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第29話 推し問答



 キースがプテテ・リスを追いかけていた頃、体育館ではユズが一人で練習していた。


「ふん! ふん! ふん!」


 リズミカルに木剣を何度も上げ下ろしする。

 すると誰かが体育館に入ってきた。


「おーい、ユズ」


 ユズが振り返ると、バニラ・フルッティとその友達4人が立っていた。


「あ、バニラ、みんなも」


 それぞれ木剣を倉庫から出した。


「どんな練習してるの?」


 バニラが聞いた。


「うん、木剣を振りながら体幹を鍛える? みたいな練習」

「体幹……?」

「筋肉鍛えるとかじゃないんだ」

「不思議な練習だねー」

「私はとりあえず、一回藁に斬り込んでみようかな」

「あ、じゃあ私も一」


 それぞれ好き勝手に練習を始めた。


「私も、レモちゃんに言われたことをやってみてるけど、ちゃんと出来てるか分からないんだよね」

「やはりプロがいないと、私達だけじゃ分からないねー」


 ユズとバニラが、体育館の入り口を見ながら言った。




 翌日。


「おはよー、レモちゃん、プテテ・リス見つかった?」


 ユズは学園の廊下を歩くキースに後ろから声をかけた。


「あ、おはよう。うん、無事見つかったよ」


 キースは振り返り、笑顔で答えた。


「あ、レモネーシアさんおはよう。プテテ・リス見つかった?」


 前から歩いてきたバニラが聞くと、


「見つかったってさー」


 バニラの問いかけに、笑顔のユズが答えた。


「見つかっただけじゃないのよ」

「そうそう、めっちゃ懐いてたんだから」


 背後から現れたビスキュイ姉妹が自慢げに言った。


「へー、臆病なプテテ・リスが懐くなんてすごいねー」


 驚くユズに、


「本当、そうなのよ、びっくりしたわ」

「私たちをびっくりさせるなんて、大したものよ」


なぜか誇らしげなビスキュイ姉妹。


「今日から私たちも練習に参加するから」


 ビスキュイ姉妹の姉のペッシュが言った。


「う、うん、ありがとう」


 キースがやや勢いに押されながら答えた。


「良かったね。レモネーシアさん。今日からみんなも来てくれるはずだよ」

「ありがとう、フルッティさん」


 キースが嬉しそうに答えた。





 放課後。

 教壇の前に立つユズ、バニラ、ビスキュイ姉妹、キース。


「っというわけで、今日からみんなで練習に参加しましょう」


 まとめ役のバニラが言うと、


「しょうがない、やるかー」

「誰が一番早くできるか勝負しない? ケーキを賭けて」

「よーし、乗った!」

「ケーキじゃなくてアイスがいい」


やいのやいの言うクラスメイトたち。


「いや、でも私たち全員ができるとは思わないでよ。頑張るけども、あんな高度な技できるかどうかは別の話」


 冷静なクラスメイトが言った。

 何人かが「うんうん」とうなずいた。


「うん、わかってる」


 キースが答えた。

 すると、ずっと黙っていた銀の苺の魔女、マルシュ・オウレドが言葉を発した。


「みんな、ちょっと聞いて!」


 マルシュの声に何事かと驚くクラスメイトたち。

 マルシュは俯いたあと顔を上げた。


「実は私、校長室で先生たちが話してるのを聞いちゃって……。私たちが藁斬りできないと、この学校なくなっちゃうかもしれないんだって!」


 クラス全員、その言葉の意味を理解できなかった。


「えーっと、どういうこと?」


 バニラが困惑した表情で聞いた。





「へー、それでなんでこの学園を潰そうとしてるの?」


 バニラがマルシュに聞いた。


「それはわからないけど……」


 マルシュは俯き黙ってしまった。


「魔女が怖いんじゃない?」


 ユズが言った。

 その言葉にビスキュイ姉妹が反応する。


「聖騎士が? 魔女を怖がってる?」

「いやーそれはないでしょ」


 姉妹の言葉にユズが反論する。


「魔女は新しい魔法が作れるんだよ。これは聖騎士にはできないことなんだって」


 キースがうなずいた。


