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第21話 二年生①



 夏休みが明けて3日目、ニ年生の剣術の授業が始まった。


 姫に藁束に斬り込むよう言われ、ほぼ全ての生徒が挑戦したが、今までのところ切断できたものはいなかった。

 最後にディタの姉、キースが呼ばれた。


「キース・レモネーシア、前へ」

「はい」


「よーし、お主が最後じゃ、この藁束を斬ってみろ」

「はい」


(こんな藁束ごとき私にかかれば)


 模造刀を上段に構えるキース。

 呼吸を整えると、力を抜き、体ごと落下するように斬り込んだ。


ザンッ!


……どさ。


 藁束が斜めに切断された。


「え、すご……」

「うそでしょ」


 クラスメイトたちの声が聞こえる。


(ふん、この程度できて当然。私を低レベルなお前たちと一緒にするな)


 考えが表情に出ていた。


「ふむ、お主はなかなかやるようじゃな。では、お主が他の者に今の技を教えろ。3週間で全員藁束を斬れねば、お主は落第させる」


「えっ!?」

「!?」


 あっけにられるキースとクラスメイトたち。


「ちょっと姫さま、流石にそれは承服できませんよ」


 二年の担任のプラリネが言った。


「もう決めたんじゃ、くつがえらん。それからプラリネ、お前や他の教員は手をかすことは許さん」


 今日の授業はここまで、と、体育館を後にする姫。

 その後ろ姿を見ながらプラリネは思った。


(校長に丸投げしよ)


 自分の中では問題が解決したので、プラリネはすっきりした笑みを浮かべた。


 体育館を後にした姫は、職員室に戻る途中キースのことを思いだしていた。


(あの娘、あのプライドの高さ、昔のわらわにそっくりじゃ。これをどう乗り切るのかのう、楽しみ楽しみ)


 姫は、美しい人形のような顔にそぐわない大きな口で笑った。





 姫の授業後、二年生の教室。


「ねえ、どうする?」

「どうするったって、3週間であんなことできるようにならないでしょ」

「だいたい、キースのやつ嫌いだったからいい気味よ」


 イスや机の上に座りながら、今後について作戦会議する二年生たち。


「ねえ、ロザリエあんたはどうするつもり?」


ロザリエ・タリアグラスは、銀の苺のブローチを付けた黒髪のロングヘアの長身の少女。


「どうもしない。怒ると何するかわからないから言うこと聞いてただけで、いなくなるならそれに越したことはないよ」

「ひどいこと言うねー、まあ自業自得だけど」


 キースはクラスメイトに嫌われていた。


 成績はクラス1位であり、家柄も良かったのでみんな彼女に気後れしていて、対等な友達はいなかった。

 また、キースは家庭内のストレスをクラスメイトに向けていたので、クラスメイトたちは彼女を恐れていた。


 そのキースが落第するかどうかは自分たちの匙加減一つという状況になった。

 今までの報いか、キースのクラスメイトたちは彼女に協力しないことを選んだ。





 キースは校長室へと急いでいた。


(あんなものは無効だ。校長に言えばあんな条件はすぐに取り消されるはずだ)


 校長室をノックした。


「キース・レモネーシアです。姫の授業の件でお話したいことがあります」


 中の人物から入室許可が降りた。


「失礼します……!?」


 校長室のドアを開けると、校長とプラリネ、そして姫がいた。


「ちょうど良かった。今お主の話をしていたところじゃ」





「っというわけで、校長、先の件よいな?」

「わかりました。そういたしましょう」


「え、ちょ——」

「ちょっと校長、レモネーシアー人を落第させる条件なんてあんまりではないですか?」


 キースが何か言おうとするより先にプラリネが言った。


「藁斬りは中等科で習う内容です。それを初等科でやるなんて、いくらなんでも無茶です」

「ここの3年生は豊作じゃな。あやつらはみな切りおったぞ。それに聖騎士学院の学生は初等科の一年でもみな成功させておったが?」


 キースの眉が一瞬動いた。


 プラリネは校長ならいい感じに落とし所を見つけてくれると思っていたが、姫に同調するばかりなので思わず反論した。


「聖騎士学院と比べないでください。ここは魔法学園です!」

「プラリネ先生、姫さまにも考えがあってのことなのです」


 場を納めようとする校長。


「考えがあるとかそういう問題ではないでしょう!」

「……」


 納得いかないプラリネと、黙り込むキース。


「レモネーシア、どうしても嫌ならこの条件取り下げてもいいが、聖騎士どもに言いふらすぞ」


 イタズラな笑みを浮かべた姫の言葉に、キースは口を注ぐんだまま固まった。


「ちょっと!いい加減に——」


プラリネが怒るのを校長が止めた。


 キースは呼吸を整える様に大きく息を吐くと、姫を見て言った。









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