第11話 口聞かないっ①
翌日の放課後、授業が終わるとピノはさっさと部屋に帰ってしまった。
「ピノちゃんに話しかけても、そっぽ向いたり、どこかへ行ったりして何も話してくれないんだけど」
ランセが困惑しながら相談すると、
「そりゃ昨日お前が浮かれてピノの話を無視したからだろ」
エレルが答えた。
「え、無視してないよ」
ランセが反論するとズコットが、
「昨日ランセが浮かれて踊ってた時、ピノが話しかけてたんだよ。それを全部無視したの。覚えてないの?」
状況を説明した。
「え、そうだったの? 気づかなかった」
ランセがびっくりした表情を浮かべた。
「ピノさん少し怒っていたように見えたわ」
ディタが言うと、
「え、ごめんなさい」
ランセがディタに謝った。
「私じゃなくてピノさんに謝ってきたらどうかしら?」
少しうつむいた後、顔を上げたランセは、
「うん……。ピノちゃんに謝ってくる」
と言った。するとビートが、
「ランセちゃん、故郷に帰ったら私たちとはもう会わないつもりなの?」
ゆっくりした口調で聞いた。
「え? そんなことないけど、みんなともまた遊びたい」
ランセが答えると、
「えーそうなんだ、もうここには来ないみたいな雰囲気だったじゃん」
エレルが言った。
「じゃあそれをピノちゃんに言ってあげて」
エレルのちゃちゃを無視してビートが言うと、ディタもズコットもうなずいた。
「うん、わかった。言ってみる」
ランセはみんなにお礼を言うと、意を決してピノの部屋へ向かった。
◇
ピノの寮の部屋の前に立つランセ。
ドキドキしながらドアをノックした。
ドアが開いた。が、返事がない。
鍵がかかっておらず、半ドアになっていた為、ノックした勢いで開いたようだった。
「ピノちゃーん」
呼ぶが、呼びかけに答えない。
正面に床に寝転がってる足が見えた。
(ベッドじゃなくて床で寝てる?)
「ピノちゃーん!」
さっきより大きな声で呼びかける。
何も返事はない。
何か様子が変な気がする。
「ピノちゃん入るよー!」
大きな声を上げながら部屋の中に入った。
床にうつ伏せで横たわるピノが見えた。
急に人が入って来てびっくりして起き上がって来てくれるかと思ったが、そんなことはなかった。
寝ているだけとの希望を抱きながら声をかける。
「ピノちゃん!起きて!」
何度呼んでもピノは呼びかけに応答しなかった。
すぐ保険の先生を読んだ。
学校では対応が難しい病気のようだった。
すぐ病院に移送された。
この世界のどこの国でも回復魔法はほとんど発達していない。
自然治癒力を少しだけアップさせるのがこの世界の回復魔法だった。
あっという間に病気や怪我が治る魔法は物語の中だけの存在だった。
その代わり医学薬学が発展していた。
ピノはしばらく入院する事になった。
◇
病院にて。
病状が良くなったピノが、見舞いに来ていたランセに聞いた。
「私たちと、故郷の友達、どっちが大事なの?」
真剣な目でランセを見据えるピノ。
「どっちも大事だけど」
目を伏せながらランセが答えると、
「学園でランセの誕生パーティーやるけど来てくれるよね?」
ピノが聞く。
「え、それは……」
逡巡するランセ。
「故郷でもみんなとパーティーするの? そっちに行くの?」
ピノが問い詰める。
「……故郷でみんなと、ピノちゃんたちも一緒にパーティーしようよ」
ランセが提案するも、
「いやよ、どっちか選んで」
ピノが逃がさない。
「……」
言葉に詰まるランセ。
「ランセなんて嫌い」
ピノが言った。
……。
がばっ!
ベッドから起き上がるランセ。
(はあはあ……、夢かー)
安堵した。
そこはまだ夜明け前の、自分の寮の部屋だった。
(いやな夢だったな……)
ピノは元気になっただろうか。
命に関わるような病気ではないとのことだった。
今は一般病棟に移され、面会も可能になったので、みんなでお見舞いに行く事になった。
明日がその日だった。
しかし、夢の内容のせいかランセは見舞いに行くのが怖くなってきていた。
◇
見舞いに行きたいクラスの10人で病院に着いた。
無駄にワイワイうるさい。
「ピノ元気かなー」
「元気なわけないじゃない入院してるのに」
「体の半分が機械仕掛けになってたらどうする?」
「えーうらやましいかも」
「あんたたち病室では静かにね」
などとクラスメイトたちは雑な会話をしながら病室へと向かう。
「ランセさん、結局話せず仕舞いなの?」
ディタが聞くと、
「うん……」
ランセが答える。
「今日話せるといいね」
ビートが言った。
「うん……」
夢の内容を思い出し不安になるランセ。
そんなランセに気付き、やや心配そうに見るディタとビート。
「ピノちゃんが倒れてるのを助けたんだから、感謝してるよきっと」
ビートがはげますが、
「うん……」
あまり効果はないようだった。




