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転移者と入れ替わった男の助言を聞く悪役令嬢の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/07/14

 あれは、ワシが20、21歳の時だった。

 山に鬼神が出たのだ。


 若気の至りでワシはたいした事がないと泊まりで山に行ったのだ。


『ハンス、独りじゃ危険だ。すぐに帰って来い』

『な~に、出ても俺がやっつけてやるぜ』


 そしてな。仕事が終わり夜たき火で暖まっていると、ガサガサとな。

 独りの男が藪から出てきたのじゃ。


『あ、たき火だ。暖まらせてくれよ』


 腰には剣を差している。剣士が使うロングソードのようだ。

 見た目は奇妙だ。10代中ぐらいか?


 黒目、黒髪で服はどこでも売っていない。見た事がないが、鮮やかな色彩。高級品にも見えないが安物でもない。


 判断が付かなかったのう。


 ドカッとたき火の前に座った。


 これが鬼神か。薪で頭をぶん殴ってやろうかと思ったが・・・


『あれ、僕を殺そうとしているでしょう?』


 頭の中をのぞかれているようだ。

 ワシは驚愕した。




『日本刀が欲しかったのだけどしょうが無いよね・・・』

 腰の剣に手をかけてベラベラと話し出した。


『僕のスキルは先読みだ。君の行動は分かるよ。そうだね。胸の内ポケットにナイフがあって投げつけようかと思っている。

 戦いに必要なのはクレバーだ。僕はこれからチートでのし上がるんだよね。山を降りたら貴族令嬢が領地に向かっている。道が分かれていて、松の木がある方には盗賊がいるのさ。・・・』



『でさ、その貴族令嬢はサブヒロインのマリーンと言って、僕を信じちゃうんだ。即落ち二コマかな。父親が死にそうで急いで帰るのさ。でも、黒パンを食べさせれば治るよ・・・でも本当のメインヒロインは別にいるんだ』


