゃん、危ない!」

少女は叫んだが、時既に遅し。

由香は猛スピードで走ってきたトラックに跳ねられ、数メートルほど吹っ飛んだ。

由香を轢いたトラックは、そのまま行ってしまった。

「由香ちゃん!?」

少女が駆けつけてきた。

「由香ちゃん、しっかりして!」

少女は必死に訴えかけるが、由香は意識を戻さない。

[ピーポーピーポー]

程なくして、救急車が到着し、由香は救急車に乗せられ、病院へ運ばれたが、まもなく息を引き取った。

それを知った東京の博士は、これだ、と思い付き、急いで大阪の病院へ向かい、遺体を引き取るとすぐに引き返した。

そして1年前、東京でも同じ様な事故が起きていた。

和彦が自殺をし、その娘の真理絵が、父の後を追うために、車の前に飛び出して後追い自殺を図ったのだ。

幸い、命だけは助かったが、意識不明の重体で、1年経った今でも生死の境を彷徨っている。

そこで博士は、大阪の病院から引き取った遺体を改造し、自慢の腕でサイボーグに作り変えた。

が、これだけではピクリとも動かないのである。なぜなら、由香本人が死んでいるからである。

では、どうするか?その答えは簡単だ。

博士は、真理絵が入院している病院へ行き、ドクターと交渉をし、由香と瓜二つの真理絵の体を引き取ると、研究室へと連れ帰ったのである。

そして、博士は真理絵の体を意識転送マシーンAに入れ、由香の体をマシーンBに入れた。

これが巧く行けば、真理絵はサイボーグとして復活を遂げるだろう。

[カタカタカタカタ]

博士は、意識転送マシーンに繋がったパソコンのキーボードを叩く。

すると、意識転送マシーンが起動し、真理絵の意識がマシーンBに入っている由香の体へ転送された。

転送が完全に終了すると、マシーンBのフタが開いた。

博士は、由香・・・ではなく、真理絵の体をマシーンBから出し、電源を入れて起動させた。

「ん・・・ん・・・ん。」

真理絵が1年ぶりに目を開けた。

「こ、ここは?」

真理絵が最初に放った言葉はそれだった。

博士は、真理絵に声を掛ける。

「わしの研究室じゃ。」

と。

「は、博士・・・。」

真理絵は博士を見ると、そう呟いた。

「博士、ウチ、どんくらい眠っとった?」

「約1年じゃ。」

「そうなん?

ウチ、さっきトラックに跳ねられて、それから・・・。」

それは由香の記憶である。

と言う事は、博士の生態実験は失敗に終わったのか?

しかしそうでは無かった。博士はこれで成功だと言うのだ。

ゴチャゴチャ言うとる場合やあれへん、要は真理絵と由香の両方の記憶を持っとるっちゅう事や。

確認の為、1年前に何があったのかを、博士は真理絵に聞いた。

真理絵は、父の後を追うために道路に飛び出して後追い自殺をした、と証言した。

これで、博士の生態実験が成功したと言う事が証明された。

博士は、一人喜んで舞い上がった。




なるほど、だから真理絵は、由香と真理絵の二人の記憶を持っているから関西弁をしゃべれたのか。

これでまた一つ謎が解けた。



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