第二十一話 オーガ達の扱いとリリーナとの模擬戦
リク達はふかふかのソファーに座る。
リクの横にはアナリスとリリ、その隣にサラ。
エルザはアナリスの隣だ。ちょっと顔を膨らませてるけど何でだろう。
シェンナ様は向かいのソファーに座り、その後ろにリリーナが立っていた。
「さて、ここからは領主らしくしよう。カミスの街をオーガから守ってくれて感謝する」
「いえいえ。僕はたまたまオーガ達を従えることができただけです」
「それが、すごいのだと思うのだがな。それにリク君の「ゴミ拾い」のスキルにも興味がある」
シェンナ様は羊皮紙を取り出して、リクの経歴を語りだす。
「辺境の村に生まれて、「ゴミ拾い」というスキルを手にする。村に来た勇者クリスのパーティーに拾われて、カミスの街まで一緒に活動するも追放される。その後、エルフのアナリスと一緒に行動し、急激に強くなる」
シェンナ様の目線が強くなる。僕は息を飲んでその目線に耐える。
「「ゴミ拾い」のスキルが覚醒したのか、それとも使い方がわかっていなかったのかはわからないが……魔物を倒してスキルを得るというのは間違いないだろう」
すごい。一部の情報から僕のスキルについて核心に至る所まで考察している。
リクが答えに詰まっていると隣のアナリスが手を握って、こちらに合図する。
どうやらアナリスが答えてくれるようだ。
「シェンナ様。冒険者には秘密がつきものです」
「ほう、領主である私の前で秘密にするのか?」
「はい」
シェンナ様とアナリスはしばらく見つめ合う。
後ろに立っていたリリーナがリクをにらみながら、苛立った様子で発言する。
「リク! シェンナ様が答えを聞いているのに、交渉をメンバーに任せて黙っているのか」
「申し訳ありません。スキルの内容は明かせません。ですが、シェンナ様の推測はかなり近いとだけ言っておきます」
「ふん! 冒険者ごときが秘密とはな」
その言葉にシェンナ様がリリーナに釘を刺す。
「あら? 私も元冒険者だったのよ? 私の事も軽んじているのかしら」
「い、いえ。そういう訳ではないのです……」
リリーナはシェンナ様の事を慕っているようだが、冒険者の事は嫌いなようだ。
「ならば話を変えよう。リクは魔物であるオーガを従えているがランドルフ王国に反逆するつもりではないな?」
「いえ、そういうつもりはありません。だけど……オーガ達にもし誰かが戦いを仕向けるようなら受けて立ちます」
「フフフ、そこまではっきり物を言うとはな。カミスの街ではオーガに危害を与えるつもりはない。だが他の貴族たちはわからんな」
なるほど。他の貴族たちが僕とオーガ達を襲う可能性はあるってことか。
気を付けないとな。
「気を付けろよ。ランドルフ王国は一枚岩ではない」
「はい。肝に銘じます」
そこまで話した後、シェンナ様がとんでもないことを言い出した。
「私とて元Aランクの冒険者。今は伯爵という身ではあるが……。頼みが二つあってな」
「何でしょう?」
「一つ目はリクと戦ってみたいのだ。二つ目はとある依頼をしたい」
「シェンナ様、なりません!」
リリーナが拒絶反応を起こす。
まあ当然だろう。シェンナ伯爵とオーガを従える冒険者が戦う。
それは許されないことだ。
「むう。ならばリリーナ、お前がリクと戦え」
「それならばいいでしょう。おい、リク。良いな?」
「え? いや流石に騎士様と戦うのは……」
「フフ、遠慮するな。負けても何も言わん。だが私は……いや、今はいい」
シェンナ様は何かを言いかけて、ニヤリと笑って黙った。
こうして、リクとリリーナの模擬戦が決まってしまった。
騎士たちの訓練場に行く途中で、エルザが小声で話しかけてくる。
「リク。リリーナは強いわ。でもシェンナ様はおそらくリクが勝つと思っているわ」
「そんな。流石にDランクの僕がリリーナ様に勝つなんて……」
「やってみないとわからないわよ」
「リク、あのリリーナって騎士ムカつくわ。けちょんけちょんにしなさい」
「俺もご主人様をなめてるのはムカつくぜ」
「私もなんか嫌だわ。リク、負けないでね」
エルザ、アナリス、リリ、サラの順番に発言する。
どうやら皆はリリーナの態度にムカついているようだ。
僕も冒険者の事を馬鹿にしてるのは腹立つ。
負けない様にしよう。
訓練場で他の騎士たちが周りで見つめる中、リクは木製の棍棒、リリーナは大剣を使うようだ。
「お互い、命に関わる攻撃は無しだ。審判は領主である私が行う」
「ふん。オーガを従えるとはいえ、本人はどこまで強いかわからん」
「……勝ちます」
おお。カミスの街の英雄リクだぞ。
ふん。所詮Dランクの冒険者だ。リリーナ様には勝てん。
いや、佇まいは中々強そうだ。これは見物になるぞ。
周囲の騎士がざわめく中、
リリーナとリクは武器を構える。
「はじめ!」
リリーナは木製の大剣を下手に構えながら、スキル俊敏を使って距離をつめてくる。
俊敏(中)くらいはありそうだ。おそらく剣術(大)も持っているだろう。
木製の大剣に光る刃がついている。
「棒術(大)からの重撃(大)!」
リクはあえて鎧術(大)を掛けずに大剣の振り上げを上段から叩き潰す。
ダァン!
