一緒にランチタイム
三井先輩は立ち去った後、購買に行って食料を調達していたらしい。その最中に私が置き忘れてしまったランチ鞄を受け取りに行ってくれた。それを持って私たちの元に戻るとそれらを渡し、近くの教室のドアを開けた。
「ちょっと埃っぽいけどいいよな?」
その言葉に私と葉木ノ先輩は頷いた。そこはめったに使わない会議室だった。
(葉木ノ先輩とランチ~♪)
泣いてたのが嘘のようにテンションが上がる。その姿を見て先輩達がホッとした事に私は気が付かなかった。一緒に食べるのも、食堂に行かず会議室でのランチも私を気遣っての事だった。先程よりは顔がマシになったとは言え、酷い顔。その顔で人の多い場所に行くのは辛いだろうと言う配慮だったらしい。
その優しさに私は後で知る事になる。
奥の席に三井先輩が先に行き、どかっと座った。座った席の前に荷物を広げると葉木ノ先輩はそれに続くようにして三井先輩の隣に座った。
「!」
会議の机は細長い形で三人が座れる形である。真ん中を葉木ノ先輩が座ったので私はその隣に座る事になる。
(どどどど…どうしよう!!! 隣に座ってもイイの?? きゃぁー!)
あまりの嬉しさに鼻血が出そうになる。
「? …座んないの?」
(座りますぅぅぅ!!!)
ドキドキする心臓をなだめつつ、隣に腰をかけた。この瞬間、死んでも悔いはありません!!
(嬉しいけど心臓がもたない!!!)
泣いたり落ち込んだり喜んだりと、今日の私は忙しい。
「頂きます」
葉木ノ先輩は私が座るのを見届けた後、両手を合わせて挨拶をした。その姿を見て、慌てて私も挨拶をする。
「っいただきます!」
今日のランチはいつもの何倍も美味しく感じられる。ふと、葉木ノ先輩の方を見るとクリームパンを食べていた。机の上にはチョコパンと苺サンドロールとココアの缶が乗っかっていた。
(甘いものが好きなのかな…?)
見事に甘いものしかなかった。
「甘いものが好きなんですか?」
私の問いにパンをかじったまま、コクンと、首を上下に動かした。
(かっ…可愛い!!!)
その姿にツボにはまった私。胸がキュンっとした。
「わわっ…私も好きなんですっ。…今の時期は抹茶系が多いですよね。好きですか?」
私の問いに今度は首を軽く左右に振る葉木ノ先輩。
(かっ可愛い!!)
私の問いに首を上下左右に動かす姿は全て私のツボにはまる。
(もっと見たい…)
「そうなんですか?」
「…苦いのが…」
どうやら先輩は苦いのが苦手のよう。
「…じゃぁ、プリントかはどうですか?」
「…ぷっちんなら」
(‘ぷっちん’!! )
葉木ノ先輩の口から‘ぷっちん’と言う可愛らしい単語が出てくるとは思わなかった。‘ぷっちん’とはかの有名なプリンの事。
(悶え死にそう!!!!)
はっきり言います。先輩の全てが可愛い過ぎます!
「…お願いだから…今は甘いモノの話はしないでくれない? 胸焼けしそうになるから…」
私が悶えていると、三井先輩からストップがかかった。三井先輩の目は葉木ノ先輩の山になっている甘い食べ物に目を向けていた。
「…美味しいのに」
葉木ノ先輩の一言に三井先輩がつっこむ。
「っ! そう言う問題じゃねーんだって!! 量だよ量! 視覚だけでご馳走様な状態なの! 聴覚まで刺激をあたえるなよ!」
(きゃぁー…。ごめんなさい)
あまりの可愛さに話を振ったのは私です。思わず反省をする私。
「嗅覚もいる?」
「いらねーよ!」
見事な漫才を繰り広げる先輩達。見た目クールな葉木ノ先輩がボケ担当。見た目チャラオな三井先輩がつっこみ担当。
「ぶっ!ふふふふ!」
あまりにも息が合ったやり取りに噴出した私。我慢しようとしたのだけど、堪えきれなかった。
(可笑しすぎる!!!)
「あはははは!!」
私の笑い顔にきょとんとしていた先輩達は私の顔を見てつられて笑い出した。
その時、葉木ノ先輩も笑った。声は出なかったけど口元が上がった。
「…クス」
「っ!!!」
(破壊力ーー!!!)
昇天しそうです!