第6話 みんなで海へ②
フレジエ王国内は、特別な理由がない限り攻撃魔法の使用は禁止されていた。
飛行魔法などの補助魔法や、回復魔法などは使用が許可されていた。
海に遊びに行く日の朝、寮の前に銀のフォーク型の長杖を持って、体操着姿で立つ一年生たち。
その中に一人だけ、自転車にまたがる者がいた。
名をランセ・ヴァレリアンヌ。世界最強の魔女の孫だった。
「まじめに飛行魔法の練習しないからこんな事になるのよ」
「っていうかお前なんで飛べねーんだよ。逆におかしいだろ」
ピノとエレルが責める。
「そうは言ってもしょうがないじゃない、ねーランセさん」
ディタが甘やかす。
「誰か、ランセと一緒に自転車で行ってやったら?」
と、ズコットが言うと、
「私まだ飛行が安定しないから、自転車で行くことにする」
ビートがそれに答えた。
友人たちのことばを聞き終わると、自転車の魔女が声を発した。
「じゃあ、しゅっぱーつ!」
みんなで海に行ける。そのワクワク感で胸がいっぱいだったので、そのほかのことは気にしていなかった。
「えー、まあいいや、ビート、ランセを甘やかさないでよ」
「じゃあ、俺ら先に行って場所取りしとくから」
「クリスタリーゼさん、ランセさんをお願いねー」
「じゃあ海で!」
ビーチバレーのコートは4人以上居ないと借りられなかった。
4人はコートを抑えるため飛行魔法で先に出発した。
「またあとでねー!」
手をふる自転車の魔女だった。
ビートが魔法の杖を置いて、自転車で戻ってきた。
「じゃあ改めて、しゅっぱーつ!」
「おー」
出発進行した。
◇
くっきりはっきり晴れた青空のもと、いちご畑に囲まれた道をすすむ自転車の魔女ふたり。
馬車のために整備されたその道は、学園から海へとつながっていた。
日差しの暖かさと、すっきりとした少し強い風が気分を高揚させた。
チリンチリン!
無駄にベルを鳴らすランセ。
「ちょっとランセちゃん、意味もなく鳴らしたらダメだって」
「えへへー」
チリンチリン!
(こいつ聞いちゃいねー)
と思うも、誰もいないし楽しそうだからまあいいか、とビートが一人納得していると、海が見えてきた。
「わー海だー」
思わず声をもらすビート。
「うおー待ちきれないから、急ぐよビートちゃん!」
「うん」
言葉とは裏腹にゆっくりしたペースですすむふたりだった。
◇
ざぶーん!
砂浜の近くには、様々なスイーツの形を模した食べ物屋や飲み物屋、海向けの服を扱う洋服屋が並んでいる。
海に着いたふたりは、先に着いているはずの仲間を探す。
「あれー? どこだろう」
「いないねー」
ビーチバレーのネットがあるゾーンで待ち合わせの予定だった。
「こっちこっちー!」
ズコットが手を振っていた。
「いやー、端っこしか空いてなくてさ」
一番端のコートにはピノとエレル、ディタが待っていた。
「みんなー!」
「あ、ランセ、ビート」
「おー、おせーぞー!」
「待ってましたわー」
みんなと合流した。
◇
2対2でビーチバレーをする事にした。
チーム分けジャンケンで、チームに分かれる。
『パー』 チームは、ズコットとディタ。
『チョキ』 チームは、ピノとビート。
『グー』 チームは、ランセとエレル。
みんなでお金を出し合って、美味しいケーキをふたつ買っていた。
優勝チームの景品だった。
くじで対戦相手を決めて、一発勝負のトーナメント戦をする事になった。
第一試合 ズコット&ディタ VS ピノ&ビート
「ケーキは私たちがいただく」
「右に同じ」
ズコットとディタが腕組みしながら言った。
「いやいや、ケーキは渡さないよ」
「絶対勝つ」
ピノとビートが迎え撃つ。
どっちが先にサーブを打つかコイントスをしていると、
「ピー!」
突然、審判のランセが笛を吹いた。
全員が困惑した。
「今の、なんの笛?」
ピノが聞くと、
「え? 吹きたかったの」
ランセが答える。
「吹きたかったならしょうがないね」
ビートが甘やかす。
「こらそこ、甘やかさないの。意味のない笛を吹かれたら困るから、審判の交代を要求します!」
ピノの訴えを受けて、エレルがランセと交代した。
「審判やりたかったのになー」
落ち込むランセ。
「お前は笛吹きたいだけだろ。審判はちゃんとやんないとダメなんだぞ」
エレルが言いながらボールをビートに渡した。
第一試合が始まった。
◇
ビートのサーブからスタート。
オーバーハンドで打たれたボールが、ネットを超えて反対側のコートに落ちて行く。
それをズコットがレシーブし、ディタがトスを上げた。
トスに合わせてズコットが飛んだ。
全身のバネを使って思いっきり振り抜いた。
ドンッ!
っと大きな音がして、ピノとビートの間をボールが勢いよく通り抜け、バウンドした。
ズコットのアタックが決まった。
とんでもないスピードと威力にピノもビートも動けなかった。
「何よあれ……」
「うそでしょ……」
冷や汗を流すふたり。
「ズコットちゃんすごーい!」
「あれ、人に向けて打っていいやつなの?」
興奮するランセと、冷静なエレル。
——2本目
「気を取り直していくよ」
「うん」
気合いを入れ直すピノとビート。




