第12話 口聞かないっ②
病室に着いた。
中に入るとピノがいた。
「あ、みんな」
ちょうどお昼ご飯を食べていた。
「ピノさん、元気そうじゃない」
ディタが言うと、
「うん、もうじき退院できるって」
ピノが笑顔で答えた。
ランセが何か言おうとするが他の子が割って入った。
「暇つぶしの本持ってきたよー」
何冊か本を渡すクラスメイト。
「えー、嬉しいありがとう!」
ランセはピノと話ができない。
「あ、あの」
などと言っている。
ピノとは一瞬目が合ったのだが、謝らないとと思うと、緊張して言葉が出なかった。
その後ピノがむせ出したので先生を呼ぶと、安静にしないとダメだと言われた。
なので、その日は解散となった。
ランセは結局その日、ピノと話せなかった。
◇
ピノはすぐ退院できるかと思われたが、症状がぶり返し退院は2週間先送りとなった。
夜、病院にて天井を見上げるピノ。
みんなが見舞いに来てくれた時のことを思い出していた。
ランセと目が合った時、少し緊張してしまった。
しばらくランセとは話したくないと思っていた。
故郷の友達の手紙をあんなに大事そうに持ち歩いて、もう学園とはさよならというような事を言われては、私たちのことなんかどうでもいいってことなのかなと、何だか嫌な気分になったからだった。
(故郷の友達がそんなに好きなら、故郷の友達とずっと遊んでればいい)
ピノは変なヤキモチを妬いていた。
でも自分が部屋で倒れていたとき助けを呼んでくれたのはランセだったと、保険の先生が教えてくれた。
お礼を言わなきゃという気持ちと、しばらく話したくないという気持ちの間で、目が合ったものの言葉が出なかった。
明日は期末試験だ。
ランセは飛べるだろうか。
飛んだらランセは実技試験の合格書をもらって学園を去る。
このままお別れなのだろうか。
◇
期末試験がはじまった。
期末試験は学科と実技があった。
実技試験で合格判定をもらうには飛行魔法で飛ぶ必要があった。
試験でランセ以外はみんな飛ぶことに成功した。
ランセは結局飛べなかった。
◇
夜、ビートの部屋。
ビートはとあるグループで知り合った姉のような人物と、水晶玉を通じて話していた。
「友達同士が口を聞かなくなっちゃって、落ち込んじゃってて、何だかこっちまで苦しくなってきたんだけどどうしたらいいのかな」
ビートの問いかけに、
『とりあえずビートが苦しむのはやめよう。落ち込む子を支えたいなら、支える人は元気でいないと』
水晶玉の中の人物が答えた。
「って言われても……」
ビートが押し黙ると、
『ついでだし、ビートもケンカをふっかけてみたら? そしたら逆にみんな仲直りできるかも』
水晶玉の中の人物が答えた。
「もー適当なこと言わないでよー」
ビートが眉間にシワをよせた。
『ははは、ごめんごめん。でも話を聞く限りすぐ仲直りするんじゃないかって気がするけど?』
水晶玉の中の人物が言うと、
「そうだと良いんだけど……」
ビートがうつむきながら答えた。
◇
ランセは学科試験はなんとか合格したものの、実技試験は不合格となっていた。
初等科は不合格でも留年などはないが、補習と再テストを受けなければならない。
補習を終え、退院したピノと一緒にテストを受けることとなった。
もう夏休みに入っていたので、ほとんどの生徒が家に帰っていて校舎内に人影はまばらだ。
エレル、ズコット、ディタは高速移動馬車のチケットを予約していたので残れなかった。
ビートは残ったが、テストの見学はできないと先生に言われたので部屋にいた。
飛行魔法練習台の横に立つ、ランセ、ピノ、そして担任のボワロン。
「よーし、さっさと終わらせて休みに入ろうか」
ボワロンが言った。
ピノもランセも口を聞かずにしばらく時間が経過してしまったため、キッカケが作れず話すことができない。
一言も話さないふたりを見たボワロンが、
「よーし、じゃあまずピノ・キャラメリーゼ」
それがどうしたと言わんばかりに、何も気にせず言った。
「はい」
ピノが高さ3mの苺のチーズケーキ型の飛行魔法練習台の上に立つ。
銀のフォーク型の長杖にまたがると魔力を込めた。
ふわりと浮くと、ヒュンと一瞬加速し、そこから落ち着いたスピードでショートケーキ——を模した着地台——に着地した。
「ふー、よし」
ピノは試験に合格した。
「よーし次、ランセ・ヴァレリアンヌ」
ボワロンの呼びかけに、
「はい」
緊張の面持ちのランセが答えた。




