表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/29

第18話 聖騎士と魔女②

 

 私はソルベ・ピアノーブル。この学園の初等科の寮母だ。

 寮生活のチビ助どもにご飯を作っている。


 夏休みに入ってから食糧庫から食材がなくなる事が頻発している。

 

 今、学園の寮には、誕生日会をやった6人のチビたちしかいない。


 今までそんな事はなかったし、言えば作ってやるのだから盗み食いする理由がない。


 ネズミかタヌキかそんな動物が侵入しているのかもと思い食糧庫に鍵をかけた。


 また食材が減っていた。

 鍵は壊されていない。


 密かに仕掛けていた録画機能付きの魔法の水晶を確認すると、そこに写っていたのは転移魔法で現れ、食材を物色するディタの姿だった。


 あの優等生がなぜ? そう思ったソルベは、すぐさまディタの部屋を訪れそのまま聞いた。


「なんで盗み食いなんかするんだ? 言えば作ってやるぞ?」


 ディタはうつむいたまま、ごめんなさいとしか言わない。

 そして、そのまま泣き出してしまった。


「わかった。今回だけは許してやる。それと、あとで夜にいっぱい食べても大丈夫そうなものを届けてやるから、もうやるんじゃないぞ」


 そう言い、部屋を後にした。


 ディタの部屋のベッドの周りには様々なものが散乱していた。

 なくなったと思っていた食器や、チビ助たちがなくなったと探していたようなものも見受けられた。

 

 異常を感じたソルベは、その朝すぐにボワロンに連絡した。

 




 学園では夜になると雷鳴が轟く日が続いていた。

 その日の夜も激しい雷に見舞われていた。


 ソルベから連絡を受けたボワロンは、その日の夜に学校に着いた。

 ソルベから詳しい話を聞いた。


 ボワロンにはソルベ以外からも別の連絡が来ていた。

 そちらもディタと関係があった。


 ボワロンはディタと話をしようと会いに向かった。


 雷の鳴り響く屋上に立つボワロン。

 後ろからディタに声をかけた。


「雷魔法とかこんな高等魔法、いつ覚えた?」


 激しくロッドを振るっていたディタが動きを止めた。

 振り返りボワロンを見る。


「……先生」





「あ、あの、すみません……もうしません、だからまだ学園に居させてください!」


 ディタは勢いよく頭を下げた。

 夏休みの初め頃、ディタは姉のキースとともに養子に出されていた。


 キルスターシュ家からの連絡が遅れに遅れて、ボワロンにその連絡が来たのは今朝のことだった。


 この国では、養子に出されることは珍しくなかった。

 しかし、養子に出された先でひどい目にあう子供も多くいた。


 知らない人の家になんか帰りたくない。ディタはそう思っていた。


「お前の新しい家は、元、私の家でもあるんだよな。だから私と姉妹になったみたいなもんか?」


 ボワロンがポケットに手を突っ込みながら仁王立ちで言った。


「元、私の親で、お前の新しい母親が、卒業まで学校に通わせるって言ってるから心配しなくていいぞ」


 ディタはようやくボワロンの言葉の意味を理解した。


「先生も養子に出されたんですか?」


 ディタはまっすぐボワロンを見据える。


「私は、物心ついた時には親はいなかったんだよな。んで、いろんなところに預けられたりしてた。まあ、その度逃げ出してたんだが」


 ボワロンは雷の止んだ夜空を見上げて続けた。


「私は悪ガキだったから、だいたいどこの家でも怒られたり叩かれたりしてさ。怒られたりするともっと悪いことしたくなるから悪循環でね。で、結局、嫌になって逃げ出すってわけ」


 ディタを見て笑うボワロン。


「んで、一時保護施設に逃げ帰ってそこの職員に言うんだ。あいつら一生許さねぇって」


 つられて少し笑うディタ。


「で、そこの職員で何やっても怒ったり叩いたりしない奴がいてな。私が何か悪いことするといつも私をハグして、体をゆすって歌を歌って、慰めてくれてたのかな? それが、ステア・オルストリア、私とお前の母親」


 ボワロンはディタに歩み寄ると、ディタをハグし体をゆすって歌を歌った。


「こんな感じ、どうだ?」


 ボワロンは歌い終わるとハグをしたまま聞いた。


「うーん、べつに……」


 ハグをしたまま続ける。


「学園からそう遠くない場所にステアの家はある。知らない奴の家に行くなんて気も使うし嫌だろうけど、ステアはそんな悪い奴じゃないから一度行ってみるといい。もし嫌だったら逃げればいいし」


 ボワロンが少し笑って言った。


「……はい」


 この国では、18歳になると里親の元を去らなければならない。

 ディタに必要なものはステアが与えてくれるとボワロンは確信していたが、同時に自分の認識はよく外れるのも知っていた。

 

 後日、ボワロンは心を病んで入院しているというディタの母親に会いに向かった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