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第19話 ラクリマ先生



 夏休みが終わった。


 生徒たちは全学年が校庭に集められた。


「えー、みなさん夏休みは楽しめましたか? それぞれに様々な思い出ができたことと思います——」


 全体朝礼での校長の話が続く。


 ふと、校長が立つ朝礼台の後ろに目をやると、見慣れない人物の姿があった。


「ピノちゃん、あの校長先生の後ろの人誰だろう?」


 振り返ってピノに問いかけるランセ。


「ん? あー、誰だろう? なんか見たことあるような……?」


 アゴに手を当てて考えるピノ。


「こら、そこ静かに」


 ボワロン先生に怒られた。いつもより厳しい気がする。

 注意を受けてランセはあわてて前を向き、ピノも姿勢を正した。


 するとその見慣れない人物が朝礼台に上がり話しだした。


「えー、今日から3週間みなの先生をやらせてもらう、『ラクリマ・ディ・フレエズ』だ。ラクリマ先生と呼んでくれ。よろしくな!」


 その人物の名前はこの国の姫さまと同じだった。

 ブロンドのお団子ヘアに猫っぽさのある整った顔立ち、大きめの口には笑顔をたたえていた。

 動きやすそうだが質の良さが遠目にも確認できるトラックスーツを着ている。


 ざわつく生徒たち。


「あれ、姫さまだよね?」

「うん、……たぶん」

「まじ? どういうこと?」


「姫さまー!」


 誰かが叫んだのをきっかけに、歓声が巻き起こった。

 その声に手を振り答える姫。


「せいしゅくにー!」


 校長が声を張り上げた。


「今日から3週間、姫さまに先生をやっていただきます。姫さまは剣術の授業担当です。いい機会なのでみんな胸をかりて教わるように」


 騒然とした雰囲気のまま、全体朝礼は終わった。





 朝礼が終わって教室に向かいながら話すランセたち。


「びっくりしたねー、まさか姫さまが来るなんて」

「ねー、こんなの聞いたことないよ」


 ズコットとピノがやや興奮気味に言った。


「明日の3限目が体育だから、さっそく私たちも姫さまの授業受けられるわね」

「剣術の授業だっけ? 姫さま強いのかな?」


 ディタとエレルが笑顔で言った。


「姫さま優しそうだったなー」

「ね、怖いって評判だったけど、そんなことなさそうだった」


ランセとビートが嬉しそうに言った。


やいのやいの言いながら教室まで歩いた。





 朝のホームルームで成績上位3名に銀の苺のブローチが授与されることになっていた。


「名前を呼ばれたものは前に来るように」


 担任のボワロンが教壇の上に置いた成績表を確認しながら名前を読み上げていく。


「ディタ・レモネーシア」

「はい」


 ディタは実の母親の苗字へと変わっていた。

 しかし、クラスメイトたちは特に気にしていなかった。

 「よくわからんけど、苗字変わったんかー」というぐらいの受け止め方だった。


「次、ピノ・キャラメリーゼ」

「はい」


 続けてピノが席を立って前に行く。


「次、ズコット・ピスターシュ」

「はい」


 3人が教壇の前に並んだ。


「お前らよく頑張ったなー」


 3人にブローチをつけていくボワロン。

 なんとなく拍手が起こる。


「3人とも似合ってるよー!」

「おめでと〜!」

「苺いいなー」

「私も次頑張ろう」


クラスメイトたちがそれぞれに口を開く。

少し照れくさそうにする苺の魔女3人。


「みんなもこの3人に負けないように精進するように」


授与は終わった。





 翌日の3限目体育。


 体育館に集められた一年生たち。

 

 剣術の授業は緊張感に包まれていた。


「あのさ、わらわは切り込めって言ったのだけど? なんで撫でてるわけ?」


人に見立てた藁束に思いっきり剣で切り込むよう促された一年生代表のディタは、言われた通り自身の全力で剣を打ち込んだ。

しかし姫の口から放たれたのは先の言葉だった。


「ねえ、おまえやる気あんの? わらわの授業なんか適当でいいとでも思ってる?」


不機嫌なラクリマ姫の授業が始まった。





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