「へー、そんなの初めて聞いた」


 バニラが、半信半疑な表情を浮かべた。


「500年ぐらい新しい魔法は発明されてないみたい、だから忘れられてるのかも。新しい魔法は聖騎士にも無効化できないんだって」


 困惑するバニラに、キースが説明を付け足した。


「マジか」

「すげーじゃん魔女」

「なんかやる気出てきたかも」

「でも、500年発明されてないんじゃ厳しくない?」


 それぞれ言葉を発するクラスメイトたち。


「っていうかどこ情報よ」

「レモちゃんのお母さん情報。レモちゃんのお母さん聖騎士みたいだから憑性あるんじゃない?」

「うーむ、どうなんだろう」

「うちのおばあちゃんも、そんなこと言ってたわ。本当だったんだ」

「私も聞いたことある」


 にわかにじがたいが、証言が集まり出し、次第に色めき立つクラスメイトたち。


「とにかく、理由はわからないけど藁を斬らなきゃなんないってことでしょ?」

「まじ責任重大じゃん」

「できなかったらどうしよう」

「っていうか聖騎士マジでなんなの? 嫌いになったかも」

「ねー、ホント」


 聖騎士に対抗心を燃やすクラスメイトたち。


「三年は藁斬り全員成功してて、先生たちと姫様は一年生につきっきりで教えるみたいだから、私たちは私たちで頑張らないとだめみたい」


 マルシュが続ける。


「っていうか、なんで今まで黙ってたの?」

「盗み聞きしたのバレたらまずいかと思って……、ごめん」


 あやまるマルシュに、


「いいよ、よく言ってくれた。っていうか先生たちも言ってくれればいいのに」


ユズが答えた。


「先生たちもてんやわんやなんだよきっと」


 バニラが言った。


「まあいいよ、やってやろうじゃん! 今から練習行こう! 聖騎士に一泡ふかすぞー!」


 ユズが拳を上げた。


「「「おー!」」」


 みんなが声を合わせた。

 そんなクラスメイトたちを尻目に、銀の苺の魔女のロザリエが言った。


「私はまだ許しちゃいないよ」





 まだキースを許していないと言い放ったロザリエに対して、ユズが言った。


「もういいじゃん、条件はクリアしたんだし。それに学園がなくなるかもしれないんだよ?」


 皆がロザリエを見た。


「一つ答えてほしいの。それに答えてくれたら許すわ」


 キースに問いかけるロザリエ。


「わかった。なんでも答えるよ」


 キースが返す。誰かの息を飲む音が聞こえた気がした。


「実は、前から気になってたんだけど、あんたのカバンについてるぬいぐるみ、『花冠のミルフィーユ』の『皇帝』よね。好きって事でしょ? 理由を教えて」


 意外な問いかけに驚くキース。だが、


「皇帝、抜けてるところあって可愛いと思う。そういうところが好きなの」


思ったことを口にする。


「皇帝ってストーカー気質でやばいと思うけど」

「確かに、ちょっと趣味悪いんじゃない?」

「えー、あたし皇帝結構好きだけどなー」


 クラスメイトたちが口々に言う。


「はあー、どう考えても白騎士でしょ可愛いのは」


 ロザリエが大きなため息を吐いた。


「白騎士は賢しいところが嫌い、皇帝は単純ばかで可愛い」


 キースが言い返す。


「はあ? 完璧な白騎士がたまに天然振りを発揮するところがいいんじゃないの。あんたとは本当に趣味が合わないわ」


「確かに白騎士の天然は尊いけど、私は黒王子推しなんだよな」

「私は執事くんが好き」

「私は、でもやっぱり皇帝かなー」


「みんな聞いて、私、それ読んだことないんだけど」

「明日本持ってきてあげるから、涙ふきな」


「キースちゃん皇帝推しだったんだ。以外ねー」

「レモネーシアさん、案外ベタね」

「レモちゃん見損なったよ。私の白騎士を貶すとは」

「私たちは、動物以外興味ないから」

「そうそう、哺乳類こそ正義」


 よくわからない雰囲気に包まれる教室。


「まー、よくわかんないけど、とにかく練習だー!」

「「「おー!」」」


 ロザリエも含めて全員が言った。




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