リリーナとリクの木製の武器がぶつかり合う。
空気が割れ、衝撃波が周りに伝わるほどだった。
リリーナは腕がしびれて、少し驚いた顔をする。
リクは重たい一撃を大剣でそらされて、驚く。
「なるほど、力だけは一人前のようだな」
「リリーナさんこそやりますね」
リリーナは身体強化(中)を掛け、闘気(大)も掛けて、さらに早さを増した動きから大剣のリーチを活かした攻撃をしていく。
リクは鎧術(大)を発動し、速さではかなわないので、最小限で大剣の動きを抑えながら身体強化(大)と闘気(中)で対抗していく。
「くう! 硬い!」
リリーナは段々と自分の大剣の動きを抑制されているように感じていた。
リクはそれほど対人戦の経験はないようだが、力で押せないので大剣を当てても逸らされて、リリーナが体力を消耗するだけだった。
「ここまでやるとはな! だが最後は私が勝つ」
リリーナは剣術(大)から光の刃を溜めて横一線に打ち出す。
そして、その動きと共にリクへ距離をつめて、足元を狙う。
リクは即座に棒術(大)から光の刃に対抗して衝撃波を放つ。
威圧は打たない。けど……冒険者を馬鹿にさせない!
リリーナが必殺の突きを放つ。
「取った! 私の勝ちだ!」
だがそれを嘲笑うかのように爪先半回転をして躱すリク。
「動きが遅いと思ったら大間違いだよ!」
リクは躱した勢いで回転切りを見舞った。
回転切りはリリーナの木製の大剣をへし折り、訓練場の壁までリリーナを吹き飛ばす。
「勝負あり! この勝負、リクの勝ちだ!」
訓練場は歓声とざわめきに包まれる。
リリーナ様を下すなんて!
カミスの街の英雄リクか……悔しいが強いな。
訓練場に控えていた回復魔法を使える魔法使いがリリーナの方にかけていく。
「リク、流石ね!」
「ご主人様、回転切りは痺れるぜ!」
「私、リクのパーティーに入れてよかったわ」
「あらあら、流石リクね。やっぱり私も……」
四人がリクをほめる。
暫くして治療されたリリーナが体を起こそうとしていた。
リクはリリーナに近寄り、手を出す。
「リクか……済まない。冒険者だと侮って無様に負けた」
「いえ、リリーナさんも本当に強かったです」
「どうだ? リリーナ? 冒険者にも骨のあるものは居ると知ったのではないか?」
「はい。リクはカミスの街の英雄であり、いずれAランクにもなるでしょう」
「ふむふむ。そうだな。リク、婚約者は要らないか? 私はリクの悩みを全部受け止めてやるぞ?」
シェンナ様がとんでもないことを言い出すので周りの女性たちが慌てる。
「しぇ、シェンナ様にはリクはあげません!」
「俺の番にリクはなるんだぞ!」
「あら。冒険者ギルド長の私がもらってあげる」
「わ、私もリクのお嫁さんになりたい……」
リクはいつも通り、リリーナが止めに入ってくれるだろうと思っていたのだが。
何故か、少し金髪のショートヘア―を触りながらもじもじとしていた。
「わ、私も……」
「え?」
リリーナは自分より強い男と結婚したいと言っていた。そして模擬戦とはいえ、身長の低いリクに力負けしてわからされてしまったので女心に火が付いたのだった。
な、なんでこうなるの~⁉
リクは女誑かしとスキルを与えた神様に心の中で文句を言うのであった。
小説をいつも読んで頂きありがとうございます。面白かった、また読みたいという方は高評価やブックマークをお願いします。作者の励みになります\( 'ω')/
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を★★★★★にしてくださると作者が大変喜んで更新頻度が増えるかもしれません。よろしくお願いします。