『そして、王都で献策をして、皆は喜ぶのさ。ギルダー公爵家で大事にされて王女殿下が嫉妬するけど・・・仕方なくハーレムかな。ねえ、そろそろ退屈している?ヒドいな」


 話が終わらないのでワシは話しかけた・・・

『はあ、はあ、何故・・『冒険者を殺したか?だろ?』』


 話を先読みされた。


『だって、奴らは・・・』


 ・・・使えそうにないな。

 ・・・貧弱ね。


【って思ってやがった!】



 死ぬ。と思ったものだ。


 ワシは・・・


『冷静に見せようと思っているでしょう?』


 これも読まれた。

 無意識に薪を火に入れたが・・・



 バチ!バチ!ボア!と音を立てて燃え盛って薪が奴の顔に当たった。


 松ぼっくりを入れてしまったのじゃ。



『あ、熱い!!』


 そのすきにワシは奴の首筋にかみついた。


『ヒィ、こんなのきいてないよ!』


 何とか殺した。その時、奴の血が口の中に入り・・・何か景色が見えてきた。シナリオというものらしい。


『はあ、はあ、はあ、はあ』


 そしてな。何を思ったのか奴の言うシナリオに従って行動をした。

 言った通り貴族令嬢が馬車を走らせていた。


『はあ、はあ、はあ、お嬢様、この先に盗賊が出ます!』

『ヒィ、そうですの?では貴方も乗って下さい』

『お嬢様・・・信じすぎです』

『こんなに必死ですわ・・』



 それで屋敷に入り。領主の病気を言い当てたのだ。


『かっけ・・というものです。黒パンが有効です』


『お嬢様、本当に盗賊がいました』

『まあ、やっぱりハンスさんの言うとおりでしたわ。治療も言う通りしてみましょう』


 すっかり治った領主はワシを信頼して・・


『しばらく客人として逗留下さい』

『はい』


 それからな。奴の話通り事をすすめた。


『コルセットのないドレスです』

『ホロの布をズボンにして下さい。青く塗ると蛇が寄りつきません。ジーンズと言います』

『この地には温泉が出ます。谷間の地を掘って下さい』


 どれも大成功じゃ。



 そしたらな。奴の話に出てきたメインヒロインが都からやってきたのじゃ。



『有名なハンス殿をお迎えしたい』

『エリザベーターです。是非、王都でドレスを流行らせましょう。とても気に入りましたの。これからの女性はファッションを楽しむべきですわ』



 わしはな・・・


『お断りします。私はこの地が好きなのです』


 断った。マリーンはパアと顔が明るくなったのじゃ。ワシはときめいた。


 その後、平民だがマリーンと結婚した。

 その後は、商売は上手く行き。侯爵の爵位をもらうまでになったのじゃ。



「どうかのう。お嬢様、ワシの話、信じられるかのう」





 ・・・・・・・・・・・・・





「一代で侯爵になったハンス・クローゼ様が嘘を言っているとは思えませんわ。消去法で信じます」


「カーカッカッカ!」


 ハンス様は快活にお笑いになった。


 私はウェスター公爵家のカロリーナ。


 一代で侯爵家を興したハンス様のお話を聞いたわ。


 今、王宮の男達は男爵令嬢マリア様に・・・夢中だわ。私の婚約者ファビアン殿下もだ。



 私は嫉妬のあまり思わずマリア様をビンタしてしまった。



「あら、あなた。もう、お話は終わったの?」


 老婦人、奥様が部屋に入ってきたわ。


「マリーン、まだじゃ。表向きは夫婦円満の秘訣じゃ。これから秘策を授けるのじゃ」

「フフフフ、なら私も一緒に」



「はい、お願いしますわ」




 王都に戻った。

 表向きは謹慎だった。夫婦円満と名高いクローゼ侯爵家のご隠居、ハンス様とマリーン様にお話を聞きに行けとの王妃令だった。


 王都ではマリア様が大人気だ。


 彼女は不思議な能力がある。殿下と側近達の行く先に現われ天真爛漫な行動で引きつけた。


 学園祭や祭り。奇抜な催し物をすると思ったら。マヨネーズという調味料を作った。

 このマヨネーズはハンス様のお話では異界の先読みたちの国の調味料らしい。

様々な珍しい料理を考案し王都で大人気だわ。


 王宮に報告に行く。陛下、王妃殿下に謁見をした。


「カロリーナ、マリーン様のお話を聞きましたか?夫に仕える婦人の心得を学びましたか?」

「はい、王妃殿下・・・」


 隣で陛下が眠たそうにしているので、私はハンス様から聞いた献策を述べた。


「陛下、献策をいたします。富国強兵案です・・・」



 まず。金本位制では今の経済の規模にあっておりません。故に偽金問題が起きております。王国債を発行し。それをお金の代わりにするのです。

 中央銀行を作り。流通量を管理します。



 陛下は面食らった顔をした。

 王妃殿下もあきれ顔だ。



「更に、遠交近攻策を・・・・」


 私はハンス様からきいた話をとくとくと述べた。



「・・・もう良い下がれ」

「はい・・・」


 それから社交界では変わり者令嬢と噂をされるようになったわ。


 ハンス様の策は、王都に行ったときのチートだそうだわ。


 社交会では殿下はマリア様をエスコートする。私は1人だ。



「カロリーナ、最近何をしておる。マリアを見習え。女は政治に口を出すな」

「申訳ありません。どうやら・・・前世の記憶が・・・」


 すると、マリア様の顔がハッとなった。


「殿下ぁ、カロリーナ様の言う事は聞かないで下さい!」

「おお、そうだな。今夜はどんな料理を出してくれるのだ」

「殿方が好きな豚丼を考えています」

「ほお、さすが、マリア、女はこうでなければな」



 また、2人の世界に入ったわ。

 すると、先触れがその世界を壊した。


【ザルツ帝国、黒の皇太子と名高いベッケルン様のご登場でございます】


 マリア様はバタバタとベッケルン様に近づき。私は少し腰を下げて礼をする。

 王子は握手を求めに皇太子殿下の前に行く・・。


 だが、王子の手を素通りしマリア様を左手で振り払い私の元へ来た。



「君の策を聞きたい。私はベッケルン・フォン・ザルツだ」

「・・・私はカロリーナ・ウェスターでございます」

「うむ。我が帝国も紙幣に舵取りをするところだ・・・遠交近攻策とは?」

「はい、出兵もお金がかかります。遠征ならなおさらです」

「貴国とは二つ国を挟んでいるが・・・」

「はい、ザルツ帝国と友好関係を・・・結べば我国は安泰でございます。これは希望でございますわ」

「フロン王国を挟み撃ちにできるな・・・道理だ」


何とか皇太子殿下の会話に付いていく。マリア様が口を挟んだわ。



「ちょっと、ゲッペルンは、隠しキャラよ!カロリーナは序盤で消える悪役令嬢じゃない!」

「マリア、どうした!」

「呼び捨てにするな。マリアを下がらせろ!大国だぞ!」



 2人の声が遠ざかった。陛下の命令で近衛騎士に連行されたわ。

 この黒髪の皇子と・・・話していたい自分に気がついた。もう、ファビアン殿下に未練はない。



「殿下、この策は実は私のものではないのです・・・」


 すると、ゲッペルン皇太子殿下は人差し指を一本口の前に立てた。


「・・・人の影響を全く受けていない策などない。問題は、策を共有できるかだ。今度、ゆっくりお聞きしたい」


「はい、ゲッペルン皇太子殿下」

「ゲッペルンと呼んでくれ・・・」

「はい、ゲッペルン様。私はカロリーナで結構ですわ」


 この方とは仲良く出来そうだ。



最後までお読み頂き有難うございました。

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