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第036話「モヒカンザル」

「――というわけでしてね、俺はそこまで大した探索者じゃないというか、あの黒ティラノを倒したのは火事場の馬鹿力的なやつでして……」



:ほんとぉ?

:そんな間抜けな恰好して言われてもなw

:説得力皆無なんだけどwww

:火事場の馬鹿力でもあんなデカブツの首が一撃で吹っ飛ぶもんかね?

:Sランク級じゃなくてもそれに近い実力は持ってるんじゃね?

:それよりこいつ鈴香たそとなんか仲良さそうでムカつくんだけど

:もうちょっと離れて歩け

:お前の話は興味ないから早くスズちゃんの声聞かせろよ!



 種口くんが必死に言葉を紡ぐものの、やはり視聴者は鈴香のファンばかりなので、どうしても彼に対する対応は冷たくなってしまう。


 ……仕方ない、助け舟を出してあげますか。


「も~、皆さん意地悪ですよ! 恐竜ワンパン男さんは私のことを命懸けで助けてくれたのに! あんまり彼をいじめたら嫌いになっちゃいますからね!?」



:ごめんなさい

:申し訳ございませんでした

:嫌じゃぁ~! ワイのこと嫌いにだけはならんでくれぇぇ!!

:怒った顔もカワイイぜ!

:そうだな、確かにワンパン男は命張って鈴香ちゃんを守ったんだからその点だけは認めてやるべきかもな

:話くらいは聞いてやるかぁ~



 俺の鶴の一声でコロッと態度を変えたファンたちは、種口くんの話をようやくきちんと聞く態勢になってくれた。


 それから彼は自分の魔術の詳細はぼかしながらも、限界を超えて力を使用してなんとかあの怪物を退治したことなどを説明していく。


 ――そうして十分ほど経過した頃には、視聴者たちもおおよそ彼の言い分を理解してくれたようだった。



:なんだ、魔術師なら納得やな

:魔術は能力によってはかなり格上を倒すこともできなくはないもんな

:つまりワンパン男は実は雑魚ってことか?

:Dランクでしかも魔術まで使えるんだから雑魚ではないだろ

:それよりその服が気になりすぎて話が全く頭に入ってこねぇんだけどw

:確かにこんなダサい恰好してる奴がSランクなわけがないか

:センスどうなってんだよw



「佐東さん!? やっぱりこの服めちゃくちゃディスられてるんだけどっ!?」


「ふふっ、皆さん彼を和ませるためにダサいだなんて冗談言わなくても良いんですよ? その服は私が作ったんです。どうです? かわいいでしょう?」



:かわいい

:かわいい

:かわいい

:かわいい

:かわいい



「手のひら返し早っ!?」


 どうやら種口くんも視聴者のみんなと打ち解けてきたようで一安心だ。


 服がダサいという意見もちらほらあったけれど、それはきっと彼らなりのジョークだろう。その証拠に最後は誰もがかわいいと肯定してくれたしね!


