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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

インダストリアル開けたあと

作者: 狐照

上の耳輪を斜めに橋渡しするように開けた棒状のピアスってすごいなぁと、思った。

そういうピアスも、あるんだぁ。

毎度すごいなぁと、思っている。

が、今回は特にすごいなぁと、思ったのだ。


ピアス穴を開けそこに特別な宝飾品を飾る意味を、俺は知っている。

だから止めないし好きにやらせてる。

毎回宝飾品が豪華で、着け外し大変そうだなぁ、とは思っているが。

決して否定なんてしない。


だけど、今、涙目の恋人に、ちょっと派手なのは止めたらって言うべきか迷ってる。


「た、たすけてくれ」


「うん…動くなよ?」


「いたいぃ」


「俺に腹ぶっ刺された時を思い出せ」


「興奮してたから痛くなかった」


「まじか」


意外な事実に驚き指先誤らせてしまう。


「イタぃ!」


「ごめん」


「いたいよぉ」


「俺に燃やされた時を思い出せ」


「あれなんで燃やしたんだ?」


「え、燃やしたら落ち着くかなって思って」


「酷いって思って逆上した」


「だからあんな暴れたのかー失敗失敗」


ひどい、と眉根を寄せ、恋人が俺の腰を撫でる。

はいはい、後でな。

今はこの絡まったピアスと髪を解くのが最優先。

これを、こう、して、こう…。


「な」


「うん?」


「これ、どーやって外すんだ?」


昨日開けた穴にぶっ刺さってる棒状のピアスの取り方、まだ教わってなかった。


「後ろに玉あるだろ?」


「ある」


「それ、ネジになってるから」


「え…血が出てるのに…まわせと?」


「だいじょうぶ、いたくない」


ウソつきの顔を覗き込む。

沢山のピアスが絡んで、それを直そうとしたら髪も絡んでしょげて俺に助けを求めてきた奴が?

今、散々痛いって言ってたくせに?

視線で問い詰めると「ごめんなさい…」素直に謝って俺の腹に顔を埋める。

はいはい、可愛い可愛い。


「角、くしゅぐったい」


「可愛い角があるのが悪い」


「おしり、ぷりぷり」


「おう、元勇者だかんな」


「…したい」


「ピアス取ってからな」


「あぃ」


若干涙目の大男が俺に耳を差し出す。

紫の血が、昨日開けた穴から滲んでる。

そこにおわすは俺の加護、がピアスになったもの。

女神が与えたクソ加護を、俺の恋人は宝飾品に変えて身に付けて封印、してくれているのだ。

だから俺も、魔王の呪いが形を成した、指輪とかネックレスとか装備してる。

邪神が与えた魔王に成る、呪い。

忌々しい、糞なやつ。


互いに互いの最悪を、俺達は封印しあってる。

なんでって?

愛し合ってるから。

殺し合いを、一騎打ちし続けて、芽生えた真実の愛。

女神にも邪神にも否定出来ないさせない。

傷の舐め合いなんかじゃない誰にも理解出来ないしなくて結構。

だから、加護と呪いを互いに身に着け、二度と戦わないようにしてるのだ。

だって俺とこいつは、顔を合わせたら死ぬまで戦い合わないといけない間柄。

そんな事したくないから、操られたくないから、お互いがお互いを守り合ってる。

まぁたまに外すけど。

お互い装飾品ゴテゴテ苦手なので。

しばらく装備してたら封印も定着するし。

だから封印が定着したピアス、丁寧に外す。

たまーに封印外れるから、定期的につけ外し。

そんな事を繰り返しながら、俺達は平穏に暮らしてる。


「…と、れたぁ…あーかわいそ、こんな、かわいそ」


すっかりむき身の耳を撫でる。

ついでにキスもしてしまう。

だって可哀想、血が滲んでて本当に可哀想。


「ん…なぐさめてくれぇ、いっぱいあまやかしてくれぇ」


「よちよち、いいこ、いいこでちゅねー」


「なんか違う」


「え、ちげえの?とりあえずベッドいく?」


「うん、いっしょにねよぉ」


甘ったれな子供みたいな事言いながら、常闇の黒より深く黒い瞳が俺を見る。

イケメン、なのに残念。

そんな恋人が俺は大好きだ。


軽々と抱き上げられ、ゆっくりベッドに押し倒される。

覆い被さられても威圧的に感じないのは、俺が恋人が優しいことを知っているからだろう。


愛おしいげに見つめられ、俺もだよって両頬を手の平で包み込む。

そのまま顔が近づいてきて、ああキスしてくれるのだと、目を瞑る。


「きょー、お医者さんごっこしたい」


聞き間違いかなって目を開ける。

間近に迫ったイケメンが真剣だ。

これが元魔王だなんて誰か信じるんだ?

まったくもう、本当に、可愛い奴。


「…はいはい…せんせぇ、俺の悪いとこ、今夜も診てくれますかぁ?」

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