第27話 魔女裁判
翌日の放課後、二年生の教室。
ユズは教壇の前に立った。
「みんなちょっと聞いて。レモネーシアさんを許してあげて、この通り」
頭を下げる。
ざわつく教室。
「ちょっと、なにやってんの」
キースが慌てて止める。
(ほら、レモちゃんも頭下げて)
(え?)
(いいから)
ユズの謎の勢いに押され、一緒に頭を下げる。
「みんな、ごめん。今までのことを許してほしい」
頭を下げながらキースは言った。
そんな二人の前にロザリエが立った。
「そんな事したって、誰も許しやしないよ」
腕を組みながら言った。
「そこをなんとか」
ユズが食い下がる。
「なんとかって言われても、無理なものは無理よ」
ロザリエは肩をすくめて横を向く。
「許してくれるなら、なんでもする」
ユズが自分のために頑張ってくれているので、キースも勢い余って言った。
「なんでもするって、本気で言ってるの?」
「うん」
キースはうなずいた。
その言葉を受けて、ロザリエは少しの間考えた。
「じゃあ一人ずつ好きなだけ、思い切りビンタでもさせて貰おうか」
「ちょっと、それは酷すぎ——」
ユズがロザリエを止めようとするのを、キースが待ったをかけた。
「いや、それで許してくれるなら、いいよ、思う存分やって」
その言葉にクラスが静まり返る。
ロザリエは、クラスメイトたちを振り返った。
「どうする?みんな」
「どうするって言われても、暴力的なのはちょっと……」
「許すのは考えてもいいけど、そこまでやらなくても、ねえ?」
「なんか手伝ってもらうとかどう?」
「なんかあるかなー」
キースの覚悟を決めた言葉を聞いて、すでに許す流れのクラスメイトたち。
「私、野菜の収穫手伝ってほしい!」
「園芸部、収穫のシーズンなんだっけ?」
「もうそれでいいか、他になんかある人いる?」
「私はまだ用してないんだから、ちょっと考えさせて」
「3週間後にまた暴君化しても嫌だしね」
「私は代わりに宿題やってほしい!」
「それは自分でやりな」
やいのやいの言った結果。
「じゃあ、園芸部の私の収穫の手伝いと、いなくなったプテテ・リスの捕獲、この二つをやってくれる?」
なぜかまとめ役ポジションに収まった、自称「栽培系魔女」のバニラ・フルッティが言った。
「わかった、やってみる。皆チャンスをくれてありがとう」
頭を下げるキース。
「よかったね。レモちゃん」
ユズが嬉しそうに言った。
◇
先ほどのクラス会議を受け、キースは早速、園芸部の畑に来ていた。
運動部とは違って人気がないようで、部員はバニラー人だけだった。
「それ違うよレモネーシアさん!」
「え? ごめん」
収穫作業中、根菜と間違えて石をカゴに入れ、キースはバニラに怒られた。
「もー、レモネーシアさん、勉強も魔法もすごいのに、野菜はてんでダメだねー」
「面目ない」
眉根を下げ、しょんぼりするキース。
そんなしょげた顔を、まじまじと見てバニラが言った。
「ふふ、そんな顔するんだね。前はもっと怖い感じの雰囲気だったのに」
「え? うん、変かな」
「ううん、変じゃない、親みやすくていいよ」
「そうなんだ、ならよかった」
ふたり並んで畑を小さいスコップで掘りながら、根菜を収穫していく。
「レモネーシアさん、その変わりようは、何か心境の変化があったからなの?」
「変わった、かな?」
「うん、なんか壁がなくなったというか、スッキリした顔もしてるし」
「そう? でもまあ、ずっと喧嘩してた母親と仲直りできたから、かも?」
「へー、そうなんだ、よかったね。『ずっと』ってどのくらい喧嘩してたの?」
「うん、2年ぐらい」
「ええ!? 2年も! それはよかったよ本当に一」
「う、うん。ありがとう」
バニラの驚きように、びっくりするキース。
「私の家、お父さんと二人暮らしなの。で、うちもしょっちゅう喧嘩するんだ」
バニラは土を掘りながら話した。
「でも、いつも夜遅くまで働いて、授業料だって高いのに魔法学園にも通わせてくれてるから、感謝してるんだけどね」
キースの方を見て笑うバニラ。
「いいお父さんだね」
キースも笑顔を返した。
それぞれの家にそれぞれの事情がある。
みんな色々な悩みを抱えて生きていて、自分と変わらないんだなとキースは思っていた。
「あ、これすごい。ねえねえフルッティさん、これ見て」
「ん?」
セクシーな形をした根菜を見せるキース。
「もー、しょうもない物見せなくていいから!」
「ご、ごめんっ!」
そんなこんなで、収穫作業は終わった。
◇
私はペッシュ。
私はメルバ。
私たち、双子のビシュキュイ姉妹。
キースが急に素直に謝りだして、クラスの子達は簡単に許そうとしてる。
でも私たちは騙されない、落第がなくなればまた元の暴君に戻るに決まってる。
お人好しのクラスメイトたちの目を覚まさせるためにも、プテテ・リスの捜索で化けの皮を剥いでやろうと思ってる。
プテテ・リスは臆病で邪気に敏感な生き物だ。
騙したり、悪意ある嘘をついたりする人には懐かない。
首輪に魔石が埋め込んであって、どこに居るかはおおよそわかっているので、見つけるのは簡単だ。
捕獲した後、懐かない様を見せれば、クラスメイトたちもきっと目を覚ますだろう。
では、いざ出陣だ。