「さて、恐竜ワンパン男さんの誤解も解けたところで、そろそろモヒカンザルの討伐でも始めましょうか」


「あ、あぁそうだね。佐東さんの足手まといにならないように頑張るよ」


 俺はカメラ入りのふわスラを浮かせてバールのようなものを装備すると、種口くんを連れて高尾山の麓を進んでいく。


 ちらりと隣を見ると、彼は視聴者を刺激しないように律儀に俺との距離を一メートルほど開けて歩いていた。


 裏世界は危険がいっぱいなので、本当はパーティメンバーとは常に肩が触れ合うほどの距離感で行動するべきなのだが……まあここは初心者向けエリアだし大丈夫だろう。


「あれ? 山道の方に入らないの?」


「はい、このエリアは山頂に近づくに連れて危険度が上がっていきますからね。最初はこの辺りで肩慣らしをしていきましょう」


 高尾山の麓は平野や住宅街などが広がっていて見通しも良いし、モヒカンザルも単体や二匹組などでしか現れないので安全に戦えるのだ。


 山の中腹より先に進むと、数が増えて群れで現れたり、武器持ちが頻繁に出てくる危険度3のエリアになるので要注意である。


「……ん?」


「どうかしたの佐東さん?」


 突然ピタリと立ち止まった俺に、種口くんが怪訝そうな表情で訊ねてくる。


「……いえ、なんでもないです。それよりワンパン男さんは武器を持っていないようですが、使わないんですか?」


 左手に手甲のようなものを装着しており、防御面に関しては問題なさそうなのだが、肝心の武器は何も携帯していないのが少し気になる。


「佐東さんも知っての通り、俺、魔力操作がめちゃくちゃ苦手でさ。武器に魔力を纏わせることすらできないから、徒手空拳のほうがやりやすいんだ」


「あ~、そういったタイプの人、結構いますよね」


「うん、俺の最終目標は戦女神の聖域(ヴァルハラ)のマサルかな。彼みたいに自らの肉体のみで全ての攻撃を防ぎ、同時に敵を殴り倒す。そんなスタイルを目指してるんだ」


「え~……あんな筋肉ダルマに憧れるのはやめたほうがいいと思いますけど……」


「あはは、女の子にはちょっと共感してもらえないかもしれないけどね」


 ……俺も男なんだが。


 何故か他の男子ってマサルや格闘王みたいな筋肉ムキムキの近接格闘タイプに憧れるやつ多いんだよなぁ。


 俺は漫画とかでも魔法使い系のキャラのほうが好きだから、その思考がよくわからないけど。


『ウキキキッ?』


 ……おっと、どうやら雑談をしているうちにモヒカンザルの第一村人と遭遇したらしい。


 藪の中から飛び出してきた小柄な猿が、こちらを見て唸り声を上げている。


 髪型は世紀末な感じだが、見た目はモンスターにしては割と可愛らしい。


 それでも武器を持った集団となると侮れない相手であるのだが、こいつは素手で一体のみなので、プロの探索者ならまず苦戦することはないだろう。


「お、俺がやってみていいかな……?」


「ええ、もちろんです。もし危なくなったら援護しますので安心してくださいね」


「ありがとう……!」


 種口くんは【鬼眼】を発動させると、地面を蹴って一気に駆け出した。


 そして彼が突き出した拳がモヒカンザルの胸に炸裂すると、モンスターの小さな身体は真後ろに吹っ飛び、近くの木に激しく叩きつけられる。


 その一撃で致命傷となったのか、猿はあっさりと光の粒子となって消滅した。


「ふぅ……よしっ!」


「お見事です! いい動きでしたよ!」


 ふむ……。俺との秘密特訓だけでなく、英一たちとも一緒に訓練をしていたというだけあって、前よりも動きが洗練されてきているな。


 これなら武器持ちのモヒカンザル相手でも楽勝だろう。



:なんだこいつ結構やるじゃん

:ダン学だと雑魚って噂だったけど普通に強いな

:飛び抜けて凄いわけではないが、プロレベルの動きではあるな

:じゃあこいつの主張は概ね正しいってことでいいのか?

:これなら鈴香たその肉壁としてなら合格かもしれん

:さっきからちゃんと一メートル以上距離取って歩いてるしなw

:ダン学といえばスズちゃんもこの間から通い始めたんだよな

:今度制服姿で配信してほしい!



 種口くんの戦闘を見ていた視聴者たちの反応も良好だ。


 現在の彼が【鬼眼】を10から20パーセントほど開放すると、ちょうどプロになりたての探索者と同程度の力が出せるようになる。


 なので普通に戦ってもらえれば、計画通り強すぎず弱すぎずな感じが視聴者にも伝わるだろう。


 この調子ならば彼をSランク級だと勘違いしていた人々の熱も冷めてくれると同時に、ダン学の生徒もちらほら視聴しているようなので、彼をFクラスの底辺だと馬鹿にする者たちも減ってくれるはずだ。


 全て順調に――



:そいつダン学で佐東さんの隣の席だよww

:↑は?

:↑ま?

:ギルティ

:俺やっぱ恐竜ワンパン男許せねぇわ……

:うらやま死刑

:男だけを性的に狙う突然変異の凶悪なモヒカンザルでも出現しねぇかなぁ

:指名手配犯でもいいぞ

:次回「恐竜ワンパン男 死す」

:デュエルスタンバイ!



「なんか急に殺意の波動向けられまくってんですけどぉっ!?」


 ――は行かないかもしれないが、最終的にはプラスになってくれる……はず。


 たぶん……。

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