第二十話 カミスの街の英雄リク
リクはカミスの街の英雄となり、三日三晩お酒を飲まされて、ふらふらになっていた。
「あらあら。リクもっとお姉さんに甘えていいのよ?」
「僕、もう飲めないよ。てかなんで膝枕……?」
冒険者ギルド長のエルザに膝枕されて、よしよしされる。
その隣では嫉妬したアナリスがリクをエルザから引きはがそうとしている。
リリは意外と酒が強く、ロイヤルオーガキングのガロウとエールを飲み明かしている。
「それにしても、オーガを街に入れるなんて、領主様や冒険者たちはどう思っているんだぜ?」
「己はオーガの新たな王、リクに従うのみ。それを領主やエルザに態度で示した結果だろう」
勿論、冒険者やオーガは街の外では戦う関係だ。
だが、リクは反対する者たちに対して、こう言ったのだ。
「僕の民たちに喧嘩を売るなら僕が買うよ?」
勇者クリスとの戦いと城壁の外での威圧を見ていた者たちは震えあがって、何も言い返せなかった。
領主の館の関係者も主に報告するために帰っていき、オーガを受け入れると認めたのだ。
勿論、オーガが危害を加えれば、その許可は取り消される。
オーガは自衛は認められている。
冒険者ギルド長、エルザはリクの顔にほおずりしながらこう言う。
「カミスの街の英雄になったのだから、ここの領主様にも呼ばれると思うわ」
「そうね。オーガを従える者なんて前代未聞の二つ名もついてるし」
エルザに応えるのは元勇者パーティーの魔法使いサラ。
リクに寄ってくる女冒険者の間に立ち、甲斐甲斐しく世話をしていた。
「リクってあんなに強かったなんて知らなかったわ。何かリクの近くにいると体の奥がうずくのよね……♡」
「フフフ、それは私もよ。リクが追放されて、こないだEランクダンジョンから帰ってきたときから私の女の勘がビンビンに反応してるの♡」
ぼやーとしているリクを見つめながらエルザとサラは怪しい会話をしている。
それに反応するアナリスとリリ。
「リクは私たちのパーティーのリーダーだから渡しません!」
「俺はご主人様と一緒に入れればそれでいいんだぜ」
アナリスはリクを独占したいようだ。
そこにオーガ族と酒を飲み交わしていたマーシャが寄ってくる。
「ねえ、リク? サラはパーティーに入れてあげないの?」
リクはエルザの膝枕に癒されながらも悩んでいた。
そうしていると、サラがリクを抱っこして後ろから抱きしめる。
「リク、追放されたときに、何も言えなくてごめんなさい。私は怖かった。リクの追放に反対して、自分も追放されるのが……」
「うん」
「でもね、気づいたの。あのパーティーが順調に攻略できていたのは全部、雑用係だったリクのお陰だって」
「……」
サラはリクを強く抱きしめて、涙を流しながら、耳元で囁く。
「今更都合がいいのはわかってるわ。でもどうか見極める時間を与えてほしいの」
「リク……」
「ご主人様の判断に任せるぜ」
リクは葛藤する。あの勇者パーティーの中でサラだけは雑用を手伝ってくれた。
勇者クリスの蛮行からも守ってくれた。
それに……サラが勇者クリスに斬られそうになった時に気づいたんだ。
サラの事も大事に思ってるって。
「サラ、大丈夫。僕の事をずっと庇ってくれてたし、守ろうとしてくれた。だからもしよければ、僕達のパーティーに入ってくれない?」
「リク……うん! パーティーに入る! 本当にありがとう! 大好き!」
サラはリクを強く抱きしめる。
「あらあら、お姉さんも冒険者ギルド長をやめて、リクのパーティーに入ろうかしら?」
「ダメよ! エルザはダメ!」
アナリスがキーッとエルザを威嚇する。
周りの女冒険者はリクを魅惑の目で見て、男冒険者たちは悔しがる中、リク達は盛り上がるのであった。
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「で? なんで、僕達は領主の館に向かってるの?」
「当たり前でしょ? リクがしたことを考えてみてよ」
「ご主人様はオーガの群れを止めたうえで従えてるんだぜ。領主様から褒賞がもらえるかもしれないぜ」
「私も勇者パーティーだったから慣れてはいるけどね。リクはそういう時も呼ばれてなかったら仕方ないわ」
「フフフ、そうよ。幸い、ここの領主様は冒険者上がりで固い人ではないわ。それに元Aランクの実力者よ」
リクは迎えの質実剛健な見た目の馬車に乗りながら遠い目をしていた。
まるで戦場に建てられた砦の様な見た目の領主の館だ。
門番の衛兵たちは馬車の中を改めてから許可を出す。
「いらっしゃいませ。リク様一行ですね?」
「そうだわ。シェンナ様のところに案内してくれる?」
「かしこまりました」
シェンナ様? ってことは領主様は女性の方かな。
領主様の部屋の前には鋭い眼光の女性の騎士がいた。
「お前がリクか」
「は、はい」
「シェンナ様に手を出したら殺す」
「は、はひ」
女騎士さんはめっちゃ殺気を放ってきた。
あれ? 成長した僕でも怖いってことはこの人かなり強いかもしれない。
「お名前を聞いてもいいですか?」
「私の名前? 知らない者がこの街にいるとはな」
「あら、リク、この騎士様はランドルフ王国でも武に秀でた有名な人よ」
そうだったんだ。尚更名前を知りたいな。
「リリーナ・オルエンターナだ」
「え? 蝶華優閃のマキさんと一緒の姓ですね」
「マキは私の妹だ。私と一緒に騎士になればいいものを冒険者になるとはな」
マキさんのお姉さんなのか。何かでも色々とありそうだな。
立ち話はこれくらいにして、領主様のシェンナ様の部屋に入ることになった。
リリーナがノックをすると、入りたまえと声がかかる。
リクが先頭になって部屋に入ると、柑橘系の香りと女性特有の柔らかくていい香りがしたと思ったら……。
「フフフ。君がカミスの街の英雄、リク君か」
あれ、気配もなく、とても大きな胸に抱きしめられてるんですけど⁉
後ろの女性陣の雰囲気がめちゃくちゃ怖い!
リクはどうにか背中に回した手をタップする。
「シェンナ様! 冒険者にいきなり抱き着いてどうするんですか!」
リリーナ様の殺気がビンビン突き刺さってるよ!
「悪い悪い。私も椅子に座って待っているつもりだったんだが、何故かリク君を見つけた瞬間、感激が止まらなくてね」
僕はやっと大きなふくらみから脱出し、シェンナ様を見る。
シェンナ様は銀髪でボン、キュッ、ボンでとても胸の大きい包容力のある女性だった。
視線は優しいが、どこか探るような目線もある。
立ち振る舞いは武人のような形で腰に差したサーベルはとても切れ味がよさそうだ。
「シェンナ・フォン・ヴェルディだ。よろしく頼むよ。リク君とそのパーティーのみんな」
次話、シェンナ・フォン・ヴェルディ様とオーガ達についての話し合い。
